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「「おはよう!」」
「これが二人に与えられる課題だ。達成したら次の課題を言い渡す。現地に強力な助っ人を呼んでおいたから合流するように。二人とも頑張ってこい!」
「「はい!」」
二人はワクワクしながら手渡された課題に目を通した。
一つ、装備や食料の持ち込みを禁じる。非常用の紙は可。使用したらその日の稼ぎは没収とする。
二つ、結界魔法の禁止。
三つ、支給される金銭で食事や装備を買う事。買った物資は以降持ち込み可。
四つ、採取した物品の売却益の百分の一が翌日の支給金に足される。一日目の売却益の百分の一を二日目に受け取れる。三日目の支給金は二日目の売却益で決まる。
五つ、日が落ちる前に帰ってくる事。破られた場合は次の日の支給金は無し。
六つ、富士山の樹海に入る時に支払う入山魔料は魔力の残りが全体魔力の一分になるまで支払う事。
富士山の山頂に生える富士霊樹の根元まで辿り付いて日がある内に帰って来れれば第一段階を終了とする。
「魔力の制限がきつすぎない?!」
「慣れれば大丈夫だ。これは今回のジェルセとの契約で我々の魔力が大幅に減ったのを補う為の訓練だ。今までは豊富な魔力で魔法を打ち放題だったが、今の魔力ではそれは難しい。戦い方を魔力の量に合わせて白兵戦主体にしなければならない。お前達なら出来ると思っているぞ」
「おう!」
マサモリとシラギクは富士の樹海の入り口に到着した。始めて来たが屋台が所狭しと並んでいてすごい活気だ。傭兵達が談笑しながら歩いている。
二人は鳴るお腹を我慢してまずは樹海の入り口にある関所に並んだ。関所のすぐ脇に吊るされてぐったりとしている者が居る。何かしら違反をしたのだろう。マサモリはああはなるまいと思った。
物資不足を補う為に富士山への入山者は増えていたので関所への入り口は長蛇の列が出来ていた。マサモリとシラギクは大人しく列の最後尾に並んだ。
「お二人ですね。こちらへ来てください」
二人が列に並んで周りをキョロキョロと見回していると女エルフに話しかけられた。
「えっ、俺達?」
「はい、こちらへどうぞ」
女エルフに案内されて関所の入り口まで通された。マサモリは他の並んでいるエルフ達に申し訳なくなって軽く会釈をした。
「では、説明に入ります。お二人にはこの要石に魔力を注いでもらいます。この要石を経由して魔力は富士山全体に供給されます。お二人の入山魔料は他の人の数倍以上となるので次からはすぐにこちらに来てください。お二人とも持ち込み品はありませんね?」
「はい」
女エルフは強化魔法を目に集中してマサモリ達をじっくりと観察した。特に隠している物もないので大丈夫なはずだ。
「持ち込み品はなさそうですね。それではお二人の助っ人と合流して要石に魔力を注いでください」
「助っ人の人はいつ来るの?」
「そこにいます」
マサモリは女エルフの指す方向を見た。誰も居ない。マサモリは目を強化して隠れている何かを見つけ出そうとした。
「そこです」
女エルフはマサモリ達の視線の上の方を指した。そこには吊るされたエルフが居る。
「あれ?」
「それです」
マサモリはそれと言われたエルフを観察する。よく見るとどこかで見た顔だ。長い緑髪で顔が隠れてて誰だか分らない。身長はかなり高い。魔力を観察するとマサモリよりかなり年上なのがわかる。そして少し腐ったような雰囲気のする魔力だ。
「ふぁーあ。良く寝た。ばあや、なんか肌寒いわよ。ばあや! ぎゃああ、なんだこれええ!」
「おはようございます。これが伝言です」
「何々。お前に修行を課す。終わるまで帰って来るな。はぁ? わらわは大阪村の平エルダー後北条華愛様ぞ。帰る! 大阪村に帰る!」
体全体をバタつかせるハナエをよそに、女エルフが手を鳴らすとハナエを捕らえていたしめ縄が解けた。ハナエは奇妙な姿勢のまま地面に落ちた。
「いったっ! それに何この庶民の服は! 高貴なるわらわが庶民の服を着るなんぞ耐えられない。私の十二単はどこぞ!? あっ、お前達は見た事があるぞ。名前は忘れてたがわらわを助けろ!」
「おはよう、俺は源エルダー白川真守」
「私は藤原エルダー上杉白菊」
マサモリは混乱するハナエに今回の修行について説明した。
「後、エルフ武器は使用不可能です。石化して埋めておくのも駄目です」
石化禁止が一番きついという事実が判明するのは後程の事だった。
「よし、要石に魔力を補給するぞ」
マサモリとシラギクが要石に手を触れた。魔力を要石に補給すればするほど体調が悪くなってくる。二人は顔を青白くさせながら魔力を注ぎ込む。
魔力が減るにつれて注ぎ込むのが困難になって来た。最後の方の残り少ない歯磨き粉をひねり出す感覚に等しい。そのうえ、体調も悪いし頭も痛いし眩暈もしてくるので最後の一分までが近いのに遠かった。
入山魔料を払うのは富士山の環境の保全の為だ。魔物が生まれる時に魔素が消費される。魔素は例えるなら原石、魔力は生成されたインゴットだと思うと分かりやすい。
何もせずに沸いた魔物を倒していくと魔素の増加量を減少量が上回って魔素が少なくなっていく。エルフの森の特定の場所以外は全部こうやって魔素を減らす事で安全性を確保している。
逆に修練場や採取地として使う場合は魔力を与える。一言で言えば狩場の養殖だ。これはエルフの魔力が上がったから出来る事で超大陸で再現するのは不可能に近い。
するにしても莫大な費用がかかるだろう。エルフにとって余っている魔力を効率的に資源に変換できる錬金術なのだ。星外生物の襲来で戦略物資が枯渇したので現在は補充する魔力を増やしたうえで入山者を増やして資源を回収している。
魔力を補充した事で富士山では強力な魔物が沸くようになった。標高が上がるにつれてその傾向が強くなり山頂からその上に存在する富士霊樹では樹海の深層域の魔物が出現する事すらある。
修行にもなり、お金稼ぎにもなる最高の狩場なのだ。なので普段は入山制限が厳しい。しっかり信用できる者しか入山する事が出来ないので入山権を得る為に浪人達はまじめに働くのだ。
入山権は大手の口入屋が大半を所持している。各村長も枠は少ないながらも持っているのでマサモリ本人も実は何枠か持っている。枠は本人以外にも使用者を限定しない物もあり、村長の許可があれば村人なら誰でも使用できる。
ただ、マサモリ本人がそれを知っているかは微妙である。富士山の入山権があると聞いたらダンジロウは行きたがるだろう。
村長は優遇されているがそういう場所に入る場合には普通の人よりも多くの魔力を支払っている。




