孤児院の職員
それから私は週に二度孤児院に行くようになった。
算術の勉強が終わったら、ティータイムはせず、そのまま直行。
私がいない時も本を読めたらいいのになと思って、絵本を写本して持っていったり、それを教材に時折文字を教えたりしている。
それから、これはまだ完成してないけれど。
お母様との刺繍教室の題材で、文字を縫い始めた私はおおきな布製ポスターを作っている。
トリフォニアの文字が一覧になっていて、1文字ずつ下には簡単なイラストも刺繍している。
(り)の文字の下には(りんご)のイラストっていう塩梅にね。
そしたら紙を使わなくても、指でなぞるだけで文字を練習できるのでは?と思ったの。
私の自作の絵本や文字を教える行為は、概ね好評だったけど、全員ってわけじゃない。
本より走り回った方が楽しい!って子たちだ。
たしかに勉強は大事だけど、ゴラーみたいに勉強嫌いでもその幼少期の好奇心を開花させて人生を花開かせるパターンもあるわけで。
強制はしたくない。
だからわたしの読書会も文字の勉強もしたい子が勝手に集まってくる感じだ。
でもね。たまに感じるのよ。
混ざりたいなーって思ってるのではないかな?って。
だってチラチラ見てるし、本を読んでる近くでうるさく走り回ってるし。
でもそんなガラじゃないから、混ざりにくい…みたいな。
一応私は中身が大人なので、そんな彼らのことも気になり、今孤児院長と畑を作る話をしている。
すぐに収穫できる葉物なら、初心者にもハードルが低いはずだし。
あ、あと今の季節から植えると秋に収穫できるサツマイモもいいね。
みんなで枯れ葉を集めて焼き芋するの!
今すぐの楽しみとちょっと先の楽しみが混ざった畑。
収穫した野菜や果物は孤児院での食事に使われるから、食事がちょっぴり豪華になるし、ちょっとした農業体験にもなって一石二鳥。
きっと絵本に加わらない彼らも、こっちなら楽しく一緒に活動できるかな?
孤児院長にも賛成してもらったし、孤児院の裏庭にスペースはあるし。
帰ったら植える植物をジョセフに相談しようっと!
あ、新しくライブラリアンに加わった『初めての家庭菜園』も読まねば。
そうそう。気になると言えば、職員さん。
遠目に子供たちを見る表情は聖母のように穏やかなのに、時折ふっと暗い影が差すのは気のせい?
それにあのアザ…
何かにぶつけたのかと思ったけど、あれから何度も孤児院に通って気づいたのだけど、他の職員さんの身体もボロボロなの。
職員は3人。
レアは、乳児付きの職員で、1度「赤ちゃん可愛い〜」って覗き込んでたら、赤ちゃんがレアの服を引っ張って1番上のボタンが外れちゃったことがあったの。
もちろん胸は見えてないんだけど、鎖骨あたりが真っ黒になってたのが見えてしまった。
(さっと隠されたので、見なかったふりをした)
ロザリアは最初に来た時握手した職員。
握手の際に手首にあざがあるのが見えたし、もう1人の職員ジェシカは歩く時にぴょこぴょこ引きずるように歩いてる。
1人ならまだしも3人全員が怪我してるって変じゃない?
いや絶対変!
お母様に調べてもらわないと!







