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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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 ヒデヤスが部屋を借りるとマサモリとシラギク以外は町で情報収集を開始した。マサモリとシラギクは大人しく部屋で待機だ。シラギクは町中で栗鼠を放したので今は栗鼠と視覚を共有している。


 マサモリはさっき飛ばした木の葉を不自然な動きにならないように町の上空へ移動させた。そして上空から町を俯瞰した。上空も空気が汚れていて煙にまかれると視界が極端に悪くなる。


 しかし木の葉は五枚もあるので見やすい木の葉を変えながら町を観察した。部屋に置いてあった毛布は異臭がして使ったら病気になりそうだったので部屋の隅へ移動させた。


 木の葉を通して町を見ながらマサモリは魔力を回復させようとした。しかし魔素は薄いし、空気も悪い。意識すると逆に気分が悪くなってきた。マサモリは一旦、町を観察する事に注意を切り替えた。


 石畳の町はゴミが散乱しているが中心部へ向かうと空気も街並みも綺麗になっている。町は四角形で隅に行くほど、暗く、汚く、臭い。町の隅はスラムになっているようで上空から見ただけでは把握しきれない。


 ただ、家々が迷路の如く建ち並ぶ姿は見ていて面白い。理の無い増築が繰り返されているようでマサモリが思いもよらないような構造をしている。


 あの中を探検したら絶対に面白いだろうなとマサモリは思ったが確実に他人から絡まれるだろうとも理解している。横ではシラギクが何やら四苦八苦している。


 町を観察した所、まず女子供がほとんど見当たらない。男ばかりが目立っている。この様子だと女子供は屋内からあまり出ないのだろう。スラムでは大人が今にも死にそうなやせ細った子供を殴っているし、大人同士の喧嘩が次第にエスカレートして殺し合いに発展している。


 枯れ木のような老人が物乞いをしている。しかし通行人はそんな彼を蹴っていく。一言でいうと治安が悪すぎる。そして目が特徴的だ。ほとんどの者が獣の目をしている。まるで空腹状態のゴブリンだ。


 人の魔力を見るとその人の本質が分かる。しかしちょっとした行動を見ただけでもこの町の人は魂まで汚れているように感じた。町の中は朝の心地よい太陽の光とは真逆に澱んだ空気に満ちている。


 もう少し濃縮したら樹海の負の魔素になるのではないかとマサモリは思った。空気の汚れ的には既に樹海を上回っている。少し見かける女性も常に辺りを警戒しながらいるか、男性と一緒にいる。


 星外生物が来たからなのか、それとも普段からこうなのかは分からないがマサモリは住み辛いだろうなと思った。マサモリは空気の悪さを防ぐ為にマスクを作ろうと思った。


 超大陸に来る時に支給されたのは服と武器だけだったので綺麗な布などはもちろんない。マスクの材料になる布は盗賊から奪った服だけだ。異臭がする布を洗って使いたいかと言われるとマサモリには無理だった。


 まず街中のほぼ全てが汚い。道が汚い、建物が汚い、人が汚い、食べ物も衛生管理が雑で製造過程が怖くて見れない。火を通さないと普通の人はお腹を壊しそうだ。マサモリは自分が悪食だと自覚している。


 それでも毒よりも汚い方が生理的に嫌だ。綺麗な水で体を洗って、部屋を掃除して、空気を清浄にしたい。マサモリは自分の周りを見れば見る程、体が痒くなってきた。


 掻きむしりたくなるのを我慢して空気だけは換気しようとする。小さい窓から部屋の中の空気を気取られない程度にゆっくりと出す。そして上空に舞っている木の葉を基点にして綺麗な空気を少しずつ部屋に招き入れるのだ。


 空気が入れ替わってくるとマサモリはやっと深く呼吸が出来た。樹海の有毒ガス地帯を抜けた時の様な安心感がマサモリを包み込んだ。町の様子を観察していると色々な意味で気分が悪くなってくる。


