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序幕
導火線は勢いよく、うなりを上げた。
そちらこちらで火の手が上がる。
同時刻、多発テロ…
子供狩りの合図は、犬の遠吠え。
終わりかけた戦を煽るように、入り組んだ大地は騒ぎだした。
雪が春を遠ざける。
凍てついた大地に走る赤は、残酷なまでに狂いくる。
夜は長く、闇は歪み、白い雪の花が朱色に染まるそれは、痛々しく弾けた返り血の沈黙。
腰を抜かしたその子の目は、怒りを通り越した、恨みの光。
泣き顔を消した、無の表情。
刀は染まる紅の色。
雪は熱に溶かされ死骸を濡らす。
泣き叫ぶ声より、命乞いをするか細い音に、闇に紛れた漆黒の死者は、うなりを上げ、牙を爪を突き立てた。
無言で仕事をする、忠実な犬。
指揮官は別の場所。
陰の存在に今はまだ気づかない。
陰が消え、指揮官は口に犬笛を加える。
火は、赤間谷を飲み込んだ…。
壊れて行くその瞳。
その心に受けた傷。
戦場小さな命は今日も生きる。
逃げ込んだ先は、入り組んだ大地。
…今終わるはずの戦の中で、また戦は始まる。
「月影の乱」
終焉間近…すべてが動き出す。