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超大陸の人用の住居が完成した。そろそろ石像になっている人の石化を解除しようとマサモリは思った。長い石化は魔力が少ない人にとっては負担が大きい。ここ数日で人が増えても大丈夫な量の魚の備蓄も出来た。
男の石像はマサモリと武者が担当し、女の石像はシラギクとボタンと女忍者が担当する。彼ら、彼女らの手首には腕輪、足首には足輪が嵌まっている。どちらも素材は吸魔石で出来ている。
「それでは解呪を始める。解呪」
マサモリが男の石像を一人ずつ解呪する。
「ここはどこだ! 糞っ、吸魔石じゃねえか」
「石化が解かれた者から服を脱いで、こちらの風呂に入って」
「エルフ共じゃねえか! ぶっ殺してやる」
「わしの髭が無い! 命より大事なわしの髭がぁ! エルフ殺す!」
吸魔石の腕輪と足輪のお陰で強化魔法が発動できず、素の身体能力で殴りかかって来た。中にはかなりの武芸者も居たが強化魔法を使える武者エルフには歯が立たなかった。顎をふわりと撫でられて次々に倒れていった。そして服をはぎ取られて風呂に放り込まれていく。
「くそっ、服を脱がすな! もしかして俺達を喰うつもりか!」
「お前らなんて喰わん」
大半が目を覚ますと猛然と殴りかかってくるのを見て超大陸の怖さが分かる。
「服を脱いで風呂に入って」
殴りかかってこないで隅で震えている二名に向かって声をかけるととすぐさま服を脱いで風呂に飛び込んだ。
「熱い! もう出る!」
風呂に投げ入れて一分も経たない内に風呂から逃げ出そうとしている者が続出した。しかし風呂を囲うように結界が張ってあるので逃げ出せない。
「俺は風呂が大嫌いなんだー! 出せー!」
「まさか、毒か!?」
「ゆで殺しにするつもりか」
全員が風呂に入った事を確認した。
「俺の名前は源エルダー白川真守。この出島村の村長だ。殺す気はないから、これからの事を説明するから聞いてくれ」
「殺すぞ! お前の」
手をかざして結界内部からの音を遮断した。外からの音は問題なく届く。大半の男達が叫びながら結界を叩いているがとりあえず説明をしよう。たぶん話しても聞いてないだろうがしない訳にもいかない。彼らはお客様ではないのだから。
マサモリは超大陸の人から見ればまだ子供程度の背丈だ。それが村長と言われても納得できないのかもしれない。
「お風呂から出たら服を支給するのでそれを着たら一人ずつ健康診断をするよ。一列に並んで用意された小部屋に入って。まだ汚そうだからちょっと洗うかー」
風呂の熱湯を丁寧に上方に集めてからかけていく。みんなひどい臭いをしていたので本当はもっと念入りに洗いたいのだが中の様子を見るとこれ以上は止めた方がよさそうだ。
「結界を解除っと」
結界が解かれると男達が一斉に風呂から這い出した。そしてそのまま殴りかかってくる。武者エルフに静かにされた後、念動魔法で雑に体を拭かれて服を着せられる。
「痛い! 痛い! ちゃんと着せろ」
「魔法で服を着せるのって大変ですね」
「痛いのが嫌だったら自分でちゃんと着ろ」
「これはこれで楽しい!」
「わかった! 着るから止めろ!」
武者エルフもマサモリも上手く服を着せる事が出来なかったので諦めた人達は自分で服を着た。
「列に並んであの小屋に一人ずつ入って。これより健康診断を開始する」
「くっ、あそこで殺すのか。俺は食っても旨くないぞ!」
「見てればわかるよ」
小屋に一番近い男をふわりと念動魔法で持ち上げると部屋に入れる。そして結界を張って密閉した後に魔法をかける。
「ががが、んぎいいいい」
「やっぱ、殺すんじゃねーか!」
結界に密閉された男は突然苦しみだした。すると彼の体から寄生虫が我先にと飛び出した。魔線虫、魔ムカデ、魔ダニ、芋虫のような様々な生物が藻掻いた後に動かなくなっていった。
「樹海では強化魔法が弱いとあっという間に寄生虫が入ってくるよ。石化で寄生虫の動きを止めてるからまだ正気だろうがそのままにしておくと脳を乗っ取られて手遅れになる。そうなりたくなければ浄化魔法をしっかり浴びるんだね」
すると列に並んでいた男が逃走を始めた。
「ふざけるな! 俺は列に並ぶと死ぬんだ! 列はせいぜい二人までだろ!」
各々が樹海に向かってバラバラに逃げて行く。
「ひぃぃい」
別の男は肌を掻きむしった。
「列に並ぶと蕁麻疹が出るんだー! もう駄目だー!」
