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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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CLS患者の代謝

CLSに感染・発症し死んだコラリスの胎児は、そのままコラリスの胎内に置かれ、経過を見ることになった。だが、発症から三日で完全に活動を停止、CLS患者としても死亡が確認されたのだった。


メルシュ博士にとってはそれすら重要な実験結果であり、血縁上は我が子である筈の胎児の死亡についてはまるで関心を持っていなかった。CLS患者としての活動も停止したそれは直ちに摘出され、サンプルとして保管されることになった。


どうやら、母体の方が健康な肉体であることが逆に、CLS患者となった胎児には負担であったらしい。胎盤を通じて過剰に栄養や酸素が供給されたことでそれを処理しきれず機能が崩壊してしまったようだった。


「うむ。いいデータが取れた。これを基に、コライン、コルツェウィ、コルドレイ、コルスィーベンの妊娠が継続されるように調整してみよう」


そうして博士はさっそく、コライン、コルツェウィ、コルドレイ、コルスィーベンらの胎内に配置していたナノマシンの設定を書き換え、CLSが発症した後は胎盤からの栄養と酸素の供給を制限するようにした。どの程度まで制限すればよいのかはまだ分からなかったので、コラインは十パーセント、コルツェウィは三十パーセント、コルドレイは五十パーセント、コルスィーベンは八十パーセント制限することとした。


しかし実は、この時点で、妊娠を継続しても意味はないかも知れないということは分かっていたのだが。


と言うのも、六歳くらいの少女のCLS患者であるコルヴィアと十一~十二歳くらいの少年のCLS患者のコラクトを観察していて、まったく成長する様子が見られなかったのである。恐らく、人間としての脳が失われたことで成長ホルモンが分泌されなくなったからであろう。しかしその一方で、十分ではないとはいえ代謝も行われており、代謝に関するホルモンの代わりになる物質が分泌されていることは確認できていた。それ故、普通の人間に比べると時間はかかったが傷も塞がったのだった。


そのホルモン様物質の構成は人間のそれと非常に似通っており、この点からもCLSウイルスが、本来、人間をターゲットにした生物兵器的な性格を持ったものであることが強く窺われたのだった。


もっとも、メルシュ博士にとってはそのこと自体はどうでもよかったようだが。彼女にとってはそう推測された時点でウイルスの起源や由来に対しての関心は薄れており、今はただ、それが何をもたらすのかということだけに関心があるだけなのだった。



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