拾弐話.コア
“ピラキア”を狩り始めてから2ヶ月が経った。
「ふぅ、これで10個目だな。」
「うん!やっと終わったね!」
普通は紫色をしている手の中の個体は時々、水色のものになっている時がある。これが“水の契り”だ。
......それにしても疲れた。毎日200匹以上同じ魔物を狩るのは本当に苦痛だった。
「思ったより早かったね!2年くらいかかると思ってたよ!」
「......そんなに狩らせるつもりだったのか......。」
「だって0.01%だよ?今回、運が良すぎただけだと思うよ!」
毎日200匹狩ったとしてそれを60日だとすると......12000匹で10個だから......1200匹で1個とれて......0.08%ぐらいか?......確かにそう考えると、今回は早く終わりすぎてるような気がする。
「ま、早く終わったことに文句はない、か。」
今回は運が良かったんだな......1日で2個取れた日もあったし......あの日はビビった。
「よし、じゃあ、“水属性強化魔法のコア”に加工しよっか!」
「ふむ。」
「まず、ギルドの工場を借りなきゃだから、街へ戻ろう!」
シャーノに引かれて俺たちは街へ戻り、ギルドに入る。
「メイさん、工場って借りられますか?」
メイさんというのは初めてギルドに来た時、俺を担当してくれた職員だ。毎日魔石を売りに来るので、完全に覚えられてしまった。
「4号室なら空いてますよ。1時間10フィロです。」
「ありがとうこざいます。」
「1時間で十分だよ!」
「1時間だけお願いします。」
「分かりました。では、これが4号室の鍵です。10フィロお願いします。」
「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10っと。」
「確かに受け取りました。」
俺はシャーノに連れられて工場に向かう。工場というのは解体用の器具から剣なんかを作るための炉、加工用の魔道具までたくさんの道具が使えるギルドの施設だ。これだけのものが揃っていて1時間2000〜3000円で借りられるなら安いものだろう。
鍵を開け、中に入る。広さは6畳ほどで、右手側には炉、左手側には器具が置いてある。真ん中には大きな机があり、ここが主な作業台となるらしい。
「じゃあまず、“水の契り”を全部出して!」
「あぁ。」
俺は袋から水色の個体を10個取り出す。
「これで全部だ。」
「うんうん!次にあの左から3番目にある魔道具を取って!」
左から3番目......というと、このガラスの容器みたいなやつか?
「そうそう、それだよ!」
「ふむ。これは何をするものなんだ?」
「それは“耐性器”っていう魔道具だよ!熱に強い耐性があって、“水の契り”を圧縮するのに使うんだよ!」
......そういえば、“水属性強化魔法のコア”の作り方、よく聞いてなかったな。
「“水属性強化魔法のコア”ってどうやって作るんだ?」
「えへへ、それは作ってからのお楽しみだよ!」
変にもったいぶってくるなぁ。
「で、この次はどうするんだ?」
「“耐性器”に“水の契り”を全部入れてから“耐性器”に魔力を流して!」
「ふむ。」
魔力を流すって......これでいいのか?......無色透明だった容器が少し赤っぽくなったから多分これでいいんだろう。
「これでいいか?」
「うんうん!じゃあ、それを炉の小窓に入れて!」
「小窓?」
「あ、上の方にある穴だよ!」
よく見ると、炉には下にある、剣なんかをうつ場所の他に、上の方に小さな穴がある。中を覗くとオーブンのように網目のある板が置いてあった。ここにこれを置けばいいんだな。
「よし、置いたぞ。」
「じゃあ火をつけて!」
「“ファイヤーボール”でいいか?」
「うん!」
俺は“ファイヤーボール”で炉に火をつける。“ファイヤーボール”というのは火属性の最弱魔法だが、このように日常で役に立つ。
「このまま30分ぐらい待っていればいいよ!じゃあ次に“粉砕機”の準備だね!一番左の大きな道具を取って!」
シャーノが指差す先には80cmほどの大きな道具が置いてあった。......待ってみたが不思議と重くない。
「持ってきたぞ。」
「その上の方にある丸い場所に魔力を流して!」
“粉砕機”の上方は穴が空いており、蓋も付いている。そしてその蓋がついてある横に丸く窪んだ場所があった。
「ここか?」
「うんうん!」
魔力を流してみると、全体的に黒っぽかった“粉砕機”は窪んだ部分だけ黄色っぽくなっていた。
「それでいいよ!最後に、メルトの魔力だけで出来た魔石を作って!」
俺の魔力だけでできた魔石か。魔石作りはほぼ毎日延々とやらされたからかなり板についている。......ほぼ何も考えずに作り出せるほどだ。
「ほらよ。」
「うん!これで準備は完了だね!あとは“水の契り”が圧縮し終わるのを待つだけだよ!」
「ふむ。」
それからしばらくすると、シャーノが炉から“耐性器”を出せと言ってきたので、取り出した。絶対熱いと思っていたが、“耐性器”は元の温度とほとんど変わっていない。これも魔法なのだろう。
“耐性器”から取り出した“水の契り”は手のひらサイズから小指以下の大きさまで縮んでおり、見た目もゴツゴツしている感じになった。シャーノの指示でそれを“粉砕機”に入れると、“粉砕機”が動き出し、下の方の引き出しのようなものを引くと、そこには粉になった“水の契り”があった。
「じゃあ仕上げに“錬成魔法”で“水属性強化魔法のコア”を作るよ!」
「ちょっと待て。錬成なんて魔法知らないぞ?」
「あー、錬成は木属性の中級魔法だからすぐに使えると思うよ!」
そう簡単に言うなよ。
「イメージとしては、対象の周りを魔力で覆う感じかなー?覆えたらあとは好きな形に変えられるから“水の契り”の粉と魔石を出来るだけ硬く固める感じで!」
そう言われたって......いや、案外簡単だ。魔石の周りを魔力で覆うのもできたし、形も変えられそう......固めるイメージ......あ、出来た。
「......メルトって本当に魔法の上達速いよね。」
シャーノも呆れる始末だ。目の前には5cmくらいの青い宝石がある。......おそらく成功したんだろう。
「これで成功だよな?」
「うん!間違いなく成功してるよ!」
とりあえず、完成を喜んでもいいだろう。




