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水神の剣の守り手   作者: 星 雪花
剣の巫女
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帰郷( 3 )


 瑞彦たちとの話し合いによって、今宵こよい日が暮れた後に五瀬川を目指すことになった。

 頑としてふたりで行くと告げた桜子に対し、瑞彦は数人で後を追うと言って聞かなかった。だが、人目が多いと後で面倒なことにもなりかねない。結局桂木が護衛として行くことになった。

 桂木は桜子にそっと耳打ちした。


「蛍火が見られる場所は限られています。こちらが待ち伏せするつもりで行きましょう」


 その様子を見守っていた瑞彦は、憂慮した眼差しをむけた。


「先方も事を荒だてたくはないだろう。だが、身に危険が及ぶことになれば、必ず保身につとめるのだぞ」


 重ね重ねそう言う瑞彦に、桜子は向き直った。


「おじいちゃんたちは、お宮に里の人々を避難させてほしいの」


 瑞彦はそれを聞き、戸惑ったようだった。


「しかし」


 その言葉をさえぎり、桜子は確信に満ちた声音で言った。


「異変が起これば、それが起こってからでは間に合わない。お宮は清浄で、剣の力が及ばない唯一の場所。だからそれを里の人に伝えて」


 桜子の眼差しを見て、瑞彦も開きかけた口を一度つぐんだ。


「そうすると約束しよう。里長に事の次第を伝える必要もある」


 瑞彦は改めて桜子を上から眺めた。


 (いつのまにこんなにも強くなったのだろう。ただ勝気なばかりだと思っていたのに)


 そう思うと身内のこととはいえ、その成長ぶりに目を細めずにはいられなかった。


 (この子をあざむき嫁がせようとするなど、土台が無理な話だったのだ)



 五瀬川は古くから御影山を源泉に里を潤し、清らかなことで有名な支流だった。

 桜子と薫が稽古場を出て山陰へ姿を消すと、瑞彦はその身の安全を強く願わずにはいられなかった。


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