8話目 ボーナスステージ
さて、じゃあ早速、カードを魔法スロットにセットしましょうか。
「いでよ、スカーレットドラゴン!」
出ない。
あら、ヘンね?
「エイホウさん。竜が出ないんだけど?」
『カードを入れて30分経っていないためです』
「え~!?」
何よソレ、カップ麺が10個も食べられるわよ!? いや、食べないけど!
ンで。
あたしは待ってた。
ふっふっふ……勝ったんだし、さっさと新宿に行けばいいじゃんって?
チチチ、あま~い。
スカーレットちゃんは、ブレスと頭突きの名手よ?
地底湖の上を、ヘッドバットして穴を開ける! それで、別の階を目指すわ!
「社長の思惑のウラをかいてやる!」
ホイホイ新宿を目指すと思ったら大間違いよ!
30分経って、魔法スロットの文字がグレーから白に変わった。
よーし、今度こそ!
「スカーレットちゃん、出てきて!」
手の平に赤い光が集まり、それが大きく弾けると、目の前に緋色の竜が現れた。
――って、アレ?
「小さくない?」
あたしと戦った強敵は、2周りほどサイズダウンしてた。急激なダイエット? あれれ~、おかしいぞ~?
「ま、味方になるとポンコツ化ってのは、よくあるケドさ」
むしろあの社長なら、「バランス取って、カードにするのナシな」とか言いそうだし。仲間になってくれて良かったと思いましょ。
「じゃあ、スカーレットちゃん。鍾乳洞を頭突きでブチ抜いちゃって!」
『アンギャーオ!』
すぐにスカーレットちゃんは、ヘディングをしてくれた。
ドズゥゥン。
シュワ~……。
「あら?」
スカーレットちゃんの姿が薄くなってく。あ……、消えちゃった。
「え? あたしのドラゴンちゃん、弱すぎ……?」
そりゃ、赤竜がそのまま召喚できたら、カンタンに俺TUEEEが出来ちゃうけどさあ。弱体化させすぎじゃない?
もういっぺん呼ぼうとするけど、呼べない。
「エイホウさん、なんで?」
『マナが足りません』
「ぐはぁ」
魔法を使うにはマナがいるのね。
「もしかして、強いユニットほど、多くのマナが必要とか?」
『はい。スカーレットドラゴンはレベル7なので、7マナ必要です』
「うーむ」
あたしは8マナだから、ギリギリだったのね。
「いつ回復するの?」
『1秒で1マナ回復します』
「あ、そうなんだ」
なら、とっくにフルに戻ってるわ。改めて召喚、と。
――出ない。
「エイホウえも~ん!」
『クールタイムのためです。普通の魔法カードは、30秒に設定されてます』
「あうぅ……」
再使用にも時間が必要とか。社長~ぉ……説明ブン投げすぎ!
あ、いま竜の文字がグレーから白になったわ。
「今度こそ!」
スカーレットちゃんを召喚! 早速ステータスを確認よ。
攻撃5、速度4、体力5……?
「うぎゃーっ!」
弱体化ってレベルじゃないわよ!? なにこのポンコツ!?
「――ンでも、しょうがない」
ドンドン掘り進めてもらうわ。攻撃力はガタ落ちだけど、天井はポロポロ崩れてるし、じきに崩せるハズ!
こうなってみると、敵のときに地底湖の上をガンガン頭突きさせといて良かったわね。
ドズゥン! ガラガラララ……。
お、開通した! 例によって、スカーレットちゃんはダメージを負ってカードに帰っちゃったから、あたしだけ先にのぞくとしますか。
正直、さっきまでとは違うドキドキ。ドラゴン退治は、社長の用意したイベントだったけど、ここから先は想定外なハズだものね。
そ~っと頭を出して、上の階を確認。んっと、上も鍾乳洞エリアみたいね。広い空間3連発って、フツーなら絶対崩れてる作りだわ。
「あら?」
ちょい遠くに、体長50cmぐらいの巨大なクモをたくさん発見した。とりあえず、バサリと空を飛んで、制空権を確保してと。
「スキャン、発動!」
いや、ただの鑑定だけどね。気持ちの問題よ。
ふむふむ、お名前は「紡ぎグモ」ですか。攻撃、速度、生命はオール4。こんなナリでも、竜とほぼ遜色ないステータスなのね。ゲームあるあるだわ。
――ん? 弱点は炎?
ほほぉ……このあたし相手に、そんなこと言っちゃうの?
かたわらに、赤き強敵を召喚。
「オ~ホッホ! スカーレットちゃん、やっておしまい!」
『アンギャーオ!』
シュゴー!
ひゃ~、燃やす立場って気持ちいいわね~。ハハハ……クモがゴミのようだわ!
次々とカードに変わっていくクモちゃんたち。あ~、あんたたちイイ子だこと。これからは、あたしの力におなりなさい。
「汚物は消毒よ~!」
ブレス後に、落ちてるカードをそそくさと回収していった。は~、ありがたやありがたや。
「ん?」
違うカードが混ざってたわ。
「なになに……【蜘蛛の糸】?」
へぇ、必ずユニットってワケじゃなくて、関連したカードにもなるのね。
種類が増えるのはいいことよ。はい、回収~。
そんな調子で、クモを火炎放射でバシバシ焼いていくと、その道の先に、糸に包まれたたくさんのユニットがいた。
あらま、ご愁傷様。エサになっちゃったのね。
――キラーン。
ボーナスタイムは、まだ始まったばかりよ?
今回までにゲットしたカードです。
【緋色の竜/Scarlet Dragon】
レベル7・赤魔法/レジェンドレア
分類:召喚(竜)
攻5/速4/体5
サイズ:大
特徴:《飛行》《炎の息吹》《尻尾攻撃》
「これは、私の長きにわたる竜退治において、初めて世に出た冒険譚だった」
――竜を追う者、グラッデン
【紡ぎグモ/Spindle Spider】
レベル4・緑魔法/コモン
分類:召喚(クモ)
攻2/速4/体2
サイズ:小
特徴:《蜘蛛の糸》《同時召喚》
「なぜこの蜘蛛の糸は綺麗なんだろうな」
「色んな生き物の夢を食ったからだろうよ」
【蜘蛛の糸/Web】
レベル1・緑魔法/コモン
分類:射撃
効果:指定した一点を中心として、蜘蛛の巣状に糸の玉が広がる。
ヒットした相手には【のろま】がかかる。
「紡ぎグモは1時間で巣を張り直す」
「それで、何がわかるんですか?」
「獲物がこの道を、ついさっき通ったってことさ」
――エルフ、2回目の狩りの授業
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