第九十二話 ぬか漬けと『かてもの』
ご馳走以外を作ります。
ウサギの糞料理をやろうかと思ったが、鑑定した結果駄目だったよ。
あ、糞料理と言っても小腸にある消化途中の植物を利用するものだぞ。決して、”ス”で始まる趣味は無いからね!
糞料理は諦め、ヌカがあったことを思い出したので、ぬか床を作って、ぬか漬けをやってみた。ぬか床の手入れもきちんと教えたぞ。たくあんも作ってみた。たくあんは、砂糖を使わない昔ながらの物だ。
根田 「たくあんは大根を干すことで甘みが出ます。砂糖を使う方法もありますが、入手しやすい物で作るのが良いでしょう。ぬか漬けは、ぬか床を作って野菜を漬ければ出来るので、良いと思います。ぬか床の材料も米ぬか、塩、昆布(俺が海で採ったやつだ。魔族領の海にも生えているので、食用出来ることは教えてある。干してから使うのもね。)、水ですから。ぬか床の手入れは必要ですけど。ぬか床に異臭がした場合は、使えなくなりますので、気を付けてください。あ、注意すべき臭いを再現できるので、嗅いでもらいましょう。」
そう言って、藻埜随喜に異臭を再現させる。魔人も不可視モードが使えるから。
根田 「先ずは、この臭いからです。アンモニア臭と呼ばれるものです。」
料理長 「汗臭さと尿の混ざったような臭いですね。」
根田 「次は、この臭いです。アルコール臭とシンナー臭と呼ばれるものです。」
料理長 「両方とも刺激がある臭いですね。アルコール臭と言うのは酒精に似てますね。」
根田 「同じように発酵したものです。ぬか床は酒にはなりませんが。」
料理長 「確かに酒も発酵させて作りますね。」
根田 「この臭いも問題になります。接着剤臭と呼ばれるものです。」
料理長 「独特の臭いですね。」
根田 「これは、過剰に発酵したのと雑菌の繁殖による腐敗によるものです。かき混ぜが足りなかったり、塩分不足、水分が多くなることで雑菌が繁殖するのが原因です。」
料理長 「塩漬けの漬物はありますが、ぬか漬けは、違った味わいで美味しいですので、ぬか床が駄目にならないよう気を付けます。」
ぬか漬けは、キュウリ、大根、白菜、キャベツ、カブ、ナス、人参、ピーマン、ゴボウと色々漬けて試食してもらった。
たくあんも美味いけど、米ぬかが必要だから、本格的に作るのは、エルフ国や世界樹の森から米が入手できるようになってからになるけど。まあ、もち米のぬかがあるから、何とかなるだろう。この辺は地上の者で調整してくれ。保存食だから、たくあん自体を交易しても良いんだし。
白菜やカブの浅漬けも教えて試食してもらった。唐辛子もあるからさ。さっぱりして美味しいって。
そうそう、こちらの世界の漬物は、塩とキャベツで作るザワークラウトだ。ハーブはあるから、香りづけでローリエなんかは使うけどね。
話は変わるが、おからはクッキーにすることにした。砂糖の代わりに水あめを使うのと蜂蜜を使うのも作ったぞ。
根田 「豆腐を作った後のおからも食べれますので、お菓子にしてみましょう。材料は、おから、胡麻、砂糖、オリーブオイルです。」
そう言って、生地を作る。
根田 「最初に生地を作ります。おから、胡麻、砂糖を良く混ぜます。混ざったら、オリーブオイルを加えて、さらに混ぜます。」
根田 「生地を麺棒で伸ばして、切り分けます。それをオーブンで30分ほど焼きます。オーブンは、180度で予熱してから使ってください。」
これも出すことになった。
普通の料理として、ステーキなども出すが、鴨南蛮蕎麦も出すことにした。蕎麦も知られていない植物だったよ。玉樹さんに確認したら、創ってはあるそうだが、発見されていないそうだ。『森の中に、群生地を設定してはあるんですけどね。』って苦笑していたよ。
うどんも教えたよ。うどんも蕎麦も温かい物を出すけど、夏向きのもり蕎麦とかも教えてある。うどんと蕎麦は手打ちを教えたよ。麺切包丁などの道具も授けたよ。製麺機とミンサーは完成していたので、火の大神殿から受け取って、他の神殿に渡してある。魔王城には、俺の分で作って貰ったのをあげた。俺は自分で創れるしね。生地を伸ばすローラーがあるパスタマシンみたいなのは、地上の者に考えてもらうつもりだから、授けないよ。
