弐話.聖女
シャーノという女の子についていくと、草原を抜け、街のような場所に入った。
円状の壁に囲まれており、入り口には門番らしき男が2人立っていた。全身真っ白な鎧のような物を身につけている。
「通行証とかはいらないのか?」
「大丈夫!国境を通るわけでもないし......ってこれも君は知らなかったよね!」
相変わらずぴょんぴょんとした雰囲気で答える。
街に入り、道を10分ほど歩くと、目の前に大きな噴水が4つある広場現れた。噴水の真ん中には女の子の像......いや、これは......
「シャーノの像か?」
麦わら帽子のようなもの、そしてワンピースのような服。そう、その女の子とは目の前にいるシャーノの他ならなかった。
「そうだよ!わたしはね、400年くらい前にこの場所で死んじゃったんだ!」
......聞き間違いか?
「シャーノ、お前、ここで死んだって?」
「うん!そうだよー!」
聞き間違いではなさそうだ。
「わたしはね、400年前に行われた魔神戦争で人族を守った聖女だったんだよ!」
「ちょっと待て。百歩譲ってお前が400年前に聖女だったのは認めた。だが、なんでその時に死んだはずのお前が今生きてるんだ?」
噴水の中の像は手入れこそされているが、なかなかに年季が感じられる。作られてから10年や20年ではないだろう。だが、目の前にいるシャーノの年はせいぜい11、2歳といったところのようだ。
「だーかーらー!わたしは精霊なんだよ!死んだ時に強い想いを持った魂は精霊なんかに生まれ変わって、肉体が死んだ後も生き続けるんだ!」
......やっぱり今わからねぇ。そんなことが現実に起こるのか?
「あ、もちろん、“この世界なら”の話だよ!他の世界では死=死だもん!」
......。
「少し質問するぞ。お前は俺が別世界から来たと確信しているがその根拠は何だ?」
「ん?そんなの簡単だよ?だってこの世界にはない服を着ているもん!それに君みたいな真っ黒な髪の毛は少ないしね!後ね、わたしは“お前”じゃなくて“シャーノ”だよ!」
言われてみれば、シャーノの髪の毛は水色だが......服装はそんなにすぐわかるレベルの違いがあるとは思えないんだが?どこが違うんだ......?
「あ、まずいよ、メルト!ここを離れよう!」
「え?あ、ちょっと待てよ!」
いきなりシャーノが走り出した。そんなに何を急いでるんだよ。周りからも見られてるじゃねぇか。
「ここまで来ればいいかな?」
「はー、はー......ったく、何だったんだよ......」
見た目とは裏腹にシャーノの足はかなり速かった。
「すっかり忘れてたよ!精霊の声はみんなには聞こえないってことをね!」
「はぁ?」
「つまりね?メルト以外にはわたしの声も聞こえてないし、姿見えてないんだよ!だから、メルトは噴水前で独り言をぶつぶつ言っている変人に見えてたってわけ!」
......だから視線を集めていたのか。
「っていうか、そういうことは早く言ってくれ。」
「ごめんね?忘れてたんだ......。」
......。
女子にシュンとされてもどうしたらいいのか分からないんだが......?
「あーもーいい。次からは気をつけろよ。」
......なんか自然と“次”なんて言っちゃったな。次なんてあるか分からないのに。
「うん!分かった!ところでメルト、今日は何をすればいいかとかも全然分からないよね!」
「まぁ、そうだが。」
「お詫びにわたしが案内してあげるよ!付いてきて!」
「あ、あぁ。」
こいつはアレだな。物事を一人で先走って勝手に進めるタイプだな。




