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JK戦記(前編)  作者: 石屋さん
戦乱
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黒板


 真直ぐに落ちてくる広く太い陽の灯り、塩気を含んだ北からの風、草のむせかえるようなにおい、戦争中とは思えない空気感がアルマサン城塞都市の周辺には漂っている。

 城門をくぐると、あちこちの屋台からもやもやと湯気が立ち昇り、笑顔の人々が蟻のように屋台に群がっている。


 城門広場で馬から降り街を眺めながらガイア万人長は、

「ここはいつきても活気があるな~戦争中とは思えない風景だ」


 暫くすると、十数名の集団が近寄ってくる、カールハインツ公爵一行だった。

「ボルディ万人長とガイア万人長、儂からエールを二十樽贈らせて貰うから、兵はゆっくり休ませてやりなさい。」

「カールハインツ公爵、ご配慮くださりありがとうございます。」

「早速だが、お前たちはこれから儂の屋敷で作戦会議でいいか? 茶菓子くらいは出す」

「承知いたしました。」



 カールハインツ公爵の執務室へ入ると、結衣とジェイ万人長が真っ黒な壁に何か書いていた。


「この黒い壁は何ですか? 呪術的なものでしょうか?」

 ガイヤ万人長が頭を傾げながらカールハインツ公爵に聞くと

「これは、黒板じゃ、ユイが発明した便利な物じゃ」

「何が便利なんですか?」

「見ておれ」


 カールハインツ公爵は、黒板にチョークで×を描いた後に、布でそれを消した。

「ほれ! こうやって何度でも書き直せるのじゃ」

 ガイヤ万人長は感心した表情で

「これは便利ですね。作戦を色々思案してみたり、刻々と変わる戦況を描いたり出来ますね。」

「そうじゃ、今日はこれを使って作戦会議じゃ」


「その前にこれをどうやって作るのか教えて貰えませんか?」

 と、ボルディ万人長が言うと、結衣が説明を始めた。


「普通の木の板を良く磨いたあと、墨汁で真っ黒にして乾かしたあとに、菜の花の油を何度も重ね塗りすればいいんです。チョークは、卵の殻をすり潰して水で煮たあとに型に入れて冷やせば、出来上がりですよ。」

「ほう、手間は掛かるが全部その辺にあるもので作れるんだな」

「はい、そうですね。何度か作ってみればコツも解ると思いますよ。」

「うむ、儂の部隊でも作って見るか……」



 カールハインツ公爵が周りを見渡し

「それじゃ、そろそろ始めていいかね。ジェイ万人長説明してくれ」


 ジェイ万人長は、黒板に描かれた地図と、帝国軍の位置を使って説明を始めた。

「帝国軍は五部隊に分かれて侵攻しております。

 最前線は、三部隊に分かれ放射線状に西へ西へと王都に向かっております。

 その後ろには、占領した地域を埋めるように本陣が配置され、東側にアビラ砦を封鎖する部隊を配置し補給路を守っております。」


□□□□

□五万□

□□□□



□□□□____□□□□

□五万□____□5万□__□物資□__街道__→帝国領

□□□□____□□□□



□□□□

□五万□              □二万□

□□□□

                    ☆アビラ砦☆(二万)




    ☆城塞都市☆

     (八万)




「既に解っている情報だが、こうして地図に描くと解りやすいな」

 ボルディ万人長は、黒板の前に立ち状況を整理した後に口を開いた。

「作戦は二つ考えられますね。城塞都市に守備兵二万を残し、

 六万の兵で帝国本陣を襲撃、もしくは、アビラ砦包囲部隊を叩き、補給路を絶つ」


 ボルディ万人長の意見に皆が頷くなかで、結衣が異論を唱える。

「二つの作戦は、共に問題があります。

 帝国本陣の場合は、五万対六万と言う大部隊同士の戦いになる為、一日や二日で決着がつかず帝国の援軍に挟み撃ちにされます。

 アビラ砦包囲部隊の場合は、四方八方に分散して配置されているので、これも時間が掛かり帝国本陣から救援が入ると、再びこう着状態に戻ってしまいます。」


「それじゃ……あっ!」

 ガイア万人長が何かを言おうとして、言葉を詰まらせた。

「どうしたのじゃ?」

「ユイ万人長かな? ユイさんの役職は何になるんですか?」

 すると結衣が

「私は軍に戻った訳じゃないです。今回は国の為に戦に参加するだけなんで、万人長じゃないですよ。」

「じゃなんて言えばいいのかな?」

「ユイでいいですよ。」

「それじゃユイ、どうすればいいんだ? 反対するからには案はあるのだろう?」

「はい、帝国本陣とアビラ砦包囲部隊を同時に叩くのです!」


「ただでさえ少ない兵力を分散するなど、愚策である。」

 ボルディ万人長が結衣の意見をばっさりと切り捨てる。


「ボルディ万人長聞いて下さい。帝国本陣と当たる部隊は囮です。状況にもよりますが、敵を釘づけに出来ればいいのです。

 その間に、アビラ砦包囲部隊をアビラ砦守備隊と一緒に叩き、帝国の補給路を絶ってしまえば、帝国軍も引くしかないのです。」


「……囮部隊は死にに行くようなもんだな。」

 ガイア万人長がぼそっと呟く。


 腕組みしてじっと目を閉じて聞いていたボルディ万人長が、かっと目を開き

「解った、ユイの作戦に乗ろう。但し一点条件がある。」

「なんですか?」

「囮となる部隊は、我々国王直轄軍がその任務にあたる。ユイとジェイ万人長の部隊は、アビラ砦包囲部隊を叩いてくれ」


「それは数が合わない。時間稼ぎするにも三万の兵は必要です。」

「しかし、部隊の連携を考えた場合、混成軍では難しい!」

「それにしても……」



 作戦自体は決まったが、軍の編成に関しては一晩中議論され、最終的に部隊は以下のように編成された


 対帝国本陣 歩兵 二万二千 騎兵一万

 ・ボルディ万人長部隊 歩兵八千 騎兵 千

 ・ガイア万人長部隊  歩兵八千 騎兵 千

 ・結衣騎馬隊          騎兵八千

 ・チャナ歩兵隊    歩兵五千

 ・補給部隊      歩兵 千


 対アビラ砦包囲部隊

 ・ジェイ万人長    歩兵三万 騎兵五百






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