1幕
冬の中盤、積もった雪は地を白い空間に染める。
雪の下には春を待つ死体の山と誰かが言ったのはつい最近のことだった。
そんな今昔森に逃げ込んだ行き場のない子供たちがいる。彼らが集団となり
「暁党」
を名乗ったのは丁度二年前の冬だった。
月影の乱のさだかの出来事である。
こうした、党は、日ノ国の至るところで発足し、根付いている。
そんな子供の集団を狙う青葉党と子供を保護しょうと立ち上がった白夜党この二つの全面戦争がささやかれるなか、冬という長い季節に阻まれ、冷戦を保っていると言うのが現在の状態である。
春はまだ来ない。
北陸なら尚更だ。
一触即発の空気を醸しだし、北と南に陣を構えた二つの党の睨み合いは既に日ノ国を騒がせていた。
南の青葉と北の白夜。
軍勢3万対2万5000…明らかに不利な白夜党の忍び達。
月影の乱が武士対忍者の戦いと言うのはここからきている。
もともと、青葉の将軍と白夜の頭が、郭の花魁を取り合ったのが、戦の原因というから、人間の虚しさがあるが、戦をしてはや五年…やっと本命同士のぶつかりあいに辿り着いた。
ところが、この厳しい冬である。
雪と寒さが物の流通を麻痺させ、どちらも、動ける状態ではない。
物の流通は、戦をするにあたり、勝ち負けに関わる、一大イベントである。
食料が底をつけば、いくら有利にことが進んでいても、立てこもり。
つまり、籠城の選択がなされる。
それを狙い、輸送部隊を襲うことは、多々あったが、先程も述べたとおり雪に行く手を阻まれた冬場に、コトを成そうとする輩は、ほとんどいない。
よって、戦は冷戦のまま、静かに春を待っていた。
だが…戦は冷戦と言って裏ではちゃっかり、春へ向けての準備が始まっている。
その一つが、今。
いや、今宵、決行されると速馬の御者は、白夜の城に駆け込んだ。
素朴な造りの門前の松明が揺れた。
城とは呼べない庵から、小柄な白髪の老人が障子を開けた。蝋燭の光が漏れる。
「鴉主か」
老人は、馬を止め、ひらり飛び降り片膝を付いた覆面男に語り掛けた。
覆面男は、夜の明ける薄い闇の中で頷いた。冷たく澄んだ風が蝋燭を揺らす。
「コトが動き始めました。あの男もやはり一枚噛んでいる模様です。九十九様のヨミ通りでした」
覆面の下から、ぼそぼそと口を動かす。誰に話すわけでもないと言ったように。
「あ奴らには、言ったか」
九十九老人は、聞き返す。落ち着いた響きだ。




