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メルシュ博士のマッドな情熱  作者: 京衛武百十
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メルシュ博士の狂気

今回、コラダムに挿入した尿道カテーテルは導尿が目的ではなく精巣にマイクロマシンを手早く進入させる為のものだったので、浅くしか挿入はされていない。しかも、それらの処置の間も、コラダムは何も感じていないかのように大人しくしていた。本当に食欲以外の感覚は失われているようにも見える。


マイクロマシンの動きをモニターする装置で無事精巣内に到達したことを確認したメルシュ博士は、マイクロマシンが精子を確保して戻ってくるのを待っていた。


十分ほどしてカテーテルの先端からぬるりとした液体があふれ、カテーテルに繋いでいた小さなボトルの中に溜まっていく。精液だった。ただ、量が明らかに少なかった。それを見た博士が声を漏らす。


「むう…やはり精子そのものが殆ど作られていないものと見える。それ故、精液の量も減ってしまっているようだ。精子がまだ生きていればいいのだが…」


コラダムの精子を採取する間に隣の手術台にはコラリスが寝かされ、同じように膣内にカテーテルが挿入されてマイクロマシンによる卵子の採取が行われていた。コラリスについてはCLSに感染してからまだ数日しか経っていない上にちょうど排卵期だったこともあり、こちらは順調に採取が行われたのだった。むしろコラリスの排卵期のことを思い出したが故にCLS患者同士の生殖を思い付いたと言った方がいいかもしれない。


こうして採取されたものを顕微鏡で覗いたメルシュ博士は、嬉しそうに声を上げた。


「よしよし、まだ生きている精子がいる! さすがに運動量は寂しい限りだが何とかなりそうだ」


すると早速、コラリスの卵子と顕微授精を行ってみる。ナノマシンの助けもあり、三個の受精卵を確保することができた。そのうちの一個をまず、マイクロマシンに運ばせてナノマシンで補助しつつ、コラリスの子宮内に着床させることに成功した。妊娠である。


そう、メルシュ博士はCLS患者を妊娠させたのだ。それがどのような結果をもたらすのか十分に分かったうえで。


ただし結果が出るまでには数か月の時間を要するだろう。コラリスの肉体そのものは健康な女性のそれなので、ナノマシンによる補助も併用すればしばらくは順調に成長する筈である。そしてメルシュ博士の一番の目的は、胎児が成長し、その脳の大きさがどれくらいに達した時に発症するのかを綿密に観察することにあった。つまり、最初から死なせる為に胎児を育てているということだ。それが何を意味するのか、正常な感覚を持った人間なら分かるだろう。彼女の異常性が。


「ふふふ、楽しみだねえ」


と、本当に楽しそうに、ナノマシンから送られてくるデータを眺めながら声を漏らしたのだった。



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