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水神の剣の守り手   作者: 星 雪花
剣の巫女
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帰郷( 1 )


 なばり流の始祖であり師範を務めている瑞彦は、偵察に向かわせていた桂木が桜子と薫を連れているのを見て、思わず腰を浮かせた。


 『月読』のやしきから桜子が脱走したとの報告があってから、まだ半日も経たない夕刻のことだった。

 こんなにも早く帰ってこられるとは、瑞彦も思わなかった。その手引きをしたのが誰なのか、瑞彦は知っていた。今まで里に近づこうとせず、組織を抜け出したと聞く愚息に対し、瑞彦は心のなかで礼を言った。優のことが気に入らないとはいっても、桜子がふたたびこの地に来られたのは彼の介添えがあったからなのだろう。

 瑞彦は桜子が手に触れられる距離まで近づくと、思わずその手でその身を抱きとめた。



 桜子は怒っているとばかり思っていた祖父の腕が、あたたかく自分を包んだのに驚きを隠せなかった。小さい子供に対する仕草のようで、頰が熱くなる。

 だが、抵抗する気にはならなかった。その抱擁には言葉では表せない思いが込められていた。よく戻った、心配した、と腕の強さがすでに語っていた。

 瑞彦は一時の抱擁の後、門の蹴放しに立つ薫に視線を移した。


「よく、桜子をそばで守ってくれた。やはり、護衛を務めさせたわしの目に狂いはなかったようだ」


 桜子は祖父の穏やかな態度を見て、言うべきことを先に言うことに決めた。


「私がここに戻ってきたのは、『水神の剣』の力を解放するためなの。おじいちゃんは反対していたけど、私が戻ったのはそのためなのよ」


 瑞彦は言い返す気にはならなかった。

 桜子が無事に戻ってきたからには、そうするのは宿命なのだろう。隠の一族は、代々『水神の剣』を御社みやしろに守ってきた。それが失われると思うと胸がふさいだが、桜子が帰ってきたことで沈んでいた気力が持ち直したのもまた事実だった。

 瑞彦は、桜子の視線を受けとめた。


「わしが桜子の婿がねを急いだのは、お前の母と同じ思いをさせないためだった。だが、それは誤りだったようだ」


 瑞彦はそう言うと、桂木を含む三人を稽古場に招き入れた。ずっと山の荒屋あばらやから歩いてきたため、足を伸ばせるのはありがたいことだった。

 桜子と薫の帰還を喜んでいるのは、なかに集う人々も同じだった。里の上忍とみられる男たちは、みな口々にふたりをねぎらった。


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