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魔王討伐の旅



 色々と心配事だらけだったが、魔王討伐への旅が始まった。今日で王都を旅立ってから四日目になる。


 旅の前の貴族様方を交えた会食も、会食が始まる前に『貴族である聖女様と剣聖様は元より、平民である聖戦士様と賢者様にも皆失礼の無いように』という教皇聖下のお言葉があったらしく、安心して楽しむことができた。

 時々ミリアに色目を使う貴族様が居たが、そういった貴族様は教皇聖下がつけてくださった執事の人に何処かへと連れられていったので僕がいちいち殺気を放つ必要もなく、非常に楽だった。しかも連れていかれてから暫くして戻ってきた貴族様は何処か遠い目をしていてミリアに話し掛けてくることも無かったのでしっかりと()()()もしてくれていたのだろう。

 教皇聖下はとてもいい人だ。魔王討伐の旅が終わったら是非ともお礼をしなければ。


 旅のメンバーは僕とミリア、そしてアリシアとセドリックだ。ああ、勇者を忘れていた。勇者、名前なんていってたっけ?まぁいいか、たいして気になりもしないし。


「おい聖戦士」


 アリシアとセドリックとは少しずつ打ち解け始めている。二人ともいい人そうだ。セドリックは王都を出たその日に『初日にやらかした誰かさんとは違って絶対に婚約者のミリア嬢には手を出しませんので安心して下さい』と言って頭を下げてきたりと僕のことを警戒しているような雰囲気があるけれど、そこらへんは時間をかけて解きほぐしていくつもりだ。


「おい、聖戦士!聞いてるのか!」


 アリシアもセドリックも貴族の生まれで、アリシアは候爵家の次女から信託を受けて教会へ、セドリックは子爵家の長男だったそうだ。二人とも平民である僕とミリアを見下すことなく対等に接してくれていてとても嬉しい。平民である僕の方が少し気が引けてしまうくらいだ。セドリックは金髪碧眼のイケメンでザ・貴族様って感じだし、アリシアも綺麗な青髪がとても聖女様らしいし。

 ちなみにだが、セドリックは長男ということもあって跡継ぎは大丈夫なのかと聞いたら『自分に何かあったときは弟が自分の代わりに子爵家を継ぐ』と言っていた。大丈夫、その『何か』は絶対に起こさせない。


「おい!聖戦士!俺の、話を、聞けッッ!」


「何だ、さっきから五月蝿いですよ勇者様」


 ああ、五月蝿い。さっきから勇者………やっぱ名前思い出せない………が僕に向かって怒鳴っている。そんなに『聖戦士、聖戦士』と、いったい何だって言うんだ。


「この……ッ………。勇者の僕に向かって何て口のききかただ。チッ、まぁ今はそんなことは良い。お前、何でずっと戦わない!聖戦士だろうが、前に出て戦え!」


「何言ってるんですか。ずっと戦ってるでしょうが」


「嘘だ!お前は戦士の癖にずっと後で僕n…………ゲフンゲフン、ミリアちゃんといちゃついてばかりだ!足手まといなんだよ!」


「確かに前には出てないですけどちゃんと戦ってますよ?あとミリアとはいちゃついてるんじゃなくて傍に居るだけです。可愛い婚約者を守るのは僕の役目なので」


「この野郎…………調子に乗りやがって………………」


 はぁ、めんどくさい。この勇者、全くと言って良いほど学習しない。あれだけのプレッシャーを与えてやったのにまるで覚えていないようにケロっとしている。そういうところがある意味勇者の資質なのかなぁと思ったけど、これはめんどくさい。

 さっきから僕の指がひょいひょいと右に左に忙しなく動いているのに気付いていないのだろうか。ちゃんと戦ってるのに。


「だから僕はさっきからずっと戦って―――」

「五月蝿いっ!お前は追放だっ!役立たずは消え失せろ!」


「………はぁ」


「え、と…………何言ってるの?こいつ?」


 先程から訳のわからない勇者の話を聞いていたミリアが耐えかねたように前に出る。その時、ミリアが何か話そうとしたのを遮ってアリシアさんがスッと手を挙げた。


「勇者、お前気付いてないのか」


「ん?何かな、アリシアちゃん?」


「きも………いきなり態度変えやがった。ってそんなことじゃない。さっきから勇者は気づいてないの?遭遇する魔物の数が異様に少ない事と、遭遇しても後列に居た魔物が土に飲み込まれてってるの」


