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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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 装備が整うと今までと効率が断然違ってくる。ハナエは主に攻撃魔法を担当しているが魔力効率が上がって攻撃魔法を使う頻度と精度が上がった。そのおかげで魚のような小型の生物以外にも戦闘に使えるようになった。


 結界魔法が使えれば魚を捕まえる事はもちろん戦いにも使える。武器が無ければ結界で武器を作れば強敵以外になら通じるだろう。便利すぎたので封印されたのも分かる。


 不便になったからこそありがた味を感じる。きっと結界魔法が使えたらなんでも結界魔法で代用してしまって魔力を節約する事に重点が行かなかっただろう。


 結界魔法が得意なマサモリとしては少し寂しい。しかし結界縛りもやってみれば面白い。戦い方の幅が広がっていく思いだ。



 ハナエが攻撃魔法を多用できるようになると魚の捕獲数が増えた。すると魔力の回復も早まった。マサモリは富士の樹海を抜ける時期が近い事を自覚した。ハナエに教えたら調子にのってしまうので後でシラギクだけに教える事にした。


 終わりともなると寂しくなってくるものでマサモリは焦らずに全員分の魔法触媒を手に入れようと思った。この課題が終われば次の課題があるだろうが収集の面白さに目覚めつつあった。それにせっかくなので三人分の触媒を集めたい。一つだけは納まりが悪いのだ。


 武器や防具を自分で作ってみるとその大変さが良く分かった。自分が苦労して編んだ鯉の鱗帷子は不格好だが大切な品だ。やはり新しい事をするのは面白いし、何かを作るのも楽しい。


 マサモリは自分がなんでも楽しめる人間だと思っている。最初は嫌々やり始めても慣れてきたら面白さを発見できるタイプだ。ハナエもマサモリのように何かしらの面白さを見つけてほしいと思った。



 マサモリ達は三人分の魔法触媒となる鬼の角を集めきった。核持ちのゴブリンが居なかったのは残念だ。これで強化魔法の効率が全員上がる。それは課題の半分以上が終わった事を意味していた。


「明日からは富士山まで行って、山頂にある富士霊樹を目指そうと思う」

「そうだね!」

「わらわは早くお家へ帰りたいわ!」


「この課題が終わっても新しい課題があるよ。ハナエも安心して!」

「そんにゃー。わらわが何をしたというのよー」


「色々やらかしたんだろうね」

「だろうね。俺達との課題が終わってもハナエだけはまた課題を出されそう。頑張ってね」

「うっそでしょ……」


 心当たりがあるのかハナエは考え込んでしまった。


「そうだわ。弟を私に変身させて課題をやらせよう……」


 ハナエが呟いたのを二人は聞き逃さなかった。後でチクるのを忘れてはならない。


「それじゃ、おやすみー」

「おやすみ!」




 三人は富士の樹海に入ると一直線に富士山へと向かった。道中で見つけられた魚は積極的に捕まえるが魔物等は一切無視していく。


 途中に魔イタドリの群生地があった。足を止めずに新芽を取って口の中に入れる。酸味が強くてマサモリは顔をしかめた。魚は頻繁に獲れるが野菜分が圧倒的に足りないのでありがたい。しかしマサモリ以外は食べ過ぎると体に良くないので軽くつまむ程度にしておいた。


 富士の樹海は他のエルフに取っては通過点なので自然が手つかずで残っている。マサモリはありがたいと思いながら新鮮な植物を口に頬張った。


魔法触媒で強化魔法の効率が上がっている事もあって三人は特に問題なく富士山の麓に到着した。



 富士山の麓に辿り着くと他のエルフ達を見かけるようになった。富士山に入山する他のエルフにとってはここからがスタート地点になる。いや、富士霊樹目当てのエルフにとってはスタート地点ですらない。各々が富士山に入る前に一息を入れている。


 マサモリ達はそのまま富士山に足を踏み入れた。それと同時に体に掛かってくる重力が増した。強化魔法をしているので耐えられるがそれが無かったら骨が折れても不思議ではない。今までとは数倍の重力がマサモリ達に圧し掛かった。


 周りのエルフ達はそれが当然といった風情で悠々と山を登っていく。魔法触媒で効率的になったとはいえ、マサモリ達の強化魔法は魔力の節約の為に最低限の生活状態だった。


 今のままの強化魔法強度では動くのも大変だ。事前に富士山は重力が増すという情報を得ていたが大したことはないと言われたので深くは考えなかった。しかし魔力が無い状況では大きな壁となって立ちはだかってきた。



