12 初ピンチ?
今日はゆっくりお風呂を楽しむ事ができたよ。
ユリナとお湯をかけっこしたり、泳いだり年甲斐もなくはしゃいでしまった。
お風呂から出ると、岡さんたちはよほど疲れていたのかベッドで寝ていた。
残金が底を尽きそうな状態で精神的にも追い詰められてたみたいだし、当然だろう。
僕も今日は疲れた。ベッド二個くっつけてユリナとくーちゃんと川の字になって寝た。
朝起きると岡さんたちはだらしない格好でぼけーってしていた。緊張感のない二人だ。
宿の備品の浴衣のような服から色々ポロリしちゃってるのでなんとかして欲しい。
ユリナはもう起きていて、くーちゃんと何か話している。
尊い。守りたいその笑顔。
僕は準備を済ませると、ぼけーっとしてる伊澤さんに頼んで浄化してもらった。
お口スッキリを一度味わうとクセになる。
僕はユリナを連れて一階の食堂で朝食を摂る事にした。
ピロン♪ピロロロロン♪
ん? この音は……。朝食中に手紙送ってくるとは相変わらず空気読めないお人だ。
食休みしてアイテムボックス内を確認しよう。
ヨルさんの手紙は取り出さなくてアイテムボックス内で読むことが出来るのだ。
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矢吹へ
ワインは美味かったぞ。次はもっと沢山入れるのじゃ。
わしは蒸留酒も好きなので、それもな。
精神は弄ったぞ。
家族が恋しくならないようにする配慮と、戦いに支障をきたさないためにな。
ぬるま湯の世界に育ったお主らでは厳しいだろうからのぅ。
わしの心遣いに感謝するといいぞ。
闇猫と例の眷属は関係ない。
薬はどんどん飲め。飲めば飲むほど人を辞めて強くなる。
酒次第では追加してやっても良い。
水は少なくなってたから、追加しておいたぞ。遠慮なく飲むがいい。
スキルの件は大いに感謝せよ。感謝を態度で示すならば酒を入れるのだ。
わしに何かして欲しいなら酒を用意するのを忘れるでない。
じゃあの
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はぁ……。ヨルさんやりたい放題だね。
そして人を辞めて強くなるって文面に一抹の不安を感じる。
あと、なんかパシリにされてる気分なんだよなぁ。
僕に酒を貢がせるためにこの世界に呼んだとかそんなオチじゃないよね?
まぁいいや。朝食を摂って出かけないと。
「じゃあ今日も出かけてくるから、くーちゃんと待っててね」
「うん。いってらっしゃい」
「岡さん達もちゃんとギルドに行ってねー?」
「あいよー」
「……」
大丈夫かな? 僕はニ人の保護者でもなんでもないし、これ以上は本人たちに任せよう。
ユリナとくーちゃんをひと撫でしてから宿を出た。
方針を変えよう。
ユリナの事はくーちゃんに任せる。
今一番の問題はお金だ。世の中お金が無いと幸せは逃げてしまうのだ。
だから世の中のお父さんは頑張って働くのだ。幸せを手放さないように。
この世界に来てそれが良く解ったよ。
僕がお金をてっとり早く稼ぐ方法、それはこのスキルを活かして魔物を退治することだ。
容量の大きいアイテムボックスを強みに移動倉庫役という手もアリかもしれない。これは報酬次第だな。
とりあえず冒険者ギルドで相談しに行こう。
魔物退治の相談等は真ん中の総合カウンターらしい。
朝だから並んでるけど仕方ない。僕も並ぼう。
「君、若いよね。冒険者なの?」
振り返ると2メートル以上ありそうな長身の女性が居た。
クマ耳みたいなのがついてるから、獣人だと思う。
「そうですよ。こう見えてお姉さんより年上だと思います」
「あ、ハイエルフなんだ? ハイエルフ初めて見たよ」
この後、順番が来るまで色々と話したおかげで退屈な待ち時間にならずに済んだ。
クマ獣人のお姉さんの名前はグレーマさん。最近田舎から出てきたらしい。
女性の褒め方としてはどうかと思うけど、筋肉が凄くて羨ましかった。
「どのようなご用件で?」
受付してくれてるのは残念ながらおじさんだ。
いいんだよ。おじさんの所が空いてたし。
「アンデッドかゴーレムが居る場所を聞きに来ました」
「はぁ? なんの為にだ? まさか戦いに行くとかじゃないよな?」
なんか口の悪いおじさんだなぁ……。並んだ場所失敗した。
「僕だって戦えますよ」
「本当かぁ? ギルドカードを見る限りは結構な歳だし、問題無いっちゃーねーが」
「もちろん大丈夫ですよ」
「だが、ゴーレムは無理だな。あれはBランクからだ。レイス等が居る墳墓もGランクのお前じゃ危ない」
「こう見えて僕強いです。オーク程度なら一撃です」
その言葉を聞いて周りの人たちが爆笑した。
子供が背伸びしてるように見えたのだろうか。
「ほらよ。何があっても自己責任だと言うことを忘れるなよ?」
なんだかんだ言って口は悪いけど、魔物分布図を渡してくれた。
「ありがとうございます」
「おう。死ぬなよ。危なくなったら逃げろ」
「はい」
こうして僕は冒険者の第一歩を歩み始めた。
◇◆◇◆
地図を見る限り、一番近い墳墓に来てみた。
ここは冒険者に人気が無いのか、殆ど人がいない。スケルトンやレイスが居るらしい。レイスって事は幽霊みたいなやつだよね?
