表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/17

17 確保

どうなる、どうなる。

 そして、朝を迎えた。

 大田刑事から連絡がきた。なると観光本部に到着したということだった。私は容疑者であろう岸村さん確保の打ち合わせについて大田刑事とやり取りした。それから、野村さんに会い、K県警の捜査員が港に待機していて、下船時に容疑者を確保することを伝えた。その際、他の乗客がパニックにならないように行われることを約束した。加えて、船長の興梠(こうろ)さんは別としても、他のクルーに話さないでほしいこと、特に容疑者か共犯者の可能性がある谷中さんと酒木さんにはそのことを秘密にしてほしいことも伝え、野村さんは了承した。

 8時、朝食の時間になった。私と夏子は余裕を持って四階の食堂大ホールで席についた。山田さんはヒョウ柄の服装で、滝田さんは高級スーツで席につき、朝食が運ばれてくるのを楽しそうに待っていた。岸村さんは、やり手のブティックオーナーのようなおしゃれな装いで窓から外を眺めていた。谷中さんは、昨日の出来事がなかったかのように笑顔で給仕をしていた。西さんの席だけでなく、もちろん係長の席も、空席だった。しかし、船内放送はなく、淡々とかつ黙々とクルーたちは動いていた。

 朝食は、塩パンと特製オレンジジャム、自家焙煎コーヒー、みかんヨーグルトと抹茶プリン、オプションで狸うどんを選ぶことができた。私は打ち合わせ通りにいくのか、気が気でなかったため、楽しんで食事をすることができなかった。反面、夏子はにこやかに朝食を楽しんでいた。

 9時過ぎ、私と夏子は荷物をまとめてから、一階のオープンデッキで景色を見ていた。徐々に陸が近づいてくる感じがして、いよいよこのクルーズも終わりなのかと思った。せっかくの旅行なのに、楽しむことよりも仕事をすることになってしまったこと、それと、容疑者を確保しなければならないという使命感が入り混じって、係長が不在の中、私は若干憂鬱になっていた。

 船が港に着岸した。そして下船のためのタラップが設置された。オープンデッキからその様子をとても良く見ることができた。私はこの、下船する乗客をはっきりと確認できる場所で、大田刑事と通話状態のまま対象の人物がタラップを下りるのを待っていた。

 一人、二人、乗客が下船した。三人目、岸村さんがタラップを降り始めた、大きなつばのある紫の帽子をかぶって。

「大田さん、容疑者が出てきました。大きなつばのある紫の帽子をかぶってます。黒のワイドパンツに黒のジャケットです」

 大田刑事に連絡すると、向こうの方からやって来る捜査員と思われるコート姿の男性が五人、岸村さんに接触した。数十秒してから、岸村さんは連行されていった。捜査員の中の一人がこちらに手を振った。私は急いでタラップへと走った。

「どうも、香崎刑事ですね。K県警の大田です」

「はじめまして、T県警の香崎です」

 大田刑事だった。40歳前後の、真面目そうで、いかにも刑事という感じの人だった。係長とは正反対の感じだった。

「大田さん、容疑者か共犯者の可能性がある人物がまだ船内にいます」

「あ、もう大丈夫ですよ。井上豪が自白しました」

「えっ!?」

「岸村に脅迫されて、手伝わされたって。一応、対象の人物には聞き取りしますが、逃亡の可能性は少ないでしょうし、おそらく大丈夫です」

「そうですか。よかったぁ……ふぅ……」

 私は一気に肩の荷が下りた。溜まっていた疲れが一気に押し寄せてきて、目の前が真っ白になった。私は、なんとか気力を失わないように、自分の頬を叩いて活を入れた。そしてすぐに野村さんに、犯人が捕まったことを伝えた。軍人のような野村さんも、この時ばかりは、顔がほころんで見えた。

 私は犯人が確保されたことで油断していたが、とんでもないことをふと思い出した。係長のことだ。

「大田さん、うちの上司の村田を助けないと」

「そうでしたね。もう準備はできてますよ」

 私たちは地下一階の落とし穴のある倉庫部屋へと急いだ。下船した乗客たちと入れ替わりに、鑑識や捜査員たちがすでに到着しており、向かいの物置部屋では現場検証が行われていた。1時間以上時間を要しただろうか、野村さんや興梠さんも見守る中、無事に係長が船底から引き上げられた。ストレッチャーに寝かされた係長は衰弱しているようで、顔色が青白さを通り越して青かった。


無事に犯人を逮捕ですか。

係長はどうなん?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