バカ
折り曲げた解答用紙の隅をもう一度広げてため息が漏れた。
——三十五点。
妙に騒がしい教室の中、何度見ようと変わらない数字がそこにある。
やはり私は馬鹿らしい。
「今回全然駄目だった―」
そう嘆く隣の席の彼は七十点。ちなみに平均は五十二点だから——果たしてどこが駄目なのか。
「よう、何点だった?」
背中の声に振り返れば、にやにやと厭に口角を吊り上げる顔があった。
「先にそちらが言うのが筋というものでしょう」
そう返すと、今にも握りつぶしたい笑顔の横へそこら中に丸の付いた解答用紙が持ち上がった。隅には九十五の数字。
「五点も間違えるなんてまだまだ甘いんじゃない?」
「だなっ」
秀才様は短髪を揺らし笑った。袖を捲るワイシャツの白が眩しい。
「で、そっちは何——」
言い切る前に解答用紙を突き出してやった。こちらの勢いに驚いた様子で、微かに彼の肩が跳ねただけでも満足だ。
「いい点だね」
「ええ。きっとあなたには一生とれないでしょうよ」
軽く睨みつけてやると、そこにあった瞳は思ったよりも真っすぐこちらへ向いていた。
「なに怒ってんのさ。実際、前よりはいい点だったろう?」
胸の奥がざわついた。“うるさい”が喉の奥に引っかかって出てこない。
「そうね」
ただそう言って前を向く。精一杯に絞り出した悪意がそれだった。
やはり私は馬鹿らしい。




