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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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「マサモリ君に必要なのは主となる武器と攻撃の破壊力だな。シラギクは得意武器が決まっているから次の段階に進める。シラギクは明日から特別な訓練を受けるけどマサモリ君はどうする? 棒術かそれ以外の武術を試してみるかシラギクと一緒の訓練を受けるか」


「特別な訓練って?」

「今二人に足りない物を補う訓練だ。丁度講師を呼んでいるから受けた方が得だぞ」

「それじゃシラギクと一緒ので」


「残りの三人はまず魔物と戦う訓練からになるな。浅間山で赤鬼を探して戦わせる予定だ。背の高い男の子はもう少しで次の段階に行けるけどまだちょっと危なっかしいな」


「戦いは慣れだよ、慣れ」

「都会育ちだと近場に良い訓練場が無いからな。だからここが遠足に選ばれたっていうのもあるが……」


「よし、明日からは修業が始まるから今日は風呂に入ってもう寝ろ」

「「はい」」


 腹が満たされると眠気が沸きあがってきた。二人は風呂に入ってすぐ布団に飛び込んだ。



 マサモリは目を覚ました。しかしまだ魔力が不足している。頭痛はましになったがどこか良い霊地があれば瞑想したい。シラギクの物と思われる布団は既に空だ。残りの三人を起こしていいのかわからなったのでマサモリは部屋から出た。


「おはよう」

「おはよう」


 マサモリは寝ぐせで髪が逆立っているガザンと朝の挨拶を交わした。


「三人共まだ寝てたけど起こしていいのかな」

「ああ、マサモリ君から見て問題なさそうなら起こしてきてくれ。三人が起きたら飯にするぞ」

「うん」


 マサモリはまだ寝ている三人を起こした。ベニタロウは中々起きなかったので布団ごとひっくり返した。


「「「いただきます」」」


 昨日の残りのおにぎりとみそ汁、簡単な野菜のおひたしが食卓に並んだ。マサモリは特に魔力不足もあって食が進んだ。魔力を帯びた食料は食べれば食べる程、魔力が回復する。


 米は魔力を蓄える為に抑制栽培されているので特に美味い。これで樹海の食べ物があったらもっと魔力の回復が早まるのにとマサモリは思った。


 マサモリとシラギクは赤鬼狩りに向かう三人とガザンを見送った。しばらく待つと一人の男が到着した。


「私は佐藤鍵吉。重量術の教師だ」

「「よろしくお願いします」」


「俺は源エルダー白川真守です」

「私は藤原エルダー上杉白菊です」


「二人ともよろしく。まず君達は重量術を知っているかい?」

「私は知っています」

「知りません」


「なるほど。なら重量術とは何かを教えよう。その前に他の種族に比べてエルフが優っている点と劣っている点は何かな?」

「エルフは魔力が優れていて、身体能力が劣っています」


「正解。重量術は身体能力を補うためにある。その前にこれを手首、足首に付けてもらおう」


 マサモリとシラギクは鉄の様な金属でできた重りを手足に付けた。小さい割にかなり重い。


「簡単に言うと重量術は重さを利用して攻撃力を増やす技術だ。初めて本格的に樹海に入ったご先祖様は攻撃力不足に悩んだ。樹海の生物は鉄の様に硬くて軽量武器では傷を付けるのも大変だった」


「そこでご先祖様は武器を大きくしていった。攻撃力を上げる方法として効果的な順番は強い武器を持つ、強化魔法を使う、武術を研く、体を鍛えるだ。武器は材質や形状、研ぎによって殺傷能力を増す。ミスリル、アダマンタイト、オリハルコン、玉鋼等の金属のランクを上げる事で同じ形状でも殺傷能力を上げられる。しかし希少金属は高価だし手に入れるのは困難だ」


「一般的にはミスリル製武器位が普通の人が手に入れられる上限になるかな。強化魔法は覚えている人といない人では大きな差が出てくるけどエルフはみんな覚えられる。魔力が多いって素晴らしいよね。強化魔法は使えば使う程、効率的に効果的になる。だから武者エルフ等の戦闘職は強化魔法を鍛えるね」


「君達長老族は結界を纏う事でより効果を高められる。武者エルフも結界魔法は覚えるけど強化魔法を鍛えた方が効率が良い。結界魔法は設定が色々と面倒だからね。それでも戦闘職なら誰でも強化魔法の外側に結界魔法をかけているはすだ」


「君達から見れば拙すぎて結界魔法と呼ばれるのは心外かもしれない。武術を研くのも効果的だ。極めれば武器とか強化魔法よりも一番力を発揮するけどそれはほんの一部だから例外とする。体を鍛える。これは一番地道にやらないと効果が発揮しない。最初の方は身体能力の伸びが良いけど鍛えれば鍛える程、伸びが小さくなっていく」


「話しを最初に戻すよ。攻撃力不足を解消する為にエルフの武器は大きくなっていった。すると巨大だし重いし移動力は下がる。木々の間を飛び回る為に軽装備中心だったエルフにはいまいち合わなかった」


「でも命を守る為だからしょうがない。その頃は武器を作る施設なんてなかったから樹海に落ちてる石で作ったでっかい石斧とかも使われていたよ。でもその内、気が付いたんだ。巨大な武器を持つにつれて蹴り技の威力が上がっている事にね」


「武器が軽い頃は敵の攻撃も武器で簡単に捌けたんだ。武器が軽いから手数が多かった。だけど武器が重くなると一動作が遅くなってしまった。手数が減ってしまったんだ。樹海だと樹が攻撃してくるから手数が少ないと威力はあっても小回りが利かない」


「武器で防ぐより避けたり手で弾いたり足で蹴り飛ばしたりした方が楽だったんだ。そうやっていく内に次第に体術の威力が上がっている事に気が付いたんだ。そこで気が付いたのさ重さは強さだって事に」


「理解出来たら後は実践するだけになった。武器の重さを自分の体と一体にする。すると重心は変わるが重さを自分の体の一部に出来た。巨大な武器を振っていた時は武器はただの武器だった。しかし理解すれば武器は体の延長になった。必ずしも武器で攻撃しなければならないという訳では無くなった。その時に考案されたのが重量術だ」


「体に重りを付けて攻撃にその重さを利用する。簡単だがそれ故に奥が深い。昔は攻撃力不足を補う為に大きい武器や重い武器を使ったが今では多くの者が重量術を修めている」


「巨大な敵の攻撃を正面から受けなければならない時、何も持っていない状態と重い荷物を背負っている状態では重い荷物を背負っている場合の方が踏ん張りが効く。早く走る時、走るスピードが増せば増すほど空気抵抗が増える。何も持っていない人と重い物を持っている人では安定感が違う」


「弱者に取って重さは重力を伴って地に引き寄せてくる悪魔の手だが強者にとっては重さは安定感を与える大地の抱擁になる。エルフは魔力に優れていて強化魔法で身体能力を補強できる。しかし重さが足りない。強くなればなるほど、速くなればなるほど重さが必要になってくるのさ」


 なるほどとマサモリは思った。体格が良い相手は強い。単純な法則だが腕の長さ等は考えた事はあるが、重さまで考えた事はなかった。


「最近ではエルフの長寿化に伴って体格の成長が子供程度で止まるエルフが増えている。だからといって侮ってはならない。とんでもない重さを隠し持っている可能性があるぞ。まずは重しを付けて拳と足に重さをのせる方法から始めよう」


「「はい!」」




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