33話目 魔法陣の攻防
大分あたしも土団子の扱いに慣れたからね。ころころっと、うまい具合に手前で止められたわ。
スグに竜は、もぐもぐタイム突入。――お、鼻をスンスンさせてる。そうよ~、その先には、も~っとお団子がいっぱいよ~。
みんなも、【魔弾】の撃ち込みを止めて見守ってる。大ちゃんは、ズンズン地面を揺らしながら魔法陣の上へ。――おお、やっぱり食べるときは、周りへの警戒が緩むのね。うんうん、そうよね~。
大ちゃん、至福のひととき。――くくく、何も知らずに食ろぅておるわ。
シュワァアアアー……。
『ドギャアアーース!!』
「いよっし!」
ガッツポーズを取ると、周りからも大歓声!
「さあ、あと1回よ!」
のたうつ動きも、先に逃げちゃえばOKだもんね! 瓦礫のボディブローはもうゴメンよ!
ゴツン。
「あれ?」
何これ。――あ、よく見ると、琥珀色の壁がある。
「シャボン! 《力場》だ! お前、閉じ込められた!」
「え」
半径10m程のドーム内に、大ちゃんと2人きり。何も起きないハズはなく……。
「ヤバッ!!」
大ちゃんが大暴れ! 離れてるから、まだなんとか……。
ドゴォ!
「げふっ……」
しまった、大ちゃんからは離れたけど、ドームの「壁」の激突を食らったわ……!
フラフラになりながらも、ドームによる連続攻撃は避けた。大ちゃんのローリングに合わせて、あたしも低空飛行で必死についていく。
ぐはぁ、これはもう、みんなのサポートを期待ね。
チラッと周りを見ると、無数の翼竜がバッサバッサ飛んでた。
「――ウソでしょ?」
みんなは必死になって翼竜たちを撃ち落としてる。うわ~い、すでにサポートしてもらってた、てへっ♪
ホンット鬼畜だわ、社長!!
屋外は人数多いだろうからって、こんなのまで呼び寄せてるの!? ってか、向こうばっか自由に飛べるの、ズルい!
そんなあたしに、1人のマーメイドが駆け寄ってきてくれた。
「シャボン!」
「おっちゃん!」
「【巨大な盾】を撃つぜ!」
おっちゃんが青い光を杖の先に集めた。それが弾けると、あたしに何かが付与される。
「1回食らっても大丈夫な盾だ! だが、過信するな! 連続で《地震》は食らうなよ!」
「ありがとう!」
大ちゃんとのファイナルラウンドが始まった。怒りモードで《地震》の瓦礫をどんどん飛ばしてくる。うわっ、【石つぶて】とか、もはや岩よ、岩!
ドームで跳ね返った瓦礫をときどき食らうけど、おっちゃんがそのたびに【巨大な盾】を張り直してくれた。呪文は《力場》をすり抜けるのが、せめてもの救いだわ。
『ドギャース!』
おっと、大ちゃんが地団駄。ふふ~ん、大きく避けさせてもらうわ。
その途端。
――ドサッ。
「え?」
落とされた……って、2mを越してた!?
竜がすかさず足踏み!
ドゴドゴドゴドゴ!
「ああああああああ!!!!!」
「シャボン!!」
揺れてドームの壁にブツかって、落ちたらまた地震の揺れにつかまっての画面端コンボ!
「ぐぐぐっ……うりゃー!」
なんとかスキを見て脱出! あー、キツッ。
ライフはあと10点。もう1回コンボ食らうと死ぬわね。
(おっちゃん、回復魔法持ってない!?)
(すまん。今日は青と紫メインで、白は入ってない)
周りは翼竜の数がどんどん増えてて、絶望的な状態。被害者の会のみんなも次々たおれてる。
おっちゃんは、大ちゃんがあたしを狙いそうになると、魔法を撃って気をそらしてくれてた。おっちゃんいなかったら4、5回死んでるわね。
(シャボン、奴を魔法陣のあたりまで引っ張れるか)
(やってみせるわ。しぶとさには定評あるから)
(よし。じゃあ、【幻覚】を使った作戦がある)
おっちゃんは手短に話してくれた。
(乗った!)
それでいくわ!
あたしは、さっきよりも慎重に、怒りモードの大ちゃんの攻撃をかわした。鼻先スレスレを体より大きな岩が通っていき、ドームの壁に跳ね返ったヤツももういっぺんかわす。
ふー、ふー……! 極限状態のほうが、精神は研ぎ澄まされるのよ……! 今、あたしは最高のポテンシャルだわ!
その甲斐あって、とうとう魔法陣の手前までやってきた。土煙で埃っぽいなか、竜の射程内で攻撃を避け続ける。
「こっちに来なさいよ、大ちゃん! あたしが挑発してるでしょ!? トロいから来られないとか言うワケ!?」
でも大ちゃんは、決してあたしがいる魔法陣の方には来ない。手前で踏んばっている。
このAI、ニクいほど凄まじいわ……。どんだけ極まってるのよ。
でも、それを逆手に取った。
シュワァァアアアア……。
『ドギャァアアーーーース!!』
「決まった……!」
あたしは、おっちゃんに拳を見せた。
竜の真下には、何もない。――ように見える。
「ふっふっふ……あたしが魔法陣の上で挑発してるのに、なぜマナ上限が減らなかったのでしょーか?」
大ちゃんの真下の【幻覚】が解ける。そこには……ドンピシャで魔法陣!
「おのぼりさんには、どこも同じに見えちゃった? お生憎様。あたしは、因縁の場所をよ~く覚えてたわよ?」
――ごめん、ウソ。おっちゃんがダミーの魔法陣も【幻覚】で作ってくれて、その手前って教えてくれたオカゲね。
周りの翼竜は逃げていった。あー、大ちゃん倒した相手とは戦いたくないってこと? はいはい、帰んなさい。
大地の竜が茶色の光に包まれていく。その光がシューッと凝縮していったら、1枚のカードがそこに出現。
おっちゃんがカードを回収してくれた。
「そらよ」
あたしに投げてくれる。パシッと取ると、【大地の竜】。
「やった……! 勝ったー!」
おっちゃんと、全力のファイブタッチをした。
みんなの力でゲットした、茶竜のカードです。
【大地の竜/Earth Dragon】
レベル7・茶魔法/レジェンドレア
分類:召喚(竜)
攻5/速2/体5
サイズ:大
特徴:《尻尾攻撃》《加重》
能力:【地震】【力場】【石つぶて】
無効:茶
「ヤツの歩みはノロいが、あれは余裕の表れなんだろう」
「ほ~、大したジシンやな」
「どうする、行くか?」
「トーゼン! ワテがお宝いただきや!」
――大怪我をする前日のハーピー




