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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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「索敵魔法は便利だけど魔力を使いすぎる。式神を使って探索するも良いけど、今後の事を考えると各々が強化魔法の感覚強化で探索した方が鍛錬になると思う」


「わらわは反対だわ! 魔物を見逃してわらわが怪我をしたらどうするつもりなの!」

「回復魔法をすればいいでしょ」


「効率だけを考えたら索敵魔法だけど……。せっかくの修行だし索敵魔法はなしでいこう!」

「賛成」


「反対ぞ!」

「賛成多数により決定~」

「嫌じゃー!」




 三人は関所の近くで魔力を回復させると昨日のように富士の樹海へと入った。


「今日は魔力の回復速度を上げる為に樹海に潜む小魚や貝を積極的に狙っていく!」


 エルフの森の中では特別な場所を除いて魚や貝は危険なので取り尽くされた。しかし富士の樹海では本当の樹海には及ばないが魚介類が生息している。


 魔力の補充の為にそれらを狙う。それが今日の目的だ。マサモリとシラギクは地に潜む貝や木の葉の間に隠れている小魚を探して感覚を集中させた。


 ハナエだけは他人事のように歩いている。木の葉に隠れている魚類は比較的見つけやすいが地に潜む生物を感覚のみで探し当てるのは困難だ。


 出島村に向かう途中ではボタン達忍者エルフがそれらをマーカーで知らせてくれた。それを自分達でやるとなると如何に索敵が難しいのか実感できた。マサモリとシラギクが抜き足差し足で過剰な警戒態勢になってしまっているのも仕方がない事だ。


『むむっ、大物が居たぞー』


 シラギクが嬉しそうに念話をした。


『お、あれは……。魔鯉かな?』


 マサモリはシラギクが指をさした方向に目を細めた。マサモリの身長位はある鯉が木の葉の茂みに身を潜めている。



 富士の樹海ではほとんど魚介類は獲られていない。魚を取るなら本物の樹海に行くし、富士の樹海にはそれ以上の価値のある生物、魔物が多数存在している。それになにより木を傷付けてはいけないので木の葉の茂みに隠れられると手出しがしにくいのだ。


『確実に行くなら攻撃魔法で周囲の木の葉や枝ごと攻撃すれば獲れる。しかし魔力の消費が激しいし、樹を傷付ける』

『普通に獲るなら樹を揺らして逃げた所に魔法を打ちこむかぁ。私魔法苦手なんだよねえ』

『これがわらわぁの力だ!』


 ハナエは二人の会話を無視して鯉が隠れている樹の枝葉に電撃を放った。鯉が少し焦げた状態で下に落ちてくる。しかしすぐ回復して慌てて動き出した。


 そこに収束した氷の吹雪が当たると鯉は足掻きながら氷に包まれていった。完全に凍った鯉が落ちてきたのをシラギクは下で受け止めた。


『ナイス! だけど一応作戦会議しているんだから聞こうよ。それに火が付かないように葉っぱには水をかけておこう』

『ふん! わらわにかかればこの程度は容易い事よ』


『まあ、何もやってなかったし暇だったんよね、ハナエ』

『これでわらわの力が分かったかな。慄け餓鬼共めぇ』

『とりあえずさっさと解呪して食べよう』



 ハナエが勝ち誇っているのを無視して二人は鯉の処理を始めた。まずは鯉の腹を裂いて内臓を丁寧に取り出す。内臓を傷付けてしまうと匂いが染みついたり負の魔素が身に付着してしまう。


 取り出した内臓は素早く地面に穴を掘って埋める。そして風魔法で匂いを散らした。鯉の尾の方から頭の方へ強化した手で鱗を剥がしていく。この鱗が中々硬いので手を怪我しないように注意する。そしてぬめりもしっかりと水魔法で流す。


 最後に皮を剥がす。三枚に下ろしたい所だがハシや皿が無いので骨を残しておいた方が食べやすそうだ。マサモリは手に炎を出してそのまま鯉を掴んだ。そして鯉全体が火に包まれるように調整した。


