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16 時間

 少し慣れてきたのか、濃厚接触後でも寝られるようになってきた。慣れって凄いね。


 翌朝目覚めると岡さんたちはまだ寝ていた。


「おはよー。起きて準備しないと仕事遅れるよー」

 僕は二人のベッドに行き、声をかけたが伊澤さんにベッドに引きずり込まれた。

「んー今日は休みなんだー。休みナシで働くとかヤバいっしょ」

 浄化をかけてもらった後に朝から濃厚接触した。

 ソーシャルディスタンスなど、この世界には無いのだ。


 朝食を終え、昨日の件をニ人に話す事にした。


「家を買おうと思います」


「は? マジー? 矢吹っちそんなに稼いでるの?」

「ヤバッ! 旦那の稼ぎヤバ。うちらも住んでいいんだよね? 嫁だし」


「嫁ではないけど、もちろんいいよ。最初からそのつもりだし」


「矢吹っちはなんでそー真面目に答えちゃうかなー」


「まあまあ、実はもう目星ついてるんだ。それでね、家を手に入れるには僕が遠出の仕事に行かないといけないんだ」


「ウチらどうするの?」


「期間は、一応わかっている範囲では往復で四週間かかるみたい。ここの宿はそれ以上の期間分払っておくから心配要らないよ」


「新婚なのに即単身赴任とかヤバ。それ絶対浮気しにいくパターンだよ」


「いや、結婚はしてないでしょ」


「ユリナもお嫁さんなるもん!」

「そっかー、大きくなったらお嫁さんになってねー? よしよし」

 ユリナを撫でまくる。願わくば、この純粋さを保ったまま成長して欲しい。


「ユリナちゃんは連れていくの?」

「もちろん」


「それで矢吹っちはどこにいくの?」

「ドルフィノだよ。情報によると、森山(モリモリ)が居るらしいんだ」


「まじ? 連れてくるの?」

「僕としては連れて来たいけど、森山(モリモリ)の現地の生活もあるだろうし、会ってみないとわからないね」


「うちら置いて本命に会いにいくとか……ヤバ」

「だーかーらー、ソッチ系の趣味ないってばよ」


「はいはいー。ウチら留守番してるからやりたいことやりなよ」

「理解ある嫁で良かったねー」


 これで大体の話はついた。


 みんなでしばし家の事を歓談しているとエルフニ人組が来て、治療院で働く事になって宿を安い所に変える旨を知らせに来た。

 何度もお礼を言って帰っていった。良かった良かった。



 ディンさんの叔母さんと打ち合わせしてドルフィノに行くのは五日後に決まり、

 一応エルメスさんに伝えるために冒険者ギルドにきた。


「メスの匂いがどんどん強くなってますね」

「実はドルフィノに五日後に行くことになりました。一応その挨拶にと」


「これから私に付き合ってください」

「え? どちらに?」


 エルメスさんはニコって笑うとギルド内の職員に何かを告げて僕の手を取り歩き出した。


「あの……」


 ギルドの馬車の駐車場に行くとタクシーみたいに使える馬車をつかまえ、僕をそこに押し込んだ。

 馬車の中でエルメスさんは一言も話さず、ずっとニコニコしていて不気味だった。


 着いた場所は予想通りというかエルメスさんの家だった。ディンさんの叔母さんの屋敷以上の豪邸だ。


 僕の手を取り、馬車から出ると門の前にメイドさんが数人おじぎしていて、庶民の僕は凄い場違いな所に来てしまった感ハンパ無い。


 豪華な客間に通されてお上品なお茶とお菓子を出された。


「あの、もしかしてもしかします?」


「何のこと?」

「いや……そういうことをしにきたのかと」


「エリオさんの返答次第ではそうするつもりよ」

「と、言いますと?」


「何かしら肉体の繋がりがある女がニ人居るのよね?」

「は……はい」


「ニ人はお嫁さん? にしては少し薄い気がする」

「いや、元住んでいた場所の知り合いです。でもキスするぐらいには仲が良いです」


「その子たちもハイエルフ?」

「普通の人間ですよ」


「そう……。その子たちはどうするつもり?」

「まだ答えは出てません」


「ドルフィノから帰ってくるまでには答え出しなさい? エリオさんにとって、その子達が大事なら、その子たちが寿命を迎えるまでは一番は譲ってあげるわ」


「気の長い話……ですね」


「ハイエルフのエリオさんもサキュバスの私も普通の人間と同じ時間を生きられない。それを忘れないで。いずれ必ず悲しい別れが来るわ。この先、大切な人を何度も看取ることになるかもしれない」


「はい……」


「人と距離を置けってことじゃないの。覚悟が要るってことよ」

「はい」


 その後の事はあまり覚えてない。

 エルメスさん所有の馬車で宿まで送ってもらった事は覚えている。


 今まで寿命の事とか考えてなかった。考えないようにしてたのかもしれない。


 今僕の膝の上で幸せそうに寝ているユリナともいずれ死に別れてしまうなんて、思いたくないよ。

 もう、みーちゃんの時みたいに悲しい思いをしたくない。

 僕はあの時の事を思い出し、膝で寝てるユリナとみーちゃんを重ねて涙を止められなかった。


 そんな僕を察してか、くーちゃんが寄り添ってくれていた。


 ピロン♪ピロロロロン♪


 こんに時になんだよ……。ほんと空気読めない人だよ。


---------------------------------------------------------------


矢吹へ


まったくメソメソと情けない奴じゃ。

お主何か忘れてないか?