「遭遇する魔物が少ないのは偶々だろ?後ろの魔物は多分ミリアちゃんが倒してたんだろ?」


 何を的はずれな事を。とでも言いたそうな顔をしたアリシアさんは「はぁ」とため息をつくともう一度話始める。


「ミリアさんが使ってたのはパーティー全体への強化魔法です。攻撃はせずにサポートに徹していましたよ。後ろを土魔法で攻撃していたのはアイルさんです。あと、アイルさんによって半径一キロ圏内の魔物は間引かれています」


「間引く…………?」


「先程からアイルさんは指を振ってますよね。あれ、ずっと無詠唱で魔法使ってるんです。私、これでも一応聖女ですので探知魔法は得意なんですよ。本来なら私はその能力を使ってどこから魔物が襲ってくるか皆さんに伝えるんですけど、アイルさんによって前方から襲ってくる魔物以外倒されちゃってるのでその必要も無くなってしまいました。あ、また三匹死んだ」


 バッ!と勇者が口と目を真ん丸にしたアホ面で此方を振り向く。そしてその視線が僕の指へと―――


「今のはオーク二匹と鎌鼬一匹でしたね。右側後方300メートルほど先から匂いで気付かれたようだったので殺しておきましたよ。ああ、皆さんのレベル上げには支障がないようにはしてありますから安心して下さい」


「は、はぁ?」


 勇者、口あんぐり。

 僕だってここまで強くなるのに頑張ったんだぞ。


「成る程、先程からずっと目の前からしか魔物が出てこないものだから不思議に思っていたのですが、そういうことでしたか」


「アイルさんの魔力は底無しですよ。もう既に今日1日だけで聖女の私や賢者のミリアさんの使用した魔力の数倍は使ってますけど全く疲れが見えません」


 成る程、納得した。とセドリックさんが頷く。魔力かぁ、今の自分の魔力がどれぐらいあるかも把握してないなぁ。


「お前、聖()()だよな?」


「戦士が魔法で戦ってはいけないと誰が決めましたか?」


「お前、本当にただの村人だったの?」


「ええ、村人ですよ。覚えてる魔法も特技も全て村での生活に活かせるものです。土魔法なら畑を耕すのも一瞬ですし、水魔法があれば雨が降らなくても安定した水の供給ができます、更に火魔法で日々の料理等に使う火を調達出来ますし。ちなみに得意武器は斧と鎌です。斧なら樹を伐採する時に役立ちますし鎌なら農作物の収穫に使えます。どれも村一番の使い手になれるよう努力しましたよ」


「………………」


「なので追放は無しということで。ささ、勇者様は前衛ですので早く前に行ってください」


「貴様ぁぁ…………」


 ふるふると肩を震わせ始めた勇者。どーしよこれ、めんどくさいな。

 そう思っていたらセドリックさんがひょいと勇者の腕を掴んで前に連れていってくれた。ありがとうセドリックさん。お礼に後で僕の調合したラストエリクシールをあげよう。怪我だけじゃなくあらゆる病気や毒にも使えるからきっと喜んでくれるはずだ。


「はぁ、先が思いやられますね」


「なんというか………勇者様って節操無しなんですかね」


 ミリアとアリシアさんがため息をついてがっくりと肩を落とした。





【エロ本】

 異世界より召喚されたとある勇者によってこの世界にもたらされた物の一つ。平民から貴族に至るまで、幅広く読まれている。

 当時の勇者は『私にとってエロ本とは【自由】である。そしてエロ本とは【野性】でもある。つまりエロ本とは【妖精さん】である。常に自由で野性的な存在である。故に何人であろうとエロ本の内容をねじ曲げてはならない。皆の者よ、エロ本は常に皆に開かれている。描くが良い、エロ本を。読むが良い、エロ本を。NL、BL、GL、SM、何でも良い。エロ本に触れたその瞬間、私達は自由を得るのだ』と、熱く語ったという。

 この演説(?)により、勇者は一部の国民から非常に慕われるようになり、一部の国民から冷たい目で見られるようになった。

 勇者の教えは今でも守られており、多くのエロ本作家によって幅広い作品が作られている。

 同時期に勇者によってもたらされた【漫画】の一種である。




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