「うーん、どうしよう。強化魔法にかける魔力を増やさないと。そうするとアクシデントが起きた時に魔力が足りなくなって動けなくなるなあ」

「低い所で慣らしていこう」


「そうだね。焦りは禁物だ」

「はやく課題を終わらせたいわ。わらわ早く帰りたい!」


 マサモリとシラギクは慎重な姿勢だ。それに二人は樹海散策を楽しんでいるので別に急いでいない。だから全ての行動に余裕が生まれている。


 逆にハナエは早く終わらせて村に帰りたくてしょうがない。どうにかして早く課題を終わらせるかだけを考えている。



「くくく……、わらわは閃いたぞ! 富士山攻略法を!」

「ハナエが役に立つなんて!」

「すごい!」


「愚民共、わらわの策を聞けぇい! 富士山の樹は大きいが疎らなり! 飛行魔法を妨げる樹が少ないからひとっ飛びぞ!」

「えっ、すごく全うな案だ」

「なるほどねー」


「これでわらわは解放される!」

「重力の増加を考えなければ良い案じゃないの?」

「ふん! 小童は震えて見ておれ! わらわ大勝利!!」



 ハナエはそう言うと解き放たれた鳥のように空へ舞った。マサモリとシラギクは顔を見合わせてハナエを追う。


『ハナエ! 魔力が尽きたら不味いから落ち着くんだ』

『ハナエちゃん、止まってー』


 マサモリとシラギクは強化魔法をかけて樹々を足場にしてハナエを追っている。ハナエは飛行魔法を使っているのですぐに距離が離れてしまった。マサモリは懐にある石を投げようかと思ったが流石に思い留まった。


『どうしよう。ハナエちゃんに追いつけないよ。もっと強化する?』

『するしかないかあ。出来るだけ魔力は節約したかったんだけど』


 マサモリ達は強化魔法を強めてハナエを追うがそれでも差は開く一方だ。だが何かあった時の為に魔力は無駄に出来ない。


 戦えるだけの魔力を残しながら今使える最大限の魔力を使ってハナエを追跡した。かなりの距離を移動したはずだが山頂は一向に見えてこない。延々と同じような風景が続いている。




 先行しているハナエであったが中々山頂が見えなくて苛々していた。魔力も減ってきているし重力も増している。そのまま踵を返して帰る事が出来るギリギリのラインが迫っている。


 そうなってくると次第に不安の芽が出てくる。それは徐々に成長してハナエは飛行魔法を止めようかと思い始めた。その時、ハナエは殺気を感じた。


 しかし思案中のうえ、魔力も少なかった。反射的に結界魔法を使おうとしたが今は使えないと思い、止めた。別の防御方法として強化魔法を強めようとしたが間に合わなかった。


 左脇腹に衝撃が加わるとハナエは錐もみしながら墜落した。地面を転がった後に一瞬だけ思考に空白が出来る。しかし激しい痛みと共に意識が戻ってくると慌てて結界魔法を使った。


 するとすぐに結界魔法に攻撃が加えられた。焦って発動した結界の強度は高く、攻撃を寄せ付けなかった。しかしその分、魔力の消耗が激しかった。


 ハナエは混乱した頭で回復魔法か、結界の維持かで悩んだが気弱になっていたのもあって結界の維持を選択してしまった。


 回復魔法をかければ敵と戦うか、はたまた逃げるかの選択を選べた。しかし結界の維持を選んでしまったのでその場から動けなくなってしまった。強化魔法を切って結界の維持に全魔力を注ぎ込む。


『だれがだじゅげてー!』


 ハナエの結界を三匹の鬼が叩き続けている。赤鬼が二匹に黄鬼が一匹だ。三匹は怯えるハナエの様子を楽しそうに観察しながら結界を棍棒で叩いた。


『シラギク! マサモリ! ばやぎゅー』


 ハナエの念話が聞こえてきたが二人は焦っていた。すぐハナエが居る場所に辿り着けるのだが魔力を使いすぎる。敵を倒す魔力を温存しなければならない


『敵の数は? いつまで持ちそう?』

『鬼が三匹。結界は後少ししかもたないよー』


 結界を使っていると聞いてマサモリは一安心した。結界を使っている間は大丈夫だからだ。マサモリは着物のたもとから帯の様な和紙を取り出した。


『シラギク、これを武器に』

『ありがとう!』



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