⑦ 話だってする
レド・オーが自身の仕事がさっぱり進まないと感じ始めたのは、実は当初からである。
国内では『黒』と呼ばれているシルフェニアの飛空艦、ブラックテイルⅡ。
度重なる取り調べの中で、オヌ帝国を強襲し、あっさりと拿捕されたその飛空艦の名前くらいは知る事が出来ていた。
それ以外にも、来訪の目的。シルフェニア側の姿勢、状況、ブラックテイルⅡ内の上下関係等々、大凡は把握出来たとは思う。
それを資料として纏めれば、一定の成果にもなるだろうとレドは考えていた。しかし、それは進展と呼べない。レドは印象として、そんな感情をずっと抱え続けていた。
(このままでは駄目だ。思わぬところで足を掬われる可能性がある)
自室から窓の外、幾つもの家々が立ち並ぶ街並を見つめながら、レドは考える。
ここはオヌ帝国の首都。一所に集まる事を好むオヌ帝国の国民故に、都市は高層かつ家々の密度も高い街並となっているその光景は、まさにレドにとって守るべき故地だとも言えた。
(ブラックテイルⅡの船員達が、あのディンスレイ・オルド・クラレイスという艦長が、何を考えているか。それを見定めなければ、この街は危機に陥る。それが今だ)
そう考えるからこそ、レドは自身が属する組織、外交情勢処理部の仕事を他へと引き継いでいなかった。
本来、外交情勢処理部はその言葉通り、オヌ帝国にとっての外交情勢に関する情報を処理し、評価する部署だ。
オヌ帝国は他国との関係性を、極力、相手からも隠すという方法で交流を進める方針を持っている。
その方針上、他国への接触は公式のものではなく潜入や観測から入る事が多く、オヌ帝国という名前すら知らない国と、知らないままに交流を続けている場合だってある。
だからこそと言えば良いのか、オヌ帝国にはその手の慎重で迂遠な外交の実行組織が複数あり、レドの外交情勢処理部もその一つと言えた。
(もっとも、うちは最近、かなり特殊な立場になっている。こうやってブラックテイルⅡの相手をしているというのも、本来の仕事では無い。しかしそれが転がり込んでくるくらいの立ち位置にはなってしまっている)
これは幸運か、必然か、それとも何らかの作為か。
どれにも結論を出せないまま、レドは自室を出た。
レドが暮らしているのは主に軍人が住まう宿舎であり、デスクワークが多い外交情勢処理部の庁舎は徒歩圏内であった。
現在、ブラックテイルⅡの船員達を捕えているのは軍事施設内であるが、やはりそこからも近く、私生活に支障が無い日々を送る事が出来ている。
(正直、鈍りそうな怖さがあったが、ブラックテイルⅡの連中とのやり取りで、その懸念は無くなったな)
代わりに、気苦労と重い責任が肩に伸し掛かった。
自分から背負い込んでいる部分もあるから世話も無いが。
「課長、おはようございます」
と、考え事をしながら仕事現場まで歩いていると、部下の秘書官に話し掛けられた。
何時の間にか庁舎近くまでやってきていたため、ここで顔を合わせるのも偶然とは言えないだろう。
向こうにしてもそういう心持ちだったのか、さっそく仕事の話を始めて来た。
「本日も、例の船員達を取り調べるつもりなのですか?」
不安そうに話し掛けて来るその秘書官、イーバ・ドーというレドより年が下の女性であるが、どうにもレドが現在の仕事を続ける事に反対であるらしかった。
「そもそもがうちに回された仕事だ。本腰を入れ続ける事に文句を言われても困る」
「シルフェニア襲来による混乱は一定、落ち着いて来た頃でしょう? 他の組織からも、うちの部署では荷が重いだろうとの話が来ていますからその……」
「その認識が問題だ」
「それはどういう?」
分からないと言った様子で、素直に聞き返して来るイーバ。恐らく、レド以外の他者に関してもこの様な感情を抱いているはずだ。だからこそ、彼女はレドに忠告しに来た。しかし、やはりそこが問題なのだ。