こ……怖くなんてないし。
兎に角、自分を信じて進むのだ!
警戒のため反発収納バリアを張りつつ墳墓を降りて行く。
するとフワフワ浮かぶ血走った目をした半透明の魔物、レイスが飛んできた。
レイスに意識を集中させて……収納!
■■■■魔物用■■■■
レイス 01
■■■■■■■■■■■
よしっ! 入った!
予想した通りの展開に僕は思わずニンマリする。
僕のチートアイテムボックスならいけるとは思ってたけど、内心怖かった。
生き物以外なら何でもアイテムボックスに入るならば、生きてない魔物も入るはずだの強引理論を体現できた。
後はもう突っ走るのだ!
収納!
収納! 収納! 収納!
あらよ! もういっちょ収納!
収納ぉぉぉぉぉぉぉ!
あれから何時間経ったかな? 一撃で倒せるとはいえ気疲れしたから外に出で休んでる。
奴らは足元からも湧いてくるし油断が出来なかった。
■■■■魔物用■■■■
レイス 88
スケルトン 154
ゾンビ 10
ゾンビナイト 57
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おー。いっぱい入った。
でも入れただけではレベルは上がってない。これについては予想外だったかも。
なんとかこの状態から倒さなくてはならない。
でもこうすれば……分離!
■■■■魔物用■■■■
レイスの魔石 88
エーテル体 88
スケルトンの魔石 154
スケルトン 154
ゾンビの魔石 10
ゾンビ 10
ゾンビナイトの魔石 57
ゾンビナイト 57
シルバーメイル 11
鋼の剣 32
メイス 06
こんぼう 13
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よし上手くいった! ――え?
僕は急な目眩に襲われて意識を失ってしまった。
◆◇◆◇
ガタガタ……ゴンッ
痛っ……後頭部ぶつけた。
目眩して倒れちゃったのかな?
ゴトゴト……
意識がハッキリしてきた。
ここは馬車の中? まるで牢屋みたいな作りだ。
「おい、ガキが起きたぜ!」
外から覗いていた男が声を上げると、数人のガラの悪い男達が歩いてきた。
「こいつ絶対高く売れるよな? オスだがこんな上玉なら凄い値が付きそうだ」
「今日は宴会だな! ギャハハ」
「これは一体どういうことですか?」
不穏な事言ってゲラゲラ笑う男たちに質問してみた。
「バカみてぇに子供が一人で寝てるから拾ってやったのさ。俺たちがな。奴隷の首輪も付けちまったし、もう、お前は商品なんだよ」
「つまり違法な奴隷商人ということですか?」
「これ見ろよ。お前の買取証明書だ。この書類は本物だ。諦めて大人しくしとけ」
本物ね。多分書類をごまかす裏技みたいなのがあるんだろう。しかし……手枷が邪魔だな。
それより何で倒れてしまったのだろう? 可能性としては急激なレベルアップが原因ではなかろうか? 経験値入った時に目眩したし。
ステータス見てみよう。
レベルは……116まで上がっている。
■■機能■■
容量=ほぼ無限
時間停止
ボックス内鑑定
ボックス内パーティション作成
範囲収納
ボックス内クラフト
ボックス内分離≒結合
ボックス内熟成
ボックス内温度管理
ボックス内複製
■■■■■■
機能も色々増えてる!
容量は限界突破したみたいだ。
熟成? 詳細を見てみたらボックス内の時間を好きに進められるらしい。ただし戻すことは出来ない。
酒樽買って入れてこの機能使えば、年代物のお酒が作り放題ってことなのかな?
