玖話.悪役
「怒らせたか。いやでも、僕は別に相手をしたい訳じゃないから逃げてくれると助かるんだけど......いやブレス吐かないでって!」
あーもーめんどくさい。僕はこういう処理をするために下に降りたんじゃないのに!
......重力操作!
「光龍にも重力操作は効くんだな。」
と言ってもブレスは吐き続けられている。
「くそっ、重力25倍だぞ!?なんでちょっと動きが鈍るだけなんだよ!」
僕の重力を10分の1まで下げて、光龍の死角に逃げようとしたが、そうはさせないと言わんばかりにブレスが飛んでくる。
「くっ」
仕方ない、あんまりこの時期の主人公に見せたくはなかったが......テレポート!
「これで終わりだ。」
夢破壊!
光龍の硬い背中ウロコが剥がれたその一瞬に僕は銃を突きつけ、問答無用で打ち込む。
「グオオオオォォォオオ!!!」
「しぶといなぁ。」
駄目押しの1発を打ち込むと、光龍は高い重力に体が耐えきれなくなり、倒れ込んで、潰れてしまった。
「よっと。これでいいかな......って、倒して良かったのかな?こいつ。3週間後に主人公たちが倒す予定だったような......まぁ、いっか。この死骸と経験値を渡せば同じだろ。」
俺はその場を動かなかった。いや、動けなかった。
いきなり現れたその男は明らかに俺とは格が違っていた。ものの3分足らずで、あの危険極まりない龍を倒してしまった。驚いたのはシャーノも同じらしく、震えている。
戦闘を終えたかと思うと、その男は......こっちに向かってくる?え?なんで?俺なんかまずいことしたか?
「ねぇ、あいつの死骸、いらないからお前らにやるよ。好きに使ってくれ。」
「へ?」
「いやだから、お前らにやるって。」
「あの龍を?」
「それ以外に何あげるんだよ。」
「え?いいの?」
「あぁ。」
......俺は異世界に来た初日にヤバいドラゴンの死体をゲットしてしまったらしい。
「そういえば、魔石は作るのを忘れていた。すまないな。」
「いや、あれをくれるだけでも......ありがとうございます。良ければお名前を教えてください。」
「そんなに畏まらなくていいって!僕はフレン。また遠くない日に会えると思うからその時はよろしく、じゃあな!」
フレンはそのまま何処かへ消えてしまった。そういえば光龍と戦っている時も瞬間移動のようなことをしていたからな。そんな感じの何かが出来るんだろう。
「ねぇ、メルト。」
「ん?なんだ?」
今までだんまりを決め込んでいたシャーノが口を開く。
「あのフレンって男、私たちのこと、お前らって呼ばなかった?」
「ん?確かに呼んでたけど?俺たちは2人なんだから別に変でも......いやちょっと待て。俺以外にはシャーノは見えていないはず......え?まさかフレンって......」
「多分、私のことバッチリ見えてるよ!話してる途中で何回か目が合ったし間違いないよ!そもそもフレンが使っていた魔法は一体何なの?私あんな魔法知らないよ!?」
「いや俺に聞かれましても......」
でも、あの男、ちょっと引っかかるんだよなぁ。いい人っぽいのは確かなんだが。




