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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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CLS患者集め

イニティウムタウンが順調に形成されていく陰で、フィーナQ3-Ver.2002によるCLS患者集めはなおも続けられていた。クローンの素体になるものを確保する為である。現在は男性が少ないのでその確保が優先されており、女性のCLS患者については、メイトギア人間の素体にもなりそうな状態の良いものを除いてはその場で処置された。


拠点となるメンテナンス用トレーラーの牽引用に繋がれていた軍用車両に乗り、捜索範囲を広げて数百キロの行程を一日で移動することもあった。彼女が使っていた軍用車両にはアミダ・リアクターが搭載されている為にバッテリー上がりの心配もなく、しかも自身の充電も行えるので行動を制限される心配がなかったのだった。


すると彼女は、捜索の途中、奇妙な集落を発見した。人間がいなくなったそこに、メイトギアが勝手に住み着いて形成したコミュニティーだった。しかもそのメイトギア達の多くは、幼い子供のCLS患者を飼育、いや、養育していた。幼い子供がCLSに感染した場合、部分的な壊死が起こらないことが珍しくなく、何らかの事情で他のCLS患者に襲われずに済めば、血色はさすがに悪いものの外見上は死んでいるようには見えない事例が少なからずあり、それが故にメイトギアの中には<死んでいる>と認識できずに生きた人間として保護するということが稀にあったのである。


しかし、フィーナQ3-Ver.2002にとってはそんな事情は関係なかった。メルシュ博士からの受けた命令は、<CLS患者の確保。その為の手段は問わない>。成長することのない幼い子供のCLS患者ではメイトギア人間の素体には使えずとも、クローンの素体としては十分に使える。だから彼女は一切容赦しなかった。


「アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士の命により、CLS患者を回収します。ご協力を願います」


だが、医学的に明確な判断基準を持つフィーナQ3-Ver.2002にとってはただの<動く死体>でも、そう認識できないメイトギア達にとってフィーナQ3-Ver.2002は、自身が保護している<人間>を連れ去ろうとしている異常なロボットとしか映らなかった。しかも倫理観の欠片も持たない狂気の天才科学者として有名なアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士の要求など、聞ける筈もない。だから人間を守る為に抵抗した。


とは言え、現在でも<最強のメイトギア>の称号を堅持し、標準装備で超振動ワイヤーを装備する彼女が相手では敵うこともなく、ものの数分で抵抗するメイトギアは全て破壊され、少女のCLS患者はその場で処置され、少年のCLS患者はクローンの素体として回収されたのであった。



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