「シルフェニアの襲来と表現しているのだろう? 君も、君にその手の話しを持って来ている輩は」
レドはイーバを睨んだ。彼女の後ろには、彼女が属する外交情報処理部以外の意図がある。彼女の発言は彼女だけのものでは無いという事だ。
オヌ帝国は外交がそうであるのと同様に、極力、他者について知る事を避ける。家族等の身内となれば話は別であるが、組織同士の相互関係、組織内の上下関係と言った部分でも秘密主義を通す事が多い。
昨今では実務的な部分の情報は共有しようという風潮が出て来ており、国力を増した一因ともなっているが、それでも、組織間でお互いの内情について深く踏み込まないという風潮は残ったままだ。
ただし、表向きには。
「わ、私への指示は……」
「相手の事は言わんでも良い。幾つか予想は付いている。だから逆に俺から言付けを頼む。今は俺の方が良く知っている。今回のものは襲来ではない。その認識を改めるまで、迂闊に手を出すと痛い目に遭うぞとな」
「課長はまだ、危機的な状況にはないと考えているのですか?」
「いいや逆だ。飛び切りに危険な状況が近づいていると考えている。だからこそ、早く進められる事は進めておくべきだ。くだらん組織間の諍いに発展させていれば我々は……負けるぞ。シルフェニアに」
「……了解しました。その様に伝えておきます」
と、本来存在しないはずの組織間の横の繋がりは、この様に出来上がっている。
組織を構成する個人個人が、別組織と結びつく身内と知識のやり取りをしているという事だ。
この場合の身内というのも、実際の血の繋がり以外に、離れた親戚や幼い頃からの友人知人、ただ地元が近いというだけの繋がりである場合も多い。
公的な組織でも無いというのに、その繋がりが社会を、引いてはオヌ帝国そのものを動かす事もあった。
誰しもがそれを知りながら、誰が誰と繋がっているかは不確かなまま。それで成り立つ社会をオヌ帝国は受け入れていた。それが国を強くしているという実感もあるのだ。
レドにとってその裏向きとも言える繋がりというのは―――
「それで、本日はまた例の船医に?」
レド自身の思考が深まるより前に、イーバが話をこれからの仕事に戻して来る。憂鬱な仕事の話だ。
「ああ。始めは調子を狂わされたが、彼女がもっとも付け入る隙がありそうでな。もう少しで崩せる……そう考えているが……」
だが、実際のところは不安がある。
目の前で拘束した状態の、線が細く、きょどきょどとした女。名前はアンスィ・アロトナと言う事は既に知っているが、それ以上を知るとなると、なかなかに難題と思える姿を、今日も見せて来た。
「な、なんだか、呼び出される頻度。わ、私が多くありませんか……? あ、あのあの、確かに口は堅い方ではありませんし、そ、その、心が強くもありませんから、プレッシャーを掛け得なのではと、こ、個人的に思うところはありますけどぉ……」
「実際に心が弱い人間は、わざわざ心が強く無いなどと言わん」
「そ、その理屈だと、世の中みんな、心が強くなっちゃいますよぉ……」
実際、弱くあって欲しいと思うのであるが、取り調べを続けていても、彼女はずっとこの調子だ。
こちらの圧に耐えているのでは無く、すぐに縮こまり、おどおどとし始める。確かにそこだけを見る限りは弱い人間に見えるが……。
「そ、その、ずっと言っている通り、聞きたい事があれば聞いていただければ……こちらは答えますので……そ、そちらが良く良く、か、考えていただければと……」
これだ。弱い人間とやらは、自分が拘留されている状況で、自分が出来る範囲と相手に求める領域というのを、冷静に判断などしない。
この女はこんな様子でありながら、それでも自身がどう振る舞い、相手と何を話すべきかの判断が付いている。少なくともレドにはそう見えていた。
「こちらとて無為に呼び出しているわけでは無い。それは分かっているはずだ。先日の件もあるしな」