 マサモリは人や建物の観察を止めて市場の方へ視線を集中する事にした。エルフの森にある野菜と同じような野菜があるが少しずつ違う。色、形、大きさ等が違うので眺めていても飽きない。


 エルフの森との大きな違いは果物を食べた男が種を道端に口から吹き捨てた事だ。樹海では樹木の実には種が入っていない。しかし超大陸には種がしっかり入っているようだ。


 マサモリは捨てられた種が欲しくなった。木は嵩張るから持ち帰れないだろうが種なら大丈夫だろう。ただ、本腰を入れて面倒を見ないと結界で囲ってもすぐ枯れてしまうだろう。


 いや、木が大きくなっても結界内でなければ育てられない。エルフの森の地面に植えたらすぐ枯れる。自分で面倒見られるかどうかマサモリは不安になってきた。


 ただ、物珍しいので色々な種を買っていくのは決定だ。出島村の片隅で育ててみたら面白そうだ。超大陸の種は以前からエルフの森に持ち込まれていた。


 ただそのままだと種が弱すぎて樹海では枯れてしまう。趣味人がエルフの森の植物と交配させながら栽培している。売れるまでは行かないだろうが物珍しい物があるとつい手に取ってしまう感覚だ。マサモリはどの種を買おうかと品定めした。



 シラギクは早い段階で町を眺めるのに飽きて寝てしまった。マサモリは出来るだけ多くの情報を集めようと町を観察し続けた。昼時になると大人達が部屋に集まって来た。


 昼は黒パン、ソーセージ、ニンジン、カブになった。黒パンを食べて、ソーセージを噛み、野菜を合わせる。野菜は念入りに念入りに洗った。黒パンは少し砂が入っていたが硬い食べ物に慣れていたので全く気にならなかった。


 超大陸の砂や石は柔らかいので苦にならない。ソーセージは塩っ気が効きすぎていて黒パンと野菜がすすんだ。しかし食材に魔力がほとんどないので魔力の回復促進にはならなかった。


 超大陸では普通に育てた野菜は早く出来過ぎて魔力がほとんどないようだ。残念でならない。食材の劣化が早いので保存食は過剰とも言える量の塩が使われている。


 塩漬けの肉や魚が焼かれている屋台があったが火を通すと食材から塩が噴き出してた。あの感じからすると塩に漬けた魚ではなくて魚味の塩になっているかもしれない。


 保存を考えると味が二の次になってしまうのは仕方がないが残念でならない。塩っ辛い食事を取ると当然喉が渇く。マサモリ達は水魔法で何度も水を出しながら食事を取った。


『どうやら星外生物は町を滅ぼしながら移動しているそうだ。食事が終わり次第、東へ向かう』

『了解』


 超大陸に入ってからはほとんど口で会話をしていない。盗み聞ぎされない為だ。面白いもので、突然全く知らない別集団に紛れ込んだ時に空気とか雰囲気で異物だと気取られる場合がある。


 マサモリは超大陸の人を見て、普段はもっとすさんだ空気を出さなければならないと理解した。逆にエルフの森に超大陸人が紛れ込んでも魔力を見るまでもなく雰囲気で分かりそうだ。


 それ位の差が超大陸人とエルフの森のエルフにはあった。だから他愛ない会話から違和感を悟られる可能性もあるので常に念話が推奨されている。


 食事が終わると一行は宿を出てそのまま町を後にした。一か所に長居しないのもその為だ。街道を東に進み、周りに人が居なくなると街道を外れて森に分け入った。


 常に周りに人が居ないか注意しながらもそこからは強化魔法を使って素早く移動する。街道から外れると良く盗賊を見つける。場合によっては倒すし、迂回する時もある。殺し過ぎると周りが警戒してしまうので調整しているらしい。


 ヒデヤス的には皆殺しにしたいそうだ。マサモリ的にも盗賊なら皆殺しは問題ないと思った。そう念話で話すとヒデヤスは嬉しそうに何度も頷いた。



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