麺料理を食べるのが、初めての者が多かったが、美味しいって喜んでくれたよ。天ぷらやわかめ、卵(新鮮な物を使うように注意したぞ!魔族も分かってたけどね。衛生まな板に乗せれば大丈夫だけどさ。あ、そう言えば、回復魔法の浄化を掛けたら、大丈夫か確認したら殺菌されたよ。後、麒麟が回復魔法の”虫下し”を使えばノミやダニが死ぬって言ってたのを思い出したので、肉に掛けたんだ。そうしたら寄生虫が死んで肉から出てきたよ。皆に白い目で見られた。そうそう山羊と馬の魔物は、寄生虫がいない。鑑定したら、寄せ付けない性質があった。これは、教えてある。山羊刺しと馬刺しも試食してもらったよ。ビクビクしてたけど、俺が食ったの見て、皆食べたら美味いってさ。まあ、肉を刺身で食うのは、山羊と馬だけにした方が良いね。山羊刺しは、皮は付けていないけど、玉は食って貰ったぞ。ポン酢で食ったけど白子みたいで美味かった。臭くないし。寄生虫の除去は、魔法でやると白い目で見られるから、魚介類は、とっくり草の煎じた汁を掛けたら、寄生虫が魔素分解されたよ。一瞬光るから焦ったけど。この使い方は、想定してなかったものだけど、料理人たちが喜んでいたよ。料理の幅が広がるって。刺身も美味いってさ。話がそれてしまった。)、肉などを入れて食べるのもあるって説明して、試食してもらった。皆美味しいって。
ゴールドボアでベーコンを作って、カルボナーラも作ってみたり、生姜焼きや唐揚げも教えたよ。デザートは、羊羹、大福、葛餅(黒蜜の代わりに黒蜜蟻の蟲蜜を使う。一応黒糖を使う黒蜜の作り方も教えたよ。)、カステラ、チーズケーキ、プリン、生姜牛乳プリンを作ったよ。黒宮さんにも食べて貰ったけど、女神様とエレー様、大精霊達が来たので、一緒に食べたよ。ちなみにプリンは、牛乳、砂糖、卵で作ったよ。生姜牛乳プリンは、牛乳、砂糖、生姜搾り汁が材料だ。
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普通の料理は、読者の皆さんも説明されてもつまらないだろう。グルメ系小説は沢山あるし。
今回のお祝いでは、知識を広めて欲しいので、普通のご馳走も出すが、出すのは主に家庭料理だ。
俺が今回の料理で伝えたいのは、災害時などに役立てて欲しい知識だ。
この世界では、魔物の脅威もあるが、自然災害も結構ある。
災害時に統治者が知識を授け、食料を無駄なく利用し、生きる力にして欲しい。丁度、米沢藩重臣・莅戸 善政が、執筆した飢饉救済の手引書、藩主・上杉 治憲(上杉 鷹山)の命によって刊行された、『かてもの』のように。
魔族に教えた料理の話をしよう。魔族には、上に書いたことを言ってある。役立てて欲しい料理は、ご馳走の後に出す予定だ。
根田 「皆さんも作っているかもしれませんが、ジャガイモの塩蒸しも出そうと思います。」
料理長 「根田様、ジャガイモの塩蒸しとは、どのような料理ですか?ジャガイモは煮て食べるのが一般的です。根田様が教えて下さった油で揚げるのも知られていますが。」
そうなのか。
根田 「煮るのに近いですが、水は煮る時より少ないです。まあ、やってみましょう。」
そう言って、材料を準備する。
根田 「ジャガイモの塩蒸しの材料は、ジャガイモ、塩、水です。今回は皮付きでやりますので、ジャガイモを良く洗って泥を落としてください。あ、芽は取ってくださいね。変色したのは使わないのは知っていますね?」
ジャガイモを洗ったら、鍋を用意する。
根田 「鍋に洗ったジャガイモ、塩、水を入れます。水はこの程度です。」
料理長 「煮る時に比べて、水が少ないですね。」
根田 「煮るのでは無くて、蒸すので。準備ができたら、鍋の蓋をして中火にかけます。暫くすると蓋がなるので、弱火にして、30分程度蒸します。」
魔法で処理して時短だ。
根田 「串を刺して、スッと入れば大丈夫です。固い場合は、弱火で再加熱します。時間は10分程度で良いでしょう。この辺は火の通り方で加減してください。」
ジャガイモの塩蒸しが完成した。試食してもらう。
根田 「新ジャガなら、味わいも一味違うと思います。これは、聖光国で収穫祭の時に購入したもので、時間停止してますので、新ジャガです。塩を少なめにしてますので、バターを乗せて食べてみてください。そのままでも美味しいですよ。」