「せ、先日……あ、あれ。やっぱり何か、無礼な事……だったのでしょうか……?」
アンスィに尋ねられるも、レドは一瞬目を逸らす事で話も逸らした。
相手のこの言葉で、どうやらオヌ帝国に関する知識を、彼らは深く知らない事が分かる。それが知れただけ上等だろう。
女性側が自ら名乗り、相手男性にその名前を聞くという行為が、女性から行う求婚行為であるなど、やはり知らない様子だ。
(そうと分かれば、取り乱す事は無い。この女はとんだ尻軽なのかと取り乱したものだが、単なる無知だ)
なのでやはり、今日、彼女を尋問相手に選んで正解である。そのはずだ。少なくとも例の艦長を相手にするよりは……。
「今日の話は、お前達の目的についてだ」
「そ、それは前回までと一緒……なのでは……?」
「いいや、お前達が乗って来たブラックテイルⅡという飛空艦の目的ではない。お前達の本国、シルフェニアについてだ」
「え、ええっと……わ、私、それ程、え、偉い人に見えますかぁ……?」
やはり戸惑った様な表情を浮かべるアンスィであるが、レドは惑わされない。この女は何を言ったところでこういう表情を浮かべる。一種のポーカーフェイスというやつなのだろう。
まさかどんな話題でも苦手な話題として脳内で処理している、奇特な人間というわけではあるまい。きっと。
「ブラックテイルⅡに乗ったお前達が、我々に拿捕される直前までずっと、シルフェニア本国と通信を行っていた事は既に判明している。我々の国の位置を伝えていた事もな。つまり、この後にアクションがあるはずだ。侵攻か? それとも大規模な遠征か? そのどれかを今日中に判断させて貰う」
「ま、まあ……そのどれかを計画……? はしてるかもしれませんけどぉ……わ、私に言われても困ります……」
「何故だ」
「い、医者で、が、学者だからですっ。あのあの、その手の話であれば、う、うちの副長か……か、艦長などをやはり尋問するべきでは……」
「なんだ、自分の上司を売るつもりなのか君は」
「そ、それはぁ……せ、船医に高望みしないで欲しいって事で……」
こういう部分も妙な奴らだと思う。他の船員からの話で、アンスィという女が実際に船医であり、生物だの地質などに詳しい学者であり、もっと言うなら、ブラックテイルⅡの幹部の一人である事は分かっている。
そういう立場の人間は、もっとそのトップ、それこそ艦長を敬うものではないのか。
「分からん。シルフェニアはそういう文化なのか? 軍人だというのであれば、上下関係には厳しく、さらに強固であるはずだ。だが、少なくとも君からはそれを感じられん」
「わ、私は、ぐ、軍人ではありませんのでぇ……」
「らしいな。だが、それも意外だ。オヌ帝国とシルフェニアは戦争中だ。そんな中で、単艦、敵国を捜索するというのに、民間人を何故参加させている。そこに……シルフェニアの狙いが関わっている……はずだ」
断言は出来ない。シルフェニアに関して、オヌ帝国の人間が数名潜伏し、本国に情報を提供しているが、距離の問題と、国の広大さのせいで、どこまで掴み切れているか分かったものではないのだ。
特にこのブラックテイルⅡの船員達は、常識的に、という言葉が通用しない様な気がしている。他国の人間など、大半がそうかもしれないが……。
(いや、オヌ帝国の人間足るもの、相手への知識が不足している事に物怖じするべきではないだろう)
生まれた頃から、自らだけが持つ知識や知恵というのを、ひたすら蓄えて行く様に教えられて来たのだ。それはつまり、年を経るにつれ、周囲の他者について、知らない事実が増えていくという事
誰しもが同じ教えの中で、自らだけの秘密を増やしていくのだから。
だが、それを受け入れる事で、人間関係とは構築していくものだ。そういう矜持があるからこそ、レドはアンスィという女の言葉に動揺などしない。
