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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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フィリス・フォーマリティ

計画の為に、メルシュ博士は<アリスマリアの閃き号>に命じてクローン培養用の装置と、それを設置する為の建物用の資材を、三体のメイトギアと共に降下させた。リリアJS605mの<リリアミリア>、アレクシオーネPJ10Cの<アルシオーネ>、アレクシオーネPJ10Fの<アレクサンドラ>だった。その三体は基本的に研究の際の雑用などをさせる為の一般仕様のそれであり、作業が増えることに伴う雑務を任せる為に降下させたのだった。


そしてさっそく、クローン製造棟を建設。同時にクローンの製造に取り掛かった。クローン胚さえ用意すれば後は機械が自動で育成してくれる。高速育成で通常の数十倍の速さで成長。十歳相当くらいで外に出してそこからは普通に育てることになる。ただし意識や知能は基礎となるものをあらかじめインストールしておくから、あくまで人間としての情動を学ばせる為ということになるだろう。


それに先駆けて生み出されたメイトギア人間が、続々と<町>へとやってくる。


「初めまして!、私、サーシャ」


自分自身とアリスマリアH以外に初めて目にする生身の体を持ったそれに、サーシャは嬉しそうに声を掛けた。そんなサーシャに、そのメイトギア人間が笑顔で応える。


「初めまして。フィリス・フォーマリティです」


顔や腕にいくつも大きな絆創膏を貼ってはいるがまずまず美麗と言っていいであろう、緩くウェーブした亜麻色の髪を肩まで垂らしサーシャが着ているドレスとよく似た感じのふわりとしたドレスを纏った若い女はそう名乗った。レオノーラ・アインス、リリア・ツヴァイに次ぐ三人目のメイトギア人間であり、先の二人を除くメイトギア人間のリーダー的な存在だった。


フォーマリティとは英語で<制式>という意味なので、試作であるレオノーラ・アインス、リリア・ツヴァイと違い、<制式タイプのメイトギア人間>という意味合いでメルシュ博士が与えたものだ。今後、メイトギア人間と、メイトギア人間由来のリヴィアターネ人を表すファミリーネーム(姓)となる。


サーシャとフィリス・フォーマリティはすぐに打ち解け、ミルクティーを口にしながら楽しそうに談笑していた。しかし、そんな二人を何とも言えない微妙な表情で見詰めていた者もいた。


タリアP55SIであった。着々と進む町の建設とは裏腹に、タリアP55SIは浮かない顔をしていた。


『本当にこれでいいんだろうか…』


彼女はそんなことを考えていた。確かに他に存在するかどうかも分からない不顕性感染者を探すよりこの方が確実なのかも知れない。だが、どうしてもどこか割り切れないものを、彼女は感じていたのであった。


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