7話目 少し、頭冷やそうか(物理)
自分にブレスをした竜の行為は、あたしの闘志にも火をつけた。
大量の水を一気に浴びせれば……イケるわ!
「あとは、魔法ゼロのあたしで、勝てるのかってコトよ」
社長の感じからすると、「勝ち筋を作ってる」と思うけどね。それも、気付くまでは鬼のような難易度だけど、気付いちゃえば結構ラクな手順。
だって、その方が、相手の言い訳までツブせるもの。
勝ち筋なしの場合の社長を、脳内でシミュレートしてみた。
『アハハハハー! 勝てない相手にずっと挑んで、バッカで~!』
――うん。ムカつくけど、ゲームを作ったのは向こう側なのよね。だから、「反則じゃん!」って、文句言える。倒せそうなボスを置いといて結局ダメとか、禁じ手だし。会ったときに「ガキ社長」って笑い飛ばすだけよ。
改めて、竜のスペックを見てみた。
速度が「8」。この数字って、あたしの倍だけど、小回りの分で何とかかわせてる。ギリギリ対処可能なライン。
そして、弱点が「青」。――これもねえ、倒せないボスなら、全部無効にしちゃえばいいのよ。水しぶきをかけたダケでダメージ食らうとか、そこだけ切り取ると、ボスにあるまじき弱さ。
鬼畜なクセに、あちこちの仕事は丁寧なのよね。
もう1個、勝ち筋ありの方を、脳内シミュレートしてみた。
『アハハハハー! 勝つ方法、あったんだぜ!? ○○に△△させたらいいんだよ!』
――あ、ムカつき具合が跳ね上がったわ。つまりコッチよ。いま、確信できた。
これ、ゼッタイ勝つ方法がある!
社長は、いわば悪のダンジョンマスターね。それで、プレイヤーとの勝負を楽しんでるんだわ!
その方が、社長も楽しいハズだもん!
「エイホウさん。スカーレットドラゴンの倒し方は伏せて、倒した人数だけ分かれば教えて」
『検索中……判明しました。推定、ゼロ人です』
「――ふぅん。へ~ぇ」
やる気がフツフツと湧いてきたわ。
だって、この竜にチャレンジした人間は、みんな倒せなかったってコトよ?
「よぉーし、やってやろうじゃない!」
それからは、トライ&エラーだった。何度か地底湖の中から挑発したり、インベントリに水が入らないか試したり(ちなみにダメ)。
「う~ん……手ごたえナシだわ」
地底湖の真上で、頭をブツけさせて脳震盪とかも狙ってみたんだけどね。あわよくば、湖に落下しないかって考えたんだけど、失敗。
あちゃ~、天井の岩がボロボロ落ちて、崩れてきそう……。落盤事故とか起きないわよね?
――ん?
「わかった!!!」
多分、これで正解なハズ。というより、これでダメなら、しばらくふて寝するわ。――え、《不眠》? 気持ちの問題よ。
レッドドラゴンが吠えて、いよいよ開戦。あたしは、スタート地点から真上へスイスイ飛んで、勝手知ったる鍾乳洞の天井付近で挑発。竜のブレスをかわして、竜は天井とごっつんこ。
竜はピンピンしてるけど、あたしは焦らない。一旦離れたのち、再度そこの天井で待機。もう1度挑発。
さっきより、ブレスのタイミングが速い。――ンでも!
「あたしだって、ダテに何度も死んでないわ!」
この竜ってば、ブレスのとき、向かって右から左に吹くってクセがあるのよね。だから、少しひねりを入れたあとで吹いた場所に戻ってやると、若干タイムラグが出来るのよ。
あとは、首の可動範囲ね。コイツってば、省エネが好きなのか、なるべく動かずに首だけ動かしたいヤツみたい。だから、ほんの少しだけ可動範囲の外側まで回り込めば、ヤツは大きく体ごと回さないといけないの。
「小回りは、こっちが有利なのよ!」
天井に、2回目の頭突きをさせたことで、結構えぐれてきた。
――いける!
あたしは、もういっぺん天井で待機した。竜はさらに怒り狂ってるけど、なんとかブレスを寸前で回避。さらに強烈な頭突きが天井に直撃する。
ドズゥゥウウン……ガラガラララッ!!
天井が崩壊して、上の階にある『モノ』ごと、一気に落ちてくる。
「水を……食らえー!」
ドザアァーーーーッ!!
『アンギャァアアアオオオオ!!』
滝のように叩きつける膨大な水! 派手に絶叫するレッドドラゴンは、なす術なく地面へと落下する!
「いよっし!」
ドズゥゥウウウ……ン。
竜の巨体は、赤い光に包まれた。やがて、小さくなって消えていく。
「ふっ、ふふふふふ……」
両手でガッツポーズ。
「やった……勝ったわー!!」
あー、強敵だった!
ンでも……めっちゃ快感!
「バンザーイ! ――ん?」
水浸しの床の中、キラリと光るものがあった。
降りてみると、1枚のカードが。
※ ※ ※
【緋色の竜/Scarlet Dragon】
レベル7・赤魔法/レジェンドレア
竜の召喚
「これは、私の長きにわたる竜退治において、初めて世に出た冒険譚だった」
――竜を追う者、グラッデン
※ ※ ※
「うわおっ!」
コレってもしかして、竜の魔法カード!?
下の文章って、フレイバーかしら。初めての竜退治……うってつけじゃない!
「決めたわ!」
必ず他の竜も倒す! 大決定よ!