「わ、私みたいなのが、今回の任務に参加している事については……そ、その、わ、私自身謎ではありますが……」
「当人すら分からないというのか!?」
さっそく動揺してしまった。これだからこいつらは厄介だ。それで居て、やはりなんでも無い事を語るかの様にアンスィは話を続けて来る。
「い、いえ、能力の適正で選ばれた……のだとは思いますけど……そ、その……どういう効果を期待しているかは……ひ、非常に複雑な話になりそうと言いますか……わ、私には難しくて分かりません……」
「では、誰が分かる」
「や、やはり艦長かと……」
「またそれか」
「ぎゃ、逆に尋ねたいのですが……ふ、普通、や、やはり、艦長と話すべきでは……? それが一番早いと……お、思いますけど……」
「……」
やはり侮れない。何せレドは図星を突かれた様な気持ちになったからだ。
いや、これは相手が出来る人間というよりは……。
「あの艦長は……苦手だ」
「た、確かに、一筋縄では行きませんが……け、けどけど、親しみのあるところもあるんですよぉ? そ、その……えっと……あっ、か、艦内で誕生日を迎えた時、か、艦長、布に入った砂をプレゼントしてきて、色々悩んだ末にそれになったとか言って……あれ、本当になんだったんでしょう……? どういう意図の元に……す、砂を……?」
「俺が知るか! まったく、意味の分からなさについてもやはり似ているかもしれん」
「似ている……?」
「ぬ……いや……」
どう誤魔化したものかと頭を悩ます。
余計な事を言ってしまった。その自覚がある。
何にいったい似ているのか。それは当たり前に疑問を持たれる言葉だったろう。実際、アンスィは聞き返して来た。
ならば話すしかない。
だって、他者を知ろうとする事が侮辱である以上、他者に気付かれる様な迂闊な事をした側は、相手が本当に気付く前に、自らで話さなければならないからだ。でなければ無礼であるし、自身の沽券にも関わって来る。
「兄だ」
「は、はい?」
「あの男は……俺の兄に似ている。掴みどころが無く、どこか泰然としていながら、こちらが気付いていない、こちらの弱点を常に狙っている様な、そういうところが似ている」
「えっ……え?」
相手が困惑し始めた。なかなか良い反応だ。何を言っているかさっぱり分からない。そういう顔をされるのは好ましい。だからその点も説明しておこうか。
「恥を掻かない様にするためだ。これでさっき、似ているなどと漏らしてしまった事の理由は説明した。それ以上は尋ねない事だ。そこに関しては、君の責任になる」
「あ、ああ……そういう?」
文化の違いはあるのだろうが、アンスィの方はとりあえず納得した様子。
そうだ。無用な争いはレドも望むところではない。オヌ帝国の人間は隠れ潜む。正面からの殴り合いなど、低俗な文化だとする意見すらあった。
「言っておくが、オヌ帝国は惰弱な国などでは無い。むしろ尚武の国だ。かつては国内において覇を競い合った歴史がある。それを繰り返す中で、互いの集団の寿命を縮める結果にすらなかった」
話す理由も無く、また国の知識を伝えるなどやはり問題しか無いとレド自身思うが、ここは伝えるだけの価値があるだろうとも考え、アンスィに伝えている。
それにこれは知られたり乞われたりしたからで無く、レド自身から伝えているから、まだマシだった。
「自らの情報を秘匿するというのは……慎重さを生む。自分にも、他者にもだ。その慎重さがオヌ帝国に安定を生んだ。さらなる飛躍に繋がった。だが、武人としての誇りまで捨てたわけでは無い。我々が身を隠すのは、臆病であるからでは———
「わ、私、兄弟は居ません……い、妹とか、あ、姉とかもです」
「何?」
「か、家族は父と母が……ひ、一人ずつ。い、いえ、当たり前なんですけどね……? ただ、この手の話をすると、医者や学者をしているのは、ど、どちらかの両親の影響かって……尋ねられる事が多いです。け、けど、どっちも違うんですよ。は、母は花屋で、ち、父は配送業をしています」