手の位置を変えて鯉の焼き加減を見ながら塩をパラパラと振りかけていく。塩は現地調達ではないがこれくらいは良いだろう。


『出来た!』

『えっ、これをそのまま食べるの? わらわが? 高貴なわらわが?? はぁ???』


 出来上がった鯉の姿焼きを見ながらハナエが不満を漏らした。


『本当だったら臭み消しになるのを入れたかったね。次からは見つけたら取っておこう。頂きます』

『いっただっきますー』


 鯉の姿焼きにそのまま手を伸ばして身を掴み取る。少し泥臭いが我慢できる範囲内だ。マサモリは動きが止まっているハナエを横目に素早く食べ続けた。


『ほらっ、ハナエも食べて魔力を回復しないといつまで経っても先に進まないよ』

『なんでわらわがこんな事に……。ぐっ、泥臭い。しっかりとした料理人が作った鯉こくが食べたい……』


『この程度、楽勝楽勝。よーしよし、魔力の回復が早まって来たぞ。毎回これくらい補充出来たら楽なんだけどねえ』

『鯉の鱗の大きいのを集めて鱗帷子にしようか。鉄より少し硬い程度だけど薄くて軽いし魔力の通りがいいんだ』


『おー、いいねえ。けど俺は不器用なんだよなあ』

『私が作ってあげるよ』


『やった! 俺も小さい鱗を集めて練習はするよ』

『え、鯉の鱗なんて付けるの嫌じゃ! 臭そう!』


『ハナエはゴブリンの皮鎧にしよう。一人だけ体が大きいから鱗を集めるのが大変だ。ハナエ鬼、ハナエゴブリンの誕生だ』

『蛮族にされる! もう嫌じゃー! お家へ帰りたいよー』



 シラギクとマサモリは鯉の鱗を集め終わると次の鯉を求めて歩き出した。置いて行かれそうになったハナエは半泣きで付いていくのだった。



『魔狼に追跡されてる』

『えっ、本当? あー、そうかもしれない』

『嫌ぁ! 早く追い払って』


 シラギクがそう警告するとハナエは大袈裟に反応してしまった。そして後ろを振り返って氷魔法を放った。


『当たってないね』

『ハナエ、もう少し引き付けてからじゃないと当たらないよ』

『きぃー!』


 ハナエは何度も氷魔法を放つがどれも回避されてしまう。雷魔法は早くて当たれば相手を痺れさせられるが低級だと障害物があるとそっちに引き寄せられてしまう。


 特に鉄には弱い。樹海では樹に吸い寄せられてしまうので障害物が無い距離まで近付かなければ十分な効果は発揮できない。


 頭に血が昇ったハナエに左右から魔狼が飛び掛かった。マサモリとシラギクが慌てる様子もなく魔狼を叩き返した。小さい悲鳴をあげて魔狼は引き下がる。


 今の強化魔法では一撃では仕留められなかった。シラギクが攻撃した方の魔狼は骨が折れたようで目に怒りを滲ませているが後ろに下がった。せめてしっかりとした木の棒があれば倒せたのにとマサモリは悔しがった。魔狼が逃げに徹したら今のマサモリ達では追いつけない。


『魔狼が捕まえられれば皮鎧が出来る!』

『でも、もうハナエの魔力がないねー』

『当たりなさいよー! クソ狼』


 魔狼はしばらく距離を置いてマサモリ達を観察していたが不利と悟ったのか離れて行った。マサモリ達が消耗していれば仲間を呼んで疲労するまで圧力をかけてきたかもしれない。


 ハナエの様に魔力の無駄打ちをしていたら気が付いた時には生活状態の強化魔法を維持できなくなるだろう。だがハナエが戦い慣れしていないのが早い段階で分かったのは収穫だろう。


 野生なだけあってか魔狼の方がハナエより賢いなとマサモリは思った。




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