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JK戦記(前編)  作者: 石屋さん
誕生! 国王軍の白い悪魔
18/49

蜂起


 ダニエラ達は、騒ぎが起こってしまうので、爆発菓子の屋台を出すのを止め、結衣達は、百人が警備をしている食糧庫襲撃の作戦を練っていた。

 ダニエラが井戸に水を汲みに行くと、通りの向こう側に人垣が出来ていた。何があったのか、大人達の足の間を掻き分けて前に行くと……


 屋台で騒動が起きた時、ガラの悪い農民解放軍へ最初に注意をした男の、撲殺された遺体が転がっていた。

「なんてことを……」

 ダニエラは声にならない声を発した。


 その周りで大人達は、互いに不安を口にしていた。

「あいつらに歯向かっちゃ駄目だ」

「いや、関わっちゃ駄目なんだよ」

「家の中で、じっとしてるしかない」

「いつまでも、食料がある訳じゃないんだぞ」

「これから、どうなるんだ?」

「国王軍が来ても、ここは簡単には落ちないぞ」

「籠城されたら、俺達が先に餓死してしまう」


 ダニエラは地下に戻り、結衣にこの話をし

「おねーちゃん。やったのは絶対あいつらなの! あいつらを殺して!」

 しかし、結衣は難しい顔で

「ダニエラちゃん、私達は、人殺しが目的じゃないの。このお城を取り返す為に戦っているの。敵の偉い人とか強い人なら別だけど、恨みで特定の兵士を殺したりしないのよ」


「ご、ごめんなさい……でも、それじゃ逆にチャナさんを殺すことになるかもしれないの?」

 ダニエラは不安な表情で結衣に聞いた。


 結衣は少し間を置いて

「そうよ。チャナさんが私達の邪魔をするなら、躊躇しないわ」

「なんで! チャナさんは絶対いい人だよ。殺しちゃ駄目!」


「ダニエラには少し難しいかも知れないけど、聞いて」

「うん」

「戦争はね、良い人と悪人がしているじゃないのよ。お互いが正しいと思って戦っているの。それを解って欲しい……」

 と、結衣は諭すように話すが、


「解らないよ、全然、解らない!」

 ダニエラは、泣きながら向こうへ駆けて行った。





 旧行政区画は、農民解放軍の将校クラスと帝国騎兵隊のみが駐屯し、一般住民も農兵も立ち入りが制限されていた。

 深夜の旧行政区画は、見廻りの兵以外はおらず暗闇と静寂に支配されている空間であった。


 そんな旧行政区画の中央噴水広場には、帝国騎兵隊の馬小屋がわりに五千の馬が繋がれているのだが、警備の兵士らしき者の遺体が仰向けに横たわっていた。


 暗闇の中、真っ白な道衣を纏った結衣の姿が月明りに照らされていた。

「皆、準備はいいかしら?」

 と、帝国騎兵の馬に跨った結衣が小声で言うと


 久々に馬に跨った結衣の部下達五十人が、声を上げる事無く頷き、帝国旗を掲げ、結衣を先頭にゆっくりと進み始めた。


 通りを疾走し、住宅区画まで行くと、結衣と距離を置いたヨナが大声を上げた。


「国王軍の白い悪魔めー! 待てーーーー!」


「国王軍の白い悪魔が出たぞー!」

「白い悪魔が城内に入った!」

「白い悪魔め、待ちやがれ!」

 他の部下達も大声で叫ぶと、住民達が窓からその様子を覗いていた。


 住民達からは

「国王軍の白い悪魔が帰ってきた」

「みんな、国王軍の白い悪魔が助けに来たぞー!」

「白い悪魔が反乱軍を倒しにきた」


 歓声に近い声が上がり、城内は騒然となった。

 実は、これはダニエラが信用出来る大人達に、結衣が出てきたら大袈裟に騒いでくれるようにお願いしていたのであった。



 結衣は馬に跨り、百人が警備している食糧庫へ真っ直ぐに向かう。

 サナがその後ろから大声で

「国王軍の白い悪魔は、生け捕りしろとの命令だー! 帝国軍に任せて農民解放軍は手出し無用だ!」

 と、叫びながら結衣の後ろを付いて行く


 すると、槍を手にした警備兵達が結衣を避け、食糧庫までの道が開けた。

 結衣が食糧庫の前で馬から降り、ヨナとチャンバラを繰り広げながら、扉を破壊し、壺に油を入れて作った火炎瓶で食料を燃やした。


 警備兵達が

「大事な食料が燃やされたぞ……」

「……ん?」

「どうした?」

「あいつら、全員帝国兵じゃねーぞ!」

「なんだと!」

「やっちまえー!」

 と、騎兵に襲い掛かって来た。


 薙刀を合わせていた結衣とヨナは

「あれ? バレちゃった見たいね。」

「あら、意外と早かったわね。」

「逃げましょうか?」

「逃げるぞー」


 結衣が先頭となり、薙刀を振り回し突破口を開くと、五十人の騎兵隊がそれに続いたが

 騒動に気が付いて出てきた農民解放軍が、うじゃうじゃと湧き出るように結衣達の行く手を阻む、結衣と三姉妹が薙刀で進路を確保しながら進むが


「馬をやれ! 足を止めるんだ」

 と指示が飛ぶと、一人また一人と、馬をやられ落馬して行った。

 全員が地面に叩き落とされると、結衣達五十人は、数万の農民解放軍に囲まれた。


「無駄な抵抗は止めろ、武器を捨て降伏するんだ。」

 と、士官らしき者が前に出てきた。


「チャナさん……」

 結衣は薙刀を構えながら、チャナに声を掛けた。

「ユイさん、貴方が国王軍の白い悪魔だったとは……」

 チャナが複雑な表情で呟いた。


「チャナ隊長、こいつの首は金貨二十枚だって話しだ。やっちまおうぜ!」

 チャナの後ろの大男が威勢のいい言葉を放つ


「待て!」とチャナが大男を制した後、

「最後通告です。ユナさん降伏して下さい。命の保証は私がします」

 

 結衣は表情を変える事無く

「チャナさん、私達は降伏しませんよ。」


「ユイさん……、私は貴方達を……」

 チャナは唇を震わせながら、困惑している。


「チャナ隊長、もう無駄だ、やっちまうぜ!」

「おおおおおおおおおおお」

 と、農民解放軍が一斉に結衣達に襲い掛かる。


 囲まれながらも、必死の抵抗をする結衣達であるが、ひとり、またひとりと刃に倒れていく

「うぎゃー」「ユイ百人長……」「お母さーん」


 すると、遠くから地鳴りのような足音が響いてきた。

「うおおおおおおおおおー」

「反乱軍を倒せー」

「白い悪魔へ続けー」


 数十万人の住民が、こん棒やナイフを手に一斉蜂起したのである。

 その住民の先頭には、旗を掲げたダニエラの姿があった。

「ダニエラちゃん……」


 結衣は、薙刀を振り回し目の前の敵を倒すと、勢いを付けて建物の天井に昇り、

「アルマサン城塞都市の住民達よ! 武器を持ち、我に続けー」

 と、叫ぶと、周囲から一斉に

「おっおおおおおおおおおおおおおお」

 と、歓声があがった。



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