料理長 「シンプルですが、美味しいですね。お客様で来る者たちも根田様の料理の意味を知れば、きっと感謝するでしょう。これなら携帯食にもなりますし。」
ジャガイモのガレット、タケノコのゆで方を教えた。ガレットは、ジャガイモ、塩、胡椒、オリーブオイル、バターのシンプルな物だ。タケノコは、エンゲーイでは食べない物だったよ。植物の成長が早いので、直ぐ竹になるからだそう。入手は難しいわけでは無いそうだけどね。
タケノコは、米ぬかで茹でてみたよ。
根田 「ガレットはどうですか?ベーコンやチーズを入れても良いのですが、シンプルな物にしました。タケノコも試食してみてください。」
料理長 「両方美味しいです。こちらでは、竹の芽と呼んでいますが、根田様たちは、タケノコと呼ぶのですね。初めて食べますが、歯ごたえも良く美味しいです。新しい食材が増えました。」
お偉いさんたちだから、どうしようかと思ったが、異臭対策の魔人”藻埜随喜”がいるから、これも教えることにする。
根田 「次は、大蒜の丸揚げです。私は臭い対策可能ですので、これも出しましょう。」
料理長 「大蒜の臭い程度なら、こちらの世界では気にしません。魔都は聖都同様下水が整備されてますが、臭いがきつい場所は多いですから。」
魔族領でもそうなのか。まあ、いろんな種族もいるし、その辺は見聞する時に教えて貰おう。
根田 「そうなのですか?作り方を説明しますね。材料は、大蒜、揚げ油、塩、胡椒です。」
材料を用意し、調理開始だ。
根田 「大蒜の外側の皮を剥きます。油に優しく置くように入れて揚げます。途中で上下を反対にして、全体がキツネ色になったら、油から出します。皮はパリパリになってますので、簡単に実が外れます。そのままでも美味しいですが、お好みで、塩、胡椒、醤油などで味付けして熱々を食べます。」
料理長 「これは、美味しいですね。酒に合いそうです。」
根田 「食べ過ぎには、注意してくださいね。大蒜ですから。」
大蒜を食べ過ぎると問題なのは、この世界でも知られているので大丈夫だ。今回は俺が、魔都全体を状態異常無効にするので、問題にはならないけどね。
次は、読者の皆さん、お待ちかね”如何物食い”の時間です。
え?待ってない?それは残念。
根田 「次は、骨髄料理を教えます。」
料理長 「根田様、骨髄料理とは何でしょうか?」
根田 「骨髄と言うのは、骨の中にあるこの部分です。これを調理して食べます。」
そう言って骨を割って見せる。人頭牛の骨髄を使う。人頭牛は地球の牛より大型だから、骨も太いので食いでがある。
料理長 「骨は出汁を取ったりする以外にも食べれるのですか?」
根田 「食べれますよ。」
料理長 「それは興味深いです。よろしくお願いします。」
骨髄は、フランスだとロス・ア・モアルとか言うんだっけ?まあ、それは良いや。
根田 「最初に骨を10cmの長さに切り、血抜きの為、冷水に2,3時間つけます。水は1度変えてください。オーブンを180度に温めておきます。天板に骨を並べ、20分ほど焼きます。骨を焼いている間にパンをトーストします。骨を取り出し、塩を少しかけて、中身をスプーンですくって、パンに付けて食べます。」
俺の授けたオーブンには、タイマーと温度計が付いているからな。クッキングシートは無いから、レタスなどで代用するけど、今回は使っていない。こちらの世界のパンは、固いタイプなので丁度いい。
根田 「脂っこいので、サラダや野菜と一緒に食べるのが良いと思います。」
そう言って、試食してもらう。
料理長 「これは良いですね。捨てていたような部分ですから、民に教えれば助けになります。石窯でも出来ますから。根田様が言われるように、脂が強いですが、美味しいです。肉体労働をしている者には、ピッタリです。」
料理人以外の魔族にも料理の意味を説明して、試食してもらった。
皆感激していた。
魔王さんが、『かてもの』の話を気に入って、新年のお祝いで、是非話してくれって言われたよ。
説教臭くて、嫌われるおっさんになりそうだけどね。
そうだ、アレも出すことにしよう。
『かてもの』は、山菜などが載っていますが、この作品では、根田が、エンゲーイで食材では無かったものや身近な食材の利用法を教えています。




