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バニシングセブン  作者: カサ
12/12

前夜Ⅱ

首都高速神奈川1号横羽線 1960年代開通

現在でも平日は7万台程交通量があるとされる


二車線のこの道を、青と赤が縫うように駆け抜ける

一方は響き渡り、一方は轟くロータリーサウンド

200km/hを越えた、常軌逸した超高速チェイス

地を這い、走る、駆ける戦闘機

回転が回転を生み、そして転していく


結花にとっては、ここまで闘志を燃やして走るというのは始めてであった

血が燃える

常識外の速度で駆ける視界は歪んで見え、Gで体中の血が巡るか・・・

思考が冴え、興奮状態が続く

スピードは麻薬、一度味わえば戻れない

本能に逆らえない


互いに数メートルしか離れていない

わかっている、ここで万が一があれば命がないまともな人間では考えられない行動をしていると

背徳感はある・・・だが

その領域で駆けるからこそ、見える世界


これをわかる仲間がいる、駆け戦う車が今まさにここにいる


平和島~昭和島JCT

終わりは呆気ないものだった、動きが怪しくふらついた前方のワゴン車

「これは、迂闊に近づいてはいけない」そう直感した結花と夢子

ペースを徐々に落としていく、ワゴン車に追いつくとパスしていく

お互いこれ以上続ける気はない


横羽線 大師PA 2時50分

料金所を過ぎ、左タイトターンで入る2台のFD


「ふふ、考えることが同じってこの場所でそういう人に遭うなんて私は始めてね」


嬉しそうに語る夢子


「あれ、スマホかなにか触ってふらついた動きなんでしょうね上手く抜けなくもなかったですが・・・」

「トラブルを起こす危険も否めない、驚いてへんに事故を起こされても目覚めが悪いわ」


暴走行為をしているが、他人を巻き込む訳にはいかない。黒川の教えだ


「いいセンスしてるわ、ドライビングテク、一般車をパスする流れ・・・間違いなくそのへんの環状族レベルでも上のクラスに位置するわ・・・ただ・・・」


少し落胆したような感じで夢子は続けて言う


「まだ、優しすぎる。そう、あなたのここでの走りは優しすぎる。」

「・・・優しすぎる・・・ですか?」


少し意地悪な表情をし夢子は続ける


「ええ、相手を陥れたり、引っ掛けたりするそういう行為を避けて、一般車を利用しないクリーンな走り。ただ戦うという選択から、あなたは逃げている。」

「戦う・・・」

「スーパーGTというツーリングレースは知ってるかしら?あれは性能の違う300PSクラス、500PSクラスの混走で行われるレース、環状線における状況ってそれに似たようなものじゃないかしら?一般車を巻き込むとは言わないけど、利用し相手を陥れる、先の見えない読めないコーナーで後ろからインについて壁際に追い込む、そういう貪欲でラインの潰し合い、それが戦い、あなたと私の間で行われた行為はあくまで走りに過ぎないわ」


戦い・・・まるで無法者のやり方だ・・いや、今更ながら何を思ってるのか、既に無法者なのに

だが共感できる・・・本気を出すというのはそういうことでもあると・・・勝ちたいという望みは綺麗事でもない

「命を賭け、一生、全てを捨てる覚悟で走れ」

黒川さんに言われたことを思い出す・・・公道で暴走行為をする以上まともな覚悟で走れない

今日か明日か・・・いつ終わるかわからない限りあるこの走りの行為を・・・それを全身全霊で応えなければただ無作為すぎる・・・


「・・・心のどこかでは、そう思ってた感じね?」


夢子は結花に問う


「いや・・・まだわかりません。ただ、もしかしたらそれを望んでる人がいるんだとしたら・・・」


BRZの姿を思い出す、戦いを望むのであれば・・・


「戦う行為に迷いがあるなら、そのFDは応えない、乗りこなすことができなくなる」

「・・・そう見えてたんですね・・・」


言葉が突き刺さる、そう未だ変化したFDに順応出来てない自分がいた。

先程まで走りは、夢子のFDに引っ張られ、押されて走れている、勢いまかせに過ぎなかった

単独ならあんなテンションが続かない


「私のFDとそのFDは同じよ、同じ想い、同じ願いで作られた戦闘機。」

「・・・バニシング・・ロータリー・・・」


ふと、以前聞いた話を思い出す。曰く付きのチューンドーカー・・・


夢子は自分のFDの運転席のドアを空ける


「さて、今日はここまでにしましょう・・・次に会う時には、迷いのない走りを見せて頂戴」


ウインクをして、轟くサウンドを響かせながら去っていく夢子

その音はかなりの距離を離れても響くほど


FDのボンネットに手をかける、熱い・・・触れないほどではないがFDの熱が伝わる

これまで、追いかけてくる車はいたが・・・戦うという状況にはならなかった、ただ振り切ってただけに過ぎない

だが、最近はどうだ?雑誌の記者、R35のきらら

同じ記者のBRZの影浦

チューナーの山岡のR32

そして今日のFD・・・

お互い見知った顔、だが馴れ合うというものじゃない、もっと仲間・・・それも違う、言うなら好敵手と呼ぶべきか・・・悪くない響きだ、走り合うだけじゃそう呼べない関係、戦うという行為を望む相手・・・このイラついた感覚


ああそうか、求めていたのは走りではないんだ・・・私はこのFDで首都高ここで戦いを望んでいたんだ・・・この世の地獄に落ちようとも、この命を賭けて走る


結花の表情に笑いがこみあげる・・・


前夜、月夜が照らす空中庭園、迷いを捨て、一人の走りの修羅がここに・・・

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