34話目 みんなに代わってお礼する
喜びはしたものの、周りは惨憺たる有様だった。
倒壊したビルはあるし、地面は壊れ放題。みんなも死んじゃったから、杖とかのアイテムが野ざらしになってる。
「出来る限り拾いましょ」
「ああ」
もっぺん戻ってきたとき、誰かに奪われてたら夢見が悪いもんね。《不眠》だけどさ。
「お」
遠くの瓦礫でも、アイテムを集めてくれてる人たちがいた。良かったわー、生き残りがいたのね……って、ちょっと待って。
クマと、馬と鹿。
そいつらが、コソコソと回収してる。
「コラ、あんたたち!」
レーヴァテインを出しざま、猛ダッシュ!
「それは、竜退治を助けてくれた人たちのアイテムよ!?」
「はぁ? またお前かよ」
ウンザリした顔だけど、それはこっちのセリフよ!
「なに勝手に回収してるの!?」
「あのなあ、この行為は問題ないんだよ! 運営だって認めてるだろ!?」
あたしは、少年社長の高笑いを思い浮かべた。――うん、弱肉強食とか、めっちゃ好きそう。
「だけど、今回はダメよ! ここのみんなは、あの社長が勝手に竜を呼んで、巻き込まれたダケだもの!」
だいたい、この行為って火事場泥棒じゃないの。戦いには参加しないで、みんながやられた後でちゃっかり顔を出してアイテム回収とか、サイッテー。
「あんた、クマじゃなくてハイエナでしょ」
「うるせえなあ!」
「みんなに落ち度がない以上、できる限りアイテムは返したいわ」
「はあ、甘っちょろいヤツだぜ……ああ?」
アラ? なんかクマが、こめかみ押さえてるわね。しきりにうなずいてるし……もしかしてフレンド会話してるの?
「はぁ!? なんだと!?」
突然の大声。あ、コッチにらんできた。
「テメェ……何度ジャマしてんだよ!」
「え、どういうコト?」
「トボけんな! お前、俺たちが出してた1円のユニットを、全部買い占めやがっただろ!?」
「――ん?」
ぽくぽくぽく、チーン。
「あー、あんたたちが出してたのね、あの関東の1円ちゃんたち」
「やっぱテメーかよ、サボテン!!」
はー……世間って狭いわね。
なんで大量に出してたのかも分かっちゃった。
「ユニットはもっと安くなるから、とっとと処分しちゃえって思惑だったのね」
「フザけんな! 分析なんかいいから返せよ!」
手の平を出してくるけど、その行為にあたしは心が冷えた。
「――何、それ?」
「返せって言ってんだ!」
カチーン。
「あのね? あたしは、市場で1円って出てたユニットカードを、合法的に買ったダケなの」
「安すぎたって分かってただろ!?」
「いいえ。あの時点では、分からなかったわ」
ゆっくりと首を横に振ってみせる。
「【箱庭】っていう対策カードが発表されることは、知らなかったもの。もし何も対策されなければ、あなたたちは脱法ユニットで世界を席巻して、1円カードには見向きもしなかったハズよ」
「対策されただろ!? 返せっつってんだ!」
「だから、それには応じられないわ。あたしはリスクを負って購入したの。当然、外れることもあり得たわ」
「はっ!」
クマたちは笑い飛ばした。
「1円のドコがリスクだよ!」
――こいつらってば、トコトン返してほしい態度じゃないわね。
「あのねえ。あたしにどーしても買われたくなかったのなら……1円で出さなきゃよかったのよ」
諭してあげたら、クマがブチ切れた。
「テメエ、人がせっかく頭下げてるのに……」
え~、誰が何したって? あんたがしてるのは逆恨みでしょ。
「ぶっ殺す!」
クマたちは〖ナイン・エレメンタル〗を出してきた。999/4/999が12体って、「ぼくのかんがえたサイキョーのゆにっと」って感じね。ダサッ。
――でも、いっぺんに来られると、ちょっとマズいかも。
「へっへっへ……。コイツは大暴落しちまうからな。その前に、テメーだけでもブチ殺しとくぜ」
その時、空から1人のアバターが颯爽と降りてきた。
「ん?」
ダークグレーのスーツに焦げ茶のコートを着た彼には見覚えがある。
「銀ちゃん!」
「やあ。また会ったね、シャボン」
銀狐がハンチング帽を取ると、ひょこっとキツネ耳が姿を現した。
「アイスに言われてやってきたよ」
「おっちゃんが?」
そう言えば、さっきから見えないわね。――もしや、同一人物?
「一応言っとくと、私とは別人だからね」
苦笑された。むぐぐ、タイミング的には疑うじゃないのよ、もー。
銀ちゃんは、クマたちと向き合った。
「ベアクローさんたち。今までのやりとりは、先日のようにドローンで撮影しておりますので、悪しからず」
「うぐっ……」
「投稿したら、ここでは活動できなくなりますよ。――アバターを変えて転生しても、前世とヒモづけする仕組みは色々ありますから」
「うるせえ!」
クマたちはナイン・エレメンタルを飛ばしてきた。
「やむを得ませんね」
銀ちゃんは指先に緑の光を集めた。それが弾けた途端、12体のエレメンタルが消える。
入れ代わりに、後ろからアイスがやってきた。
「撃ったか……まあ、話が早いな」
「え? どういう意味、おっちゃん?」
「銀狐のステータスを見てみろ」
言われるままにスキャンしてみた。
名前:銀狐 (ソッロ・デ・ラ・ノーチェ)
種族:〈狐人/Ninetails〉
攻撃:3
速度:4
容貌:麗しい
年齢:25
身長:185
体重:75
領土:【箱庭/Miniature Garden】
「え!?」
なんで領土に【箱庭】が!? 発表されたばっかのハズでしょ!?
「――あ」
もしや……カードを開発してたの?
そうだわ。向こうが脱法カードを作ったみたいに、銀ちゃんたちは対策カードを作ってたのよ!
だとしたら……うわ~、強烈ね。今の魔法1つで、相手の思惑をダブルでツブしてやったってアピールなワケ。涼しい顔して、こわーい。
クマたちは、ぐぎぎと歯軋りしてた。
「――くそっ。分かった」
大人しくインベントリからアイテムを吐き出した。アイスがアイテムを回収して、銀狐が投稿する。
「はい、ベアクローさん。アイテム回収を手伝ってくださった所まで、ちゃんと投稿しましたよ」
「――覚えとけよ」
銀ちゃんを見据えたクマは、次にあたしをニラんできた。
「サボテン。お前もざまぁ団のターゲットになったからな。アバターを変えてもツブしてやる」
「変えないわよ。その必要もないしね。――あ」
あたしは、ポンと手を叩いた。
「そうそう。大事なことを言い忘れてたわ」
「なんだよ?」
怪訝な顔のクマに、あたしは満面の笑みを浮かべてみせた。
「1円で売ってくれて、ありがとう」
「――チクショウ!!」
クマたちは【終了】していった。
うふふ。お礼が言えて、スッキリしたわ~!