「だから何を言っている……?」
これだからこいつらの尋問は厄介だ。突然に訳の分からない事を話し始めるし、行動だってする。こういうのが文化の違いという奴か。
いや、だが、それに対応する事こそ、今の自分の仕事だ。シルフェニアの言葉を憶えたのも、別にそれだけを評価して欲しかったわけでは無い。
それで何を成すかだ。認めさせるにはそうする他無い。
「理由を……理由を話せ。君の家族関係など聞いては居ないぞ」
「そ、その……自分から自分の事を話すのは……せ、セーフなんですよね? た、ただ、恥ずかしい事ではあると思うんです……な、なので、わ、私の家族関係も話をして……い、イーブンという事で」
「イーブンだとぉ……!」
「ひ、ひぃっ!」
語気に力が籠ったため、途端にアンスィに怯えられる。
だが、仕方ない事ではあるはずだ。この様にレドが取り調べを行っている以上、対等な関係など、互いに望むべきでは無い。
その理由が、シルフェニアの方にはあるはずだ。
「お前達が……戦いを始めたんだろう! 少なくとも、その覚悟は持つべきだ。対等になりましょうなど今さらの話だ。違うか?」
「え……?」
意外そうな表情を向けられる。
だが、シルフェニアから遥々オヌ帝国まで単艦でやってきた飛空艦の乗組員が、それを理解していないはずが無い。
「お前達は、お前達が、シルフェニアからオヌ帝国まで踏破出来る技術を発展させようとしていた。いや、それを既に手に入れていた事は、現状がそれを証明している。それだけなら単なる技術の発展でしか無いだろう。だが、その技術を使い、我々の領域を探ろうとした、踏み入れようとした。それがすべての発端だ」
「そ、それは、ち、違いますっ。わ、私達は……本国が謎の飛空艦からの侵攻を受けたから、そ、それを探るために―――
「自衛のためだと言うのか? なら、お前達が乗っている飛空艦は何だ」
「あ、あれは……し、シルフェニアが技術検証のために作り出した、じ、実験艦が元になった物で……」
「その実験艦が……たかだか実験艦が、シルフェニアからオヌ帝国までやってくる、その旅程に耐えうるものだと、本気で思っているのか? 今、ここに君が、お前達が居る事が、ただそれだけの艦では無い事を物語っている。違うか?」
「う……うう……」
些か強弁が過ぎたか。アンスィは黙り込んでしまった。
本当に、自分達がオヌ帝国と戦いを始めたという自覚が無いのだろうか。
確かに、これまでの物言いを考えれば、秘匿されていたという可能性も考えるべきかもしれない。
イーブンに、対等にとこの女は言ったが、戦いを始めた以上、その天秤が水平になる事など決して無いというのに。
「もし、本当に戦いの裏側というものを知らないというのなら、こうやって話を聞き続けても意味は無いだろうな。だが、それでも良く考えるべきだ。君がシルフェニアの人間だというのなら、無意味な事では無いはず―――
「や、やっぱり、話をするべき……だと思います」
アンスィは、委縮して黙り込んでいたわけでは無かったらしい。
いや、むしろ何かを決意した様な表情すら浮かべ、レドを見据えて来る。
「いったい、何を話せと? これから」
「わ、私では無く……艦長、でぃ、ディンスレイ・オルド・クラレイスとです。た、多分、あ、あの人でしか分からない事が……シルフェニアと……お、オヌ帝国でも起こっている。あ、あなたは、それを……するべきだと思います」
今度は、レドの方が困惑する番であった。
アンスィの言葉に威圧されたわけでは無い。ただ、アンスィの表情が、ディンスレイという男に、奇妙な信頼を抱いている事を伝えて来ていたからだ。
(なんだと言うんだ、その根本は……)
その謎を解くためには、アンスィの言う通り、ディンスレイ・オルド・クラレイスと話をする必要がありそうだった。




