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勇者の場合 其の一


 突然だが、僕はこの世界に召喚され、魔王を倒すことになった勇者『カズト』である。


 日本にいた頃、いわゆるオタクだった僕は『小説家になりませう』というサイトで『異世界召喚』モノのとくに勇者がハーレムを築き上げる話を読み漁っていたこともあり、召喚されたことに飛び上がるほど喜んだ。


 僕は勇者だ。小説の中の勇者達は何処へ行くにも美少女達に惚れられて次々とハーレム要員を増やしていく。

 それはもちろん最初に召喚された国のお姫様だって例外じゃない。だから僕は僕を召喚した王女様をまず一番最初のハーレムメンバーにしようとして口説きにかかった。


 もちろん元オタクの僕に口説きかたなんてよくわからない。そこらへんはハーレムを築き上げた勇者達に習ってオタク知識で頑張った。


 そしたら、なんか凄い嫌われた。どうやら王女様には婚約者が居たらしい。だから初対面の癖に言い寄ってくる僕が非常に気持ち悪く、鬱陶しかったらしい。

 すぐにお姫様に呼ばれた兵士達に王様のところまで連れていかれた。酷い。


「お主……………節操なしにも程があるじゃろう」


 王様にあきれた顔でそう言われた。『英雄色を好むと言うが程ほどにしなさい。でないと背中から刺されるぞ』と王様に言われて僕は目が覚めた!

 そうだ、確かに僕は常識が無さすぎた。いきなり地位のある女性を口説いてもまだ実績の無い勇者に靡くわけないだろうということに全く気付いていなかった。

 王様が言うには『お主、魔王倒したら褒美にワシの二番目の娘と婚約させてあげるから。ワシの二番目の娘は物語の中の勇者に憧れておる程の勇者好きでな。お主との婚約の話を出したときも大喜びだったから何も問題ない。出来れば勇者らしく一途に誠実であってほしいが、お主色々駄目そうだし愛妾くらいは許すからがんばれ』との事だ。最初のハーレムメンバーは第二王女か。頭お花畑ちゃんっぽいけど、まぁいいか。

 安心してよ国王のおっさん。他のハーレムメンバーは問題にならないように平民から選ぶから。そうだな、奴隷制度があるなら奴隷ハーレムもいいな。


 これから勇者である僕を国民に発表して、他の魔王討伐メンバーと顔合わせするらしい。魔王討伐メンバーか。可愛い子がいるといいなぁ。


 そして顔合わせの日。僕は運命の出会いと最悪の出会いをすることになる。



















◇◆◇◆◇◆◇



 惚れた。

 一瞬だった。

 即落ちだった。


「ねぇ君、可愛いね。彼氏とか居るの?」


 気付いたら口説き始めていた。

 日本ではまずお目にかかれないような美しい銀髪。輝く深紅の瞳。透けるような白い肌。少し大人しそうな顔をした絶世の美少女に僕は完全に惚れてしまった。


 聖女も可愛かったけど最早彼女は目に入らないほど賢者の少女『ミリア』に夢中になっていた。既に婚約者が居るようだが関係ない。どうせ相手は平民なのだし婚約破棄したところで全く問題は無いだろう。口約束ではなく教会に婚約したことを伝えてあると言っていたが、多分教会は僕の味方をしてくれるから問題ない。僕と結婚しようミリアちゃん。僕と一つになろう(もちろん二つの意味で。ムフフ、僕って助平だなぁ)。


 このまま口説き落としてゴールインだ。そう思っていた矢先、僕は最悪の出会いをすることになってしまった。

 そんなことなど知る由もなく口説き続ける僕にそれはやってきた。


「へぇ、でも僕の方がきっと君の事を幸せに出来るよ。君、田舎の農村出身なんでしょ?相手も農民なんだってね。婚約だって口約束程度の軽いものでしょ?僕は魔王を倒した後にそれなりの地位も約束されてるし、きっと今の婚約者と結婚するよりもずっと贅沢な暮らしが出来るよ」


「私、贅沢な暮らしとか興味ないので。婚約についてもちゃんと教会に報告してますし。あとこの場に彼、居ますよ?」


「あぁ、もしかしてあの『聖戦士』とか言う一番弱そうな"ッッ!?」

「その弱そうな聖戦士のアイルだけど?僕の婚約者を僕の目の前で口説こうなんていい度胸だね」


 それは死だった。濃厚な死の香り。お花畑じみていた僕の思考は一瞬にして吹き飛ばされた。

 背中に突きつけられた右手。つい最近魔法が使えるようになったばかりの僕にだってわかる。アレが僕に触れたら僕は死ぬ。確実に死ぬ。

 何が勇者だよ。勇者要らないじゃないか。それともこんな化け物でも魔王は倒せないのかよ。


「き、きき、君は?」


「だから、聖戦士の、アイル、だよ。わかったら二度と変な気を起こすな、いいね?」


「ッッ………!」


 恐ろしい、彼女の婚約者。

 呆然としたままの僕を彼は適当に放り投げるとさっさとミリアちゃんの方に歩いていった。

 そうして何か話始めると二人の間には桃色の空気が漂い始め………おい、おいおいおい何してるんだ!?

 二人は互いの顔を見つめあい、幸せそうに微笑むと互いにゆっくりと顔を近付けて……………やめ、やめるんだ。それ以上はいけない。僕のミリアちゃんに何をするんだ。いやまだ僕のじゃないけれど、駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ























「……………はっ!」


「おや。勇者様、目が覚めましたか」


「………剣聖」


 目が覚めると知らない部屋に僕は居た。どうやらベッドに寝かされていたらしい。

 あと、剣聖が居た。


 そうだ、ミリアちゃんは?あの平民のクソ婚約者に脅されて僕は彼女に近付けなくなって、それで、どうしたんだっけ?


「剣聖…………一つ質問する」


「はい、なんでしょうか?」


「ミリアちゃんは今どうしてる?」


「ああ、ミリア嬢でしたらアイル殿と二人で会食を楽しまれた後に城下町で出店などを楽しまれました。そしてその後に最初にラのつくホテルに向かわれたようです。まぁ、二人とも元々は何もない村の住人でしたし、婚姻前でもそれぐらいはあるでしょう」

「クソがあああああああああ!リア充爆発しろぉぉぉぉぉぉ!」


「そして、節操なしの変態といえど流石に哀れに思った私が勇者殿の介抱についた次第です」


「クソがああああああああああああああああああ!!」


「諦められた方が宜しいかと」


「クソがああああああああああああ!!」


「…………はぁ」


「クソが………くそ、が……………」


 ミリアちゃんが非処女だったことがショックでならなかった。いや、今日まで処女だったかもしれないけど今日、非処女になった。いやもう僕何言ってるんだ。ああ、涙が止まらない。今頃ミリアちゃんはあのクソ婚約者と●●●●(ピーピー)●●●●(ピーピー)●●●●●●(ピロリロピロリロ)♪してるんだろう。いやマジで僕何言ってるんだ。意味不明だよもう。


「う、ううう…………クソが」


「ミリア嬢は他人の婚約者でしょうが………」


 泣き崩れる僕。僕の召喚の仲介をした女神が僕の頭に『処女厨の童貞きっしょwww』と直接話し掛けてきて笑いやがった。ふざけんな、全世界の童貞の皆様に謝れ。


 僕は、その夜涙が枯れるまで泣いた。



勇者「何故だ。解せぬ」


作者「何言ってんだ。勇者が村人に勝てるわけ無いだろ」


勇者「…………………」





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