温度管理はアイテムの温度を変更できるらしい。この機能使えばキンキンに冷えたコーラ飲めるね。コーラ持って無いけどさ。
複製は……なんと、ボックス内のアイテムを魔力を使って複製するスキルらしい。
複製には魔力をかなり使うみたい。でも、これは凄いです。革命的ですよ奥さん。
複製以外は微妙な機能で少しガッカリしたけど、使い方次第で色々できそうだ。
なーんて、ゆっくりステータス確認して落ち着いていられるのは、僕がいつでも脱出できるからだ。
何故今すぐ脱出しないかと言われると。僕以外にも捕まっている人たちが居るから。
馬車の中には若い狼獣人の男が三人、人間の若い女性が一人。それとエルフが二人。
「もしかしてみなさんも違法な捕まり方したんですか?」
一応確認の為に奴隷さんたちに聞いてみた。
「いや、俺達は違う。村が貧しくて、口減らしのために自分を売ったんだ。そっちの女もだ」
「……無神経な質問してすみませんでした」
「別にいいさ。だが、そこのエルフの姉妹は君と同じ境遇みたいだぞ」
エルフの姉妹はこっちを少しだけ見たがすぐ目をそらした。
あれれ? 何もしてないのに嫌われちゃった?
なるほど……。観察してみると普通のエルフは確かに僕と見た目が少し違うみたいだ。
耳は長く垂れているし、髪の毛は緑がかった金髪だ。目の色も緑色に近い。
僕の姉ほどではないけど、二人共めちゃくちゃ可愛い。
奴隷のとしては最高の商品なんだろうね。
「エルフのお二人は何故魔法を使って逃げないんですか?」
「……」「……」
「逃げられるわけないだろ。奴隷の首輪嵌められいると魔法は使えない」
無口なエルフ姉妹の代わりにさっきの獣人さんが答えてくれた。
いや、使えるよ? さっき試しに小石をアイテムボックスから出してみた。
これは極振りのチート効果なんだろうね。
どうしよう。今すぐ脱出すべきか? あまり遅く帰るとみんなを心配させちゃうしな……。
「みなさん話聞いてもらえますか?」
僕は全員を見渡し、小声で問いかけた。
「僕の魔法ならば使えます。逃げる事は可能ですが全員一緒に逃げませんか?」
「無理に決まってる。それに俺たちは売られた身だ。逃げたら一生追われ続けることになる」
「そうだよ。変に期待させるような事言わないでくれ」
「これだから子供は……」
「私は逃げたいわ」
「……」「……」
人間の女性は逃げたいようだ。
「あなたも自ら身売りしたんじゃないのですか?」
「そうだよ。でも、私見たの。あいつらうちの家族にお金なんて払ってない」
「どういう事ですか?」
「村長に払っておいたから取りに行ってくれと言って、家族が村長宅に出かけたスキに私を連れて逃げたんだ」
「まさか俺たちも!?」
「恐らくそうなんでしょうね。これで残る理由はないはずですよ」
「だが……売買契約書がある限り、どうにもならない」
「――ならば契約書が無くなればいいんですよね? みなさん衝撃に備えてください!」
僕は奴隷のみんなが着ている服以外の全て収納した。
ドサァ! ズザァァァ!
悪徳奴隷商は真っ裸になり、馬車は消え、僕以外全員すっ転んだ。
「手荒のやり方ですみません。獣人の人、これを使って!」
獣人さんたちにゾンビナイトが使っていた棍棒を投げて渡した。
ふるちん状態の悪徳奴隷商は地面に倒れたまま唖然として固まっている。
奴隷の首輪が無くなってる事に気づいた獣人さんは覚悟を決めたようだ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
獣人さんたちは雄叫びを上げながら悪徳奴隷商に突撃し、三人で暴れまくった。
元々身体能力の高い上に、武器を持った獣人三人を相手に無手の人間が敵うはずもなく、あっという間にボロ雑巾と化した。
「こいつらどうします?」
「このままでいいんじゃないか? 売買契約書無いんじや俺たちを捕らえることはできない」
「後腐れなく、ぶっ殺した方がいいんじゃないか?」
獣人さんの一人がそう言うと、悪徳奴隷商人たちは「ヒィ……命だけは……」と悲鳴をあげた。
奴隷になってた女性は、泣きながら命乞いをする悪徳奴隷商のリーダーぽい人に近づくと思い切り股間を蹴り上げた。
「ぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
蹴られた男は白目剥いて泡吹いて失神してしまった。
「私はこれでいいよ。スッキリした」
「じゃあ、俺もいいや」
「ああ、俺も」
「同じく」
「これにて一件落着カッーカッカですね!」
その後、悪徳奴隷商が持ってた結構な額のお金をみんなで山分けして解散した。
獣人さんと女の人はドルフィノへ行くことを決めたらしい。
もし、僕がドルフィノに行くことがあればまた会おうと約束した。
みんなには何度もお礼を言われてむず痒い気分になったけど、助けられて良かったよ。
ところでエルフの姉妹だが……鼻血を出しながら、ずっと僕を睨んでいる。
これしか方法が思いつかなかったんだ。許して欲しい。
さてどうしたものか。
スキル構成を少し変更しました。