最初に走った男が結界の境界線にたどり着いた。そして全力疾走のままの体勢で結界にぶつかった。嫌な音が鳴って首が折れ曲がった。しかし男は素手で結界を殴りつける。数度殴っただけで男の腕は簡単に折れて骨が肌から露出した。
暴走している男は隣の男に飛びついた。
「なんだ! 止めろっ、離せええ」
暴走する男の体からムカデを繋ぎ合わせたの様な、それ以上におぞましい節足動物が飛び出して健康な男の柔らかい皮膚に潜り込もうとした。
武者エルフがそれを素早く切り裂く。他の暴走する男達も念動魔法で掴み上げて列に戻した。
「怪我をした人をこっちへ」
マサモリは首の骨が折れ曲がった男に首の位置を直してから回復魔法をかけた。傷付いた腕も無理やり元の位置にしてから回復魔法をかけた。体の治療が終わると男に向かって電撃を放った。
男の体が大きく跳ね上がった。そして意識を取り戻した。神経を痛める怪我をした場合は回復してからすぐに電気を通した方が後遺症が残らない。大事に動かさないでおくと神経伝達が少しずれたりする。
ついでにもう一回電撃を流した。
「命にかかわるから浄化魔法はしっかり受けて」
屈強な男達もこの光景を見た後では少し大人しくなった。
「あれ?」
男達の体から寄生虫が飛び出してくるを見飽きてくる頃にそれは起こった。マサモリは珍しく浄化魔法をしても終わった手ごたえが感じない。もう一度かけ直してみるが失敗した。
「ちょっと両手を上げて一回転しろ」
「チッ!!」
男は舌打ちしながらも素直に一回転した。
「んー?」
「そいつはただのワキガだよ! さすがの魔法でもワキガは直せないんだな。ブフフフ」
「はぁー、これはフェロモンだ。俺が肩を抱けばどんな女でも一発で昇天だ」
「気絶してるじゃねーか!」
「呪いの域に達している……。とりあえずもう一回風呂に入って」
マサモリが言うと武者エルフが粉末にした薬をさっきの風呂に入れた。男は渋々ともう一度風呂に入った。
「思った以上に大変だった」
「おつかれさまです」
「おつかれー」
マサモリと武者エルフ達は労いあった。
「ここがトイレ」
一行はトイレに到着した。
「小便の方は見て分かるだろうから個室の使い方を教えるよ」
マサモリが個室のドアを開ける。中には便座がある。
「おいおい、水漏れの音がするうえに狭い牢屋だな」
「トイレだって。この音は音姫さ。排泄している時の音を聞こえなくしているんだ。そしてここに座って排泄する」
「また変な音が鳴り始めたぞ!」
「これは便座に座るとスズムシのSUZU君のベストヒットアルバムが流れるように出来ているんだ。トイレの中でも快適な一時が過ごせるって寸法さ」
快適な生活は快適な便座から始まる。これは絶対に持ってこないといけない必需品だった。
「ただの雑音じゃねーか!」
「そして排泄が終わったらこの紙でお尻を拭く。しっかり拭いたらこの噴水みたいなボタンを押す。するとノズルが伸びてきてお尻を温水が洗浄してくる。このボタンを押すと水が止まる。そうしたらここを操作して水を流す。誰か使ってみたい人はいる?」
「俺は嫌だぞ。これは新手の拷問器具だろう」
「おいおい、お前びびってるのか」
「ちげーよ、お前こそなんだかんだ言って使うのが怖いだろぉ?」
「おい、てめぇ喧嘩売ってんのか」
「はんっ! お前と違ってこんなん別に怖くないから使ってみてやるよ」
そう言って隣の個室に入った。
「おう、便座が温かいじゃんかよ」
しばらく鈴虫の音色が響く。いつ聞いても素晴らしい曲だ。トイレに居るという事を忘れそうになる。
「ふう。おっ、クソ良い紙使ってんじゃんか」
「紙は貴重だから大切にね。使い過ぎたらそこらへんの葉っぱになるよ。強化魔法が使えないから葉っぱで怪我したら尻が腐れ落ちるよ」
「んったく、全然大したことないな。後はこのボタンを押せばいいんだよな」
「うわああああ!! 尻があああああ。くそっ、止まれ止まれえええ!」
中の男の悲鳴が響き渡るが中に入りたくないし見たくもないのでマサモリは静観を決め込んだ。
「やっぱり拷問器具だったんだ! 俺は最初から気が付いていた」
「ビビらせやがって……。最後のは驚いたが別に大したことなかったぜ」
「悲鳴をあげておいてそれかよ」
「ふん、自分でやってみればいいさ。ビビッてなければな」
好奇心旺盛な少数の男達が個室に入ったが程なくして小さな悲鳴が上がった。マサモリはその時になって初めて水の噴出力を弱に設定していない事に気が付いたのだった。




