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水神の剣の守り手   作者: 星 雪花
剣の巫女
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月光( 2 )


「そんなに薫のことが気になるのか」


 桜子の様子を見越して、優がささやいた。


「薫は、水脈筋のどこかにいる。あの日桜の木の下で和人とやりあった際、みずから落ちて姿が見えなくなった」


「どういうこと?」


 不審げに問うと、優は言葉を続けた。


「あそこは、地中深くに水脈が流れている。そこで撫子の影に呼ばれたんだ。その木の元に扇が残されていた」


「じゃあ、この扇は」


「撫子のものだ、おそらく。まだ近くにいると思って追ってきたが、その気配はもう途絶えていた。

 ——薫を探しに行くと言うんだろう?」


 桜子は頷いた。


「だって、水脈筋は黄泉の淵なんでしょう? 戻ってこられなくなっているかもしれない」


「薫は大丈夫だ。言っただろう、あの場を深く潜ることができると」


「——誰かと思えば、その声は優だね」


 いきなり会話に割り込む者がいた。

 まったく気配を感じなかっただけに、桜子は驚いて身をすくませたが、優は動じなかった。


「噂をすれば影とはまことだな。貴様が桜子を閉じ込めたのだろう」


 現れた者が誰なのか、桜子も知っていた。雲に遮られた月影の光が増して南庭を照らしだす。

 和人は、隙のない身のこなしで松林の枝から降り立った。


「薫とやりあったって、本当なの」


 怒りを(あらわ)に桜子は詰め寄った。

 和人はわずかに肩をすくめてみせた。


「薫は私の正体に最後まで気づかなかった。もう少しで仕留められたのに、取り逃がしてしまった。黄泉の淵を渡るとは恐れ入る」



 ——この人は、薫を騙した上で油断させ、傷つけたんだ。

 ずっと一緒に暮らして、薫にとっては親代わりも同然だったのに。


 どうしてこんなに心がかき乱されるのか、桜子も分からなかった。ただ、そう実感した途端、震えるような怒りがこみ上げた。


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