11 同級生
ディンさん達にユリナの事を相談するために、冒険者ギルドに再びやってきた僕は、また相談カウンターの前に立っている。
「この鍵を受け取る気になりました?」
エルメスさんは細くて綺麗な指で鍵をつまみ、ニコニコしている。
「もしかして教会の状況が判っていて、僕が戻って来ると確信してたのですか?」
「ええ。実際ご自分の目で見て聞いた方が納得いくと思いましたので」
「確かに納得できました。その話は置いといて、ディンさんたちの拠点の場所を聞きに来ました」
「はいどうぞ」
既に用意されてた思われる紙を見てみると、丁寧に描かれた地図だった。
アレな人だけど、字は綺麗だし絵も丁寧だ。
さりげなく自分の家の位置まで印が付けられていた。鍵も一緒に渡された。
「なんか手のひらの上で踊らされた気がします」
「お待ちしてますね」
「行くつもりは無いですよ」
結局、鍵を返しても受け取ってもらえずに仕方なく貰って帰ってきてしまった。仕方なくだからね!
地図を見ながら歩いていく……。めっちゃ見られている。
女の子に可愛いとかとか抱きしめたいとかキャーキャー言われるのには慣れてきた。
問題は男にまでガン見されることだ。多分女の子だと思っているのだろう。ロリコンなのかな?
「ねぇ、あの子ちょー可愛くない? スマホあれば写真撮りたかったわー」
「ほんとヤバ! 何アレ! 異世界ヤバ!」
ん? なんか聞き覚えのあるワードが聞こえて来たぞ。
スマホがどうとか言ってなかった?
声の聞こえた方を見ると、見覚えのある制服に身を包んだ女の子二人組が居た。
同級生に初遭遇だ! ちょっと嬉しい。でも、知らない女子だ。隣のクラスの子かな?
知らない女子に話しかけるなんて緊張するけど、せっかく会えたのだから話しかけるべきだろう。
もしかしたら他の人の事知ってるかもしれないしね。
「一宮高校4組の人ですか?」
異世界人に事情を知られているような口ぶりで話しかけられて女子二人は固まっていた。
◆◇◆◇
「え? え? なんで知ってんの? でもうちら3組だよ」
「異世界人のちょーのーりょくじゃね? ヤバ!」
「あれ? 3組ってことは同じクラスだ。僕も転移してきたんだ。ヨルさんのやっつけ仕事のせいでこの姿になったけど」
「えー? マジ? 誰なん?」
「矢吹光一だよ」
「まじー!? 元々可愛かったけど、爆アゲじゃん。つーか、何でウチらの事知らないんだよ」
「矢吹ヤバ! 女の子になったの? ヤバ! 男子に見つかったら絶対やられちゃうよ!」
「ごめん。人付き合いが苦手で森山としか会話したことなかったからね。あと性転換はしてないから」
「あー確かにいつもアイツにくっついてたよね。女子の間では二人は出来てるって噂されてたよ」
「そういう趣味はないからね! ところで二人の名前を教えてください」
「ウチは岡芽衣子。ちゃんと覚えてよ」
「伊澤渚だよ。クラスメイトの名前知らないとかヤバ!」
僕の事は一応わかって貰えたようで良かった。
一旦ディンさんの拠点行きを中止して、二人と今後の相談をすることにした。
向かった場所は移動中に見つけたベンチのある広場。
ここなら誰かに話を聞かれる心配は無いと思う。
「えっと、この世界の人に異世界人という事をバラすのは止めたほうが良いという……お互いの認識でいいのかな?」
「その方がいいんじゃね? ウチらもそういうの誰にも話してないし」
「バレたら捕まりそうでヤバいじゃん!」
「二人は何処に住んでるの? 身奇麗だから宿とか?」
「そうだよ。ほら、アイテムボックスにお金入ってたから今まではなんとかなってた」
「綺麗なのは、うちの魔法のおかけだぞ。浄化!」
ヤバヤバうるさい伊澤さんが魔法を使うと体がスッキリした。お口の中までスッキリ。
「何この魔法……ヤバいね」
「でしょ? うちもまじヤバ! って思ったし!」
「二人はここの近くに飛ばされてきたの?」
「そう。少し離れた森の中だったよ。壁が見えたから壁沿いに歩いて門見つけて街に入った感じ」
「他に出会った同級生居る? 僕は二人が初めてだよ」
「ウチらも矢吹っちが初めてだよ」
「冒険者登録とかした?」
「なにそれ?」
「今はその事はいいや。大体事情はわかったよ。僕のことも話すね」
ニ人にここに来るまでの出来事をかいつまんで話した。
闇猫の事やユリナの事を話すと2人は興味深そうに聞いていた。
「じゃあ、ウチらも矢吹っちの泊まってる宿に行きたい。たまにはお風呂入りたいし」
「高いよ?」
「そこは男の矢吹っちが甲斐性見せて養ってよ! マジで嫁になってもいいからさ」
「じゃーうちもついでに養って。片山君ばりにハーレムじゃんヤバ!」
「二人を養えるほど僕もお金無いよ……」
「ウチら二人合わせても、もう100ゴルしか無いし助けてよ」
「そんなに使っちゃったの?」
「元々500ゴルしか入ってなかったし、宿代で消えるっしょ」
「これでも一番安いネズミが出るヤバい宿で節約したんだよ」
ヨルさん依怙贔屓しすぎだぁ。僕のアイテムボックスには2万ゴル入ってたなんて言える雰囲気じゃないな。