特製ポーションの存在をな。


だが、くれぐれも注意せい。長く生きる事が人間の幸せの全てではない。


まぁ難しく考えるな。

いつまでも若い嫁とまぐわいたいなら、年に一回飲ませる事じゃ。


じゃあの


---------------------------------------------------------------


 雰囲気ぶち壊しだよ!


 ていうか、僕の事覗いてるの?? やめてよね!

 でも、ありがとうヨルさん。あの人なりに気遣ってくれたのだろう。


 おかげで僕が取りうる選択肢が増えたのは間違いない。

 飲むかどうかその時、その人に任せよう。今はまだその時ではない。


 ていうか、あの薬は寿命一年止めちゃうのか。

 ユリナは来年も5歳? 僕的には可愛いからヨシ。

 そのままの君でいて。


 あれ? というと、たくさん飲めば若返るのかな?

 ゴメットさんがこっちを見た気がした。


 それから四日間、僕はクラフトに励んだ。

 想像以上に自由度が上がったクラフトのおかけで立派な家が作れるようになった。

 それはそれとして、旅用の小さい家も作った。ワンルームだけど風呂トイレ付きの住むことが十分可能な家だ。


 あれ? 僕って建築の才能あるかも。日本に居たら絶対気が付かなかったよ。


 それと、良い意味で誤算だったのはゴーレム核をクラフトで使えた事。

 つまり僕はゴーレムを作れるのだ。なのでミスリルゴーレムの素材を使い、自動車を作ってみた。


 車のモデルは僕がいずれ乗りたいなと思っていたイタリアのマセ○ティ。身長的に運転席がチャイルドシート仕様みたいな変な車だ。


 ただ、自動車のガワを作ってもエンジンは無い。だが、このゴーレム核を付けて回転の設定を完了させれば…。


 バキバキバキッバッシーン……


 事故った。


 試運転の為に、森の開けた所に来て運転して良かった。

 なぎ倒された木の上に乗り上げた車を収納して、もう一度挑戦!


 ズダーン……


 木に正面衝突した。


 どうやら僕は運転の才能がないらしい。核の設定がダメなのかも。


 こんな危ないものにユリナは乗せられないので、今はアイテムボックス内の肥やしにするしかなかった。練習する時間も無いしね。


 とぼとぼと宿に戻ると、宿の前で制服を着た岡さんと伊澤さんが立っていた。


「どうしたのニ人共」

「……ちょっとウチらに付き合ってよ」


「うん、いいけど」


 ニ人に付いて行くと、屋台が立ち並ぶ安宿街に着いた。

 以前ミリさんに案内してもらった美味しい屋台が多いゾーンだ。


「ここに入るよ」


 僕は岡さんと伊澤さんに手を引かれ安宿に連れ込まれた。

 捕まった宇宙人状態だ。


「ここさー、以前ウチらが住んでたんだ」

「そうそう。ネズミ出るの。ヤバいよね」


「へぇ……確かにボロいね。他に客居ないし」


 二人は目配せをしてから徐に制服を脱ぎだした。


「ちょ、なに?」


「これとこれと、あとこれも」


 ブラウスと紺のスカートと下着類とソックスとローファーを二人分、と生理用品? を手渡された。もちろんニ人はマッパだ。


「はい浄化!」

 ポカンとしてる僕をよそに、伊澤さんは僕の持ってる服や下着に浄化をかけた。


「何着かさ、複製してもらいたいんだ、ウチらこれしか服ないし、傷む前にさ」

「ナプキンも、もうそれしかないからヤバいしね」


 あーはいはい。そういうことね。僕は動揺を隠せていないが、なんとか平静を装った。暴走しそうな下半身を諌めて、ベッドに腰掛け無心で服や下着を複製し続ける。


 ブラってこういう構造してるのか……意外に堅いな。

 パンツは……柔らかい。


 生理用品も初めて触った。構造見た限りパンツに貼り付けるということか……。勉強になるな。

 やがて複製した全てが100個ずつを超えたあたりで作り過ぎたことに気づく。動揺しすぎだろ僕。


 ふう……。


「はい、下着類とソックスは10着ずつ、制服は5着ずつ複製したよ。靴は3足、生理用品はこの木の箱にいっぱい複製しておいた」

 裸で両隣に座るニ人をあまり見ないように手渡した。


「サンキュ。矢吹っち」

「ヤバ……。そのスキル便利すぎ」


「これやるなら、今いる宿でも良かったんじゃない?」


「ウチらさ、マジなんだ」

「……」


「え?」


「ドルフィノ行く前にちゃんと彼女にしてよ。嫁にしてとまでは言わないから」

「嫁とかよく考えたら重い女でヤバいよね」

「それは……」


「ダメ?」

「ダメではない……です」


「じゃあ、OK?」

「はい……」


「やった!」

「ヤバ嬉しい!」


 抱きついてきた二人と大人の階段登ってしまったのは語るまでもない。

 しかし、初めてが×3とかどうなのよ。


 体験してみて二つわかった事があった。女の子は柔らかい。

 そして僕はスピードシューターだったことだ。


 一応確認してみると、ニ人の鑑定結果の配偶者の項目にエリオと表示されて、処女の表示は消えていた。


 その後、少し歩きにくそうな二人と寄り添って宿に帰った。

 早速複製した生理用品が役立ったようだ。


 こういう関係になったのは後悔していない。

 ユリナとニ人を守って異世界を生き抜くだけだ

評価ありがとうございます!予想以上にやる気が出てきました。

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