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JK戦記(前編)  作者: 石屋さん
誕生! 国王軍の白い悪魔
21/49

アビラ砦攻城戦1



崖崖崖崖崖崖崖   崖崖崖崖崖崖崖

崖崖崖崖崖崖崖   崖崖崖崖崖崖崖

   ――――   ――――

   ―――――門―――――



 アビラ砦は、帝国が王国遠征の為の物資保管の為に使っていた巨大な洞窟であったが、国王軍が奪還後に、入り口に城壁を作り砦として使っていた。


 構造上、攻撃する側も守備側も城門一点に集中することになる。


 アビラ砦を見下ろせる丘の上でバルデス将軍は、仁王立ちで

「十万の兵がいても、実際に戦えるのは千人程度だな、一斉攻撃は意味が無い。万人長単位で順番に攻め入るぞ、門させ開けば我が軍の勝利だ!」


 一人の万人長が

「先陣は我が部隊へお任せ下さい。」


「うむ。頼んだぞ、但し一度で攻め落とせると思うな。被害が百人以上でたら撤退するのだ。次の部隊が待っておる!」


「承知いたしました。」


「ボルディひとつだけ忠告がある。お前自身が先頭に立って、壁に昇ったり、城内に入る事はやめておけ、この戦は数日掛かると心得よ。」


「……承知いたしました。」



「他の各万人長は、騎兵を十騎単位で出し周辺を警戒させろ、伏兵が潜んでおるかもしれぬ。」


「「「はははー」」」



 バルデス将軍は、仁王立ちのまま、先頭を進む集団を眺める。先陣を務めるのは、国王軍の赤い巨人と恐れられるボルディ万人長である。

 ボルディ隊は威風堂々とゆっくりと前進し、ずらりと並んだ国王直轄部隊の旗が頼もしい。

 左右を見渡せば、伏兵を炙り出す為に、騎兵隊が一斉に駆け抜けて行き、後ろを見れば、大量の物資と兵が休養する天幕がずらりと並んでいる。兵を順番に休ませながら戦えば、いずれ落ちる。


「簡単には落ちないであろうが、負けることはないな」

 と、バルデス将軍はひとり呟いた。



 ボルディ万人長は、先陣を任され高揚していたが、まずは様子見と、門を破壊する為の大斧を持たせた隊とその護衛兵を繰り出して攻めかかる。

 しかし、王都と言う安全な場所に控えていた兵は、城壁に近づくにつて、腰が引けているのが手に取るように解る。勢いのない集団は、城壁から弓矢で狙い撃たれ壊滅した。


 それを見たボルディ万人長は、自ら先頭に立ち、全軍突撃を指示した。


 城門に取り付いた兵を待っていたのは地獄であった。弓矢に変わって、岩が雨のように降り注ぎ、煮えたぎる油が滝のように流れて来ると、火矢を撃ち込まれ火炎の渦に包まれた。


 城壁に捕りついた兵は、妨害されながらも梯子を強引に設置するが、登り始めると一人一人順番に狙い撃たれ、城壁の半分の高さにさえ辿り着く前に、梯子は全て倒されてしまった。



 ドン! ドドン! ドン! ドドン!


 後方の本陣から撤収の太鼓が響き、ボルディ隊は撤退した。



 バルデス将軍は、大きく手を振り上げ

「次のガイヤ部隊進軍せよ! 奴らに休みは与えん! 戻った兵は、ゆっくり休むがいい」


「待ち疲れましたよ。将軍」


「ガイヤ無理はするなよ。この戦は長引く、被害を減らすことを優先しろ!」


「……苦手な指示ですな。まぁ頑張りますよ」


「頼んだぞ、死に急ぐでない!」


 バルデス将軍からの指示が出ると、待ってましたとばかりに、疾風のトロイカの異名をもつガイア、サイヤ、ダイヤの三兄弟が先頭に立ってアビラ砦へ突撃していった。


 剣の達人ガイア万人長、槍の達人サイヤ千人長、弓の名手ダイヤ千人長の連携の取れた行動もアビラ砦を落とすことは出来ず、撤収の太鼓が響き、とぼとぼと戻って来た。


「次の部隊進軍せよ!」



 国王直轄部隊は、部隊を順番に繰り出し、休む事無くアビラ砦を攻め続けた。




-----



 農民解放軍を率いるエンゲルベルトは、元々は王国の国境警備隊の隊長であった。場所柄帝国側の国境警備隊とも交流があり、飢饉による農民蜂起が起きた時、帝国の支援が約束されていた為、蜂起した農民を取り纏めて農民解放軍として王国の領土を攻め始めた。


 帝国と言う大きな後ろ盾のおかげで、略奪を繰り返しながらアルマサン城塞都市までの広大な領地を手に入れたが、今はこのアビラ砦だけとなり、頼みの帝国軍も、直ぐ戻ると言い残し、全軍帝国領内へ戻ってしまった。

 一時は、五万を越える兵が集まっていたが、負け戦が続き撤収時に、一人また一人と抜けて行く者が後を絶たず、今は一万に満たない兵しか残っていない。


「エンゲルベルト閣下、未だ城門は守られ、我が軍の兵士の被害も最小限となっておりますが、兵士の疲労が限界まで達しております。一時停戦の交渉を行ってはどうでしょうか?」


 アビラ砦に国王軍が進軍してから、既に五日、国王軍は休みなく襲い掛かかってきている。国王軍も我々と同じく休養が必要なはずだと、エンゲルベルトも考えた。

「よし、使者を送れ、一日の停戦を申し込む、奴らが希望するなら二、三日でも受け入れよう」

「承知いたしました。直ぐに使者を送ります。」


 停戦の使者を送ったが、使者の首だけが戻って来た。


 怒りに震えるエンゲルベルトは、兵士達の前で拳を握りしめ怒声を上た。

「今は耐えてくれ! 時間さえ稼げば、帝国が大軍を率いてくる事になっている。今は耐えてくれ!!」


 従者が耳打ちすると、エンゲルベルトが頷き

「疲れが取れない者は、帝国が置いて行った秘薬をスプーン一杯だけ飲め! 疲れがふっとぶぞ」




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