「わかったよ。考えてみる」
協議した結果、もう一度冒険者ギルドに戻り、二人を登録させた。
ついでにギルドに貯金してあったお金を全額下ろして宿に戻り、四人部屋へと変更した。
四人部屋は二人部屋より大きくて豪華。値段は一人400ゴルで、一日1600ゴルかかる。
一ヶ月借りる予定だった二人部屋のキャンセル分のお金は半額戻って来たけど、かなりの損害だ。
手持ちのお金をかなり目減りしたので、とりあえず四人部屋は一週間分払った。
「二人には働いてもらいたいんだ」
「えー? ウチ共働きは嫌なんだけど」
「うちも専業がいい」
「そういうネタはいいので、働いてください。お願いします」
「ネタじゃねーし。マジで嫁になるつもりだし」
「うちら処女だからヤバいお得だよ?」
「二人は今の状況に冷静な判断できなくなってるんだよ。だから聞かなかった事にする」
「矢吹っちって見た目と違って結構大人だったんだねぇ。でも嫁にはなるから」
「はいはい。それは置いといて、明日は今日登録した時に行った冒険者ギルドの相談カウンターに行って2人のスキル活かせる仕事を紹介してもらってきてよ。それとも魔物退治の方がいい?」
「仕方ないなー。わかったよ。魔物退治はマジむりー」
「うちも、そういうヤバい仕事無理」
もう疲れた。
今日の予定は全部キャンセルしよう。
僕は岡さん伊澤さんを連れて変更した四人部屋に行くと、それに伴い部屋を移動したユリナがくーちゃんを抱きしめながらこっちを見ていた。
「お兄ちゃん……おかえり」
ユリナは知らない人が二人も来て腰が引けているようだ。
「キャーーーー! カワイイー狐っ娘!」
「ヤバ! 矢吹が保護しちゃう気持ち解りすぎる!」
二人はユリナに走り寄り抱きつきスリスリモフモフと初対面なのに馴れ馴れしい。くーちゃんはふわりと僕の横に移動してきた。
「そっちの闇猫ちゃんもモフモフしたいんだけど!」
「二人ともストップ! ユリナ驚いてるし、くーちゃんは騒がしいの苦手だから」
逃げて僕の所に来たユリナを抱きとめてなでなでしてから、ユリナに二人の事を紹介した。
二人は以前住んでた所に居た知り合いという事にしておいた。二人が僕の嫁になる予定と言っちゃうものだから、
「ユリナもお兄ちゃんのお嫁さんになる!」って対抗してた。
これが娘から「将来パパとけっこんするー」と言われる気持ちなのか。
心がほっこりするね。そして年頃になり、汚物を見るような目で見られ、ある日チャラい彼氏を家につれてくるのさ。
……辛い。
四人で宿の豪華な夕飯食べて一息ついてから、大きめのソフォーで寛いでいる。
前の宿では残飯みたいなのしか出で来なかったらしくて二人は涙を流しながら食べていた。
「お風呂は先に入ってきちゃってよ。僕はやることあるから」
「やることって覗き? 覗くぐらいなら一緒に入ればいいじゃん」
「先にシャワー浴びてこいよって? ヤバ!」
「違うからね。ユリナも居るし、そういうネタやめてね」
「ほんと矢吹っちは真面目よねー。じゃ、お先に入らせてもらうよ」
そう言って、二人は制服を脱ぎだした。突然の事態に僕は固まり、すっぽんぽんになるまで凝視しちゃったよ。
「僕が居るの場所で脱がないでよ!」
「ガッツリ見てたくせに~」
ニヤニヤと笑いながら僕に体を見せつける二人は慌てる僕を見て満足したのか、お風呂に行ってくれた。
小学生の弟をからかう感覚なのかね? とりあえず今は立ち上がることができないのだ。
ユリナはくーちゃんとソファーで寝ちゃったし、アレも少し落ち着いたので、ヨルさんへの手紙を書くことにした。
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ヨルさんへ
聞きたいことがあるので、お酒と一緒にこの手紙を入れさせてもらいました。
まずは両親や兄のことです。何故か鮮明に思い出せません。
転生の副作用でしょうか?
臆病な僕が戦いに臆することがないのも不思議です。
僕の精神い弄ったりしてませんよね?
くーちゃんはみーちゃんと関係ありますか?
特製ポーションですが飲む度にどんどんハイになっていく気がします。
飲みすぎると廃人になったりしますか?
最後に、アイテムボックスのスキルはとても役立っています。
本当にありがとうございました。
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これでヨシ! ヨルさん専用スペースにワインと共に入れておいた。
そうしてるうちに、二人がお風呂から出てきた。
ちゃんとタオルを巻いてて安心したような残念なような。
そう思った矢先、二人はガバってタオルを外して髪の毛を拭きだしてしまった。
長い髪は乾かすの大変だもんねー。じゃないよ。
煩悩を振り切り、僕はユリナを連れてお風呂に行くことにした。
「ふぃぃぃぃぃぃ……二人部屋のお風呂より広くて気持ちいいぃ」
「ふわぁぁ」
膝に乗せたユリナとお風呂に浸かり、こういう平和なのがいいんだよ。と、つくづく思った。




