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春色矯正

 少年は唇を尖らせた。すると、掠れた口笛が細く鳴る。  

 ――ホーホケキョ。

 それは、先刻まで庭の梅にとまっていた鶯の抑揚をしていた。

 自室より、窓越しに彼は外を眺める。移ろう季節の中、梅から桜や蒲公英へ――咲く花も春色を示す。

 再び掠れた口笛が鳴った。微かに窓が白く曇り、季節外れの雪を窓外の景色に宿した。ただ、それは一瞬にして溶け切り、残る水滴も服の裾に拭われる。

 すると、今度は桜の木から甲高いさえずりが青空へ響いた。シジュウカラだった。

 少年はまた唇を尖らせた。しかし、吹いた息に音色は乗らず窓を曇らせるのみ。黄色に咲くたんぽぽが、急いて綿毛を付けたようだった。ただ、それもやはり直ぐに飛んでいき、また春の景色が広がった。

 その後も、鳥の鳴くたびに窓枠から望む景色には、晴天に雲が浮かび、澄んだ空気に霞が満ちた。ただ、どれも刹那の風景――。春色に戻される。

 少年は大きく溜息を吐いた。これまでよりも大きく、濃く、窓は曇った。それを背に、彼は制服のブレザーに袖を通した。

 バタンと力強く玄関の戸が閉まる頃には、既に窓を覆う白は消え、そこは鮮やかな桃色や黄色で溢れていた。

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