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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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実験結果

胎児は順調に十分な大きさに育っていたにも拘らず発症の兆候を見せてこなかったのだが、それはある時突然起こった。妊娠十八週目。一般的にははっきりと胎動が感じられるようになる頃だろうか。胎児が苦しげに身をよじり、やがてその動きも止め、鼓動も停止してしまったのであった。


「おお、きたきた!」


メルシュ博士にとっては遺伝的には血の繋がった我が子である筈の胎児の死にも、彼女は嬉しそうに声を上げるだけだった。ここまでくれば、彼女がただ偽悪的に振る舞っているのではないということが分かるだろう。博士は心底、人間としての、いや、それどころか生物としての感覚が欠落しているのである。


CLSを発症し死んだ胎児の観察を続け、様々なデータを得ることに成功し、メルシュ博士は興奮していた。


「はっはっは、素晴らしい、素晴らしいよ!」


この時、コラリスとその胎児の観察をしていたのは、コルネンを基にした生身の体のメルシュ博士の方だった。彼女はそれを、<アリスマリアH>と称していた。ちなみにロボットの体の方については<アリスマリアR>である。それぞれ、<HUMAN>、<ROBOT>の頭文字から取っただけの安直なネーミングだった。相変わらずその辺りには拘りはないようだ。


そして、そのアリスマリアHの傍らには、すっかり彼女のペットとなったグローネンKS6が寄り添っていた。だが、彼女は彼を単にペットとして傍に置いているのではなかった。故障していた戦闘モードを司るメインフレームを自作のものに勝手に交換し、研究施設を守るガードロボットに改造していたのだった。本来は軍用のロボットに勝手な改造を加えることなどできないように何重もの対策が講じられているのだが、実はアリスマリアは軍にも太いパイプがあり、と言うか、軍の新兵器などの開発に積極的に協力していたこともあり、専用のアカウントを持っていたのである。


それを用いてグローネンKS6のセキュリティを突破。完全に支配下に置いてしまったのであった。さすがに軍の命令系統の上部にまではそれでは侵入できなくても、末端のロボットくらいなら何とかなってしまうのだ。しかも、リヴィアターネに立ち入ったことで法律上は死んだことになりそのアカウントも抹消されたのだが、リヴィアターネに廃棄された形のグローネンKS6はその辺りのデータが更新されることがなかった為に、有効だったということだ。


さらにそれだけではなく、このグローネンKS6の基本コンポーネントは他でもないメルシュ博士自身の設計だったのである。グローネンKS6自身はそんなことは知らない筈だが、データのどこかにそれに関するモノが残っていたことで、彼女に対して従順に振る舞ったというのも、あながち有り得ない話でもなかったのかも知れなかった。



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