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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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メルシュ博士の関心事

今は順調に進んでいる町づくりだが、人間達が増えていって様々な考え方をする人間が現れるようになった時、いずれ自分に弓引く者が現れるかもしれない。それこそが楽しみだった。そういう人間がどういう形で現れるのかを見たいと思ったのだ。体制を維持しようとする側と、それを壊そうとする側の成り立ちが再現されるのなら、それもまた良し。


メルシュ博士にとってはその程度のことでしかなかった。


リヴィアターネに生身で降り立ってCLSに感染、死亡する様を自らの体を使って確かめるような博士にとって、ロボットの反逆によって命を落とす程度のことはもう、大したことでもない。むしろそれを見てみたいとさえ思っている。


本来、ロボットは故障したとしても人間を傷付けられるようには作られていない。戦闘用のそれはあくまで保護対象の人間を守る為に必要な措置を取るという解釈により人間を攻撃できるだけで、そういう前提がなければやはり人間を攻撃できない。しかし、今のメルシュ博士は、現在の総合政府が管理する社会においては<人間>として認められる存在ではない。ロボットの体を持つアリスマリアRはもとより、生身の体を持つアリスマリアHでさえ、ロボットにとっては人間ではなかった。単にCLS患者の一人を再利用した物品に過ぎないのだから。


そういう意味でも、タリアP55SIがメルシュ博士に対するテロリスト等になりうるとも言えた。


それがどうなるかは分からない。分からないからこそ面白い。こういうこともまた、今回の実験の目的の一つであった。


しかしその一方で、サーシャにとって博士の行いは、非道なだけではないのも事実だ。サーシャにとってもCLS患者は危険な存在であって、それを再利用したメイトギア人間もクローンも、危険が無くなって自分と同じ人間に戻れたということを単純に喜んでいただけだった。サーシャがさらに成長して今以上にいろいろと考えられるようになればまた認識も変わってくるかもしれないが、少なくとも今は現状を受け入れていた。そして彼女の母親的存在であるコゼット2CVドゥセボーも、自身を修理し再びサーシャに対して微笑みかけられるようにしてくれたことを恩義にも感じており、否定的な認識は持てなかった。


リヴィアターネに生まれつつある新しい社会や新しい体制を維持しようとする側と、それに反抗する側。そういうものが発生していくメカニズムを解明するという実験としても意味があったのである。


もはや三桁に達するCLS患者を解体し徹底的に調べ、CLS患者に対する様々な実験を行ってきたことで、メルシュ博士の関心は次の段階に移っていたとも言えるのだった。



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