第四十四話 紙漉き
今回は真面目です。
短いです。
石焼き芋と天ぷらを教えた翌日、拝殿で祈りを受け取ってから、水の巫女さんに話しかけた。
根田 「お早うございます。水の巫女さん、少し時間宜しいですか?」
水の巫女 「お早うございます。根田様。何か御用ですか?」
根田 「実は、植物から紙を作る方法を授けようと思うのですが、水をたくさん使うので、水の大神殿があるサンサーイ公国で産業とするのが、良いと思いまして、水の巫女さんに声を掛けました。」
水の巫女 「そうだったのですね。確かに、私の故郷は、水源の泉もありますので、水を必要とする作業は、最適です。ですが、地上への介入は、よろしいのですか?」
根田 「それは大丈夫です。植物の繊維を利用するので、麻布や亜麻布と言ったものを作る技術の延長です。今回は技術を教えるだけで、紙の品質は高いものではありません。品質を高める努力は、地上の者に任せます。職人を育てる必要はありますよ。」
水の巫女 「わかりました。サンサーイ公国の技官を呼びますね。私も立ち会うので、予定を調整してもよろしいですか?」
根田 「勿論です。アカヤさんとトチバさんに協力してくれるよう頼んでおきます。予定が調整出来たら、教えてください。」
この後、アカヤさん達に頼んで、場所の確保などをして貰った。
水の巫女さんの予定が決まるまで、時間が空くので狩りに行ってきた。
ゲテモノは飽きたので、猪の魔物をいくつか狩ってきた。
毛を毟って、大量発生させたので、かなりの数確保してる。
これについては、後で紹介しよう。
何でも猪の魔物とか鹿の魔物は、どこの森にもいるそうだ。
猪の魔物は、魔石と牙と毛皮が素材だけど自分には必要ないので、冒険者ギルドに素材は売ってきた。
結構良い値段になった。魔石も質が良かったしね。
まあ、3級と2級だったからね。
2級のは、すごくデカいし。
3級のも獣の猪より大きいからね。
肉もあったら欲しいとか言ってたけど、これは、自分たちで食べるから!
そんな感じで、水の巫女さんの都合がついた日まで、色々狩ってみた。
コカトリスとかも獲ったぞ。
卵もあった。
見た目から魔物って、コカトリスが初めてじゃないかな?
まあ、鶏っぽいけどさ。
あ、魔物は何もなければ死なないんだけど、比率調整で比率がおかしくなった場合、少ないときは発生して、多い場合は空間から魔素を吸収できなくなって死ぬ。
コカトリスは結構狩られるので、卵でも増える。
後は、間違って狸の魔物も獲っちゃってさ。
これどうしよう。
すごく臭いんだけど。
毛は筆に使うぐらいだから、毛皮としては良いのだろうけど臭いがね。
狩猟をやる人曰く、肉は臭くて不味いって話だし、魔物とはいえ美味しいとは思えない!
そんな悩みを抱えつつ紙の作り方を教える日だ。
アカヤさんの確保してくれた、魔道具の研究をやってる建屋の部屋へ集合だ。
根田 「アカヤさん無理を言ってすみません。」
アカヤ 「いえいえ。植物から紙を作る技術は、私も興味がありますから。」
トチバ 「麻布などと同じで植物の繊維を利用するとの事ですが、植物は何を使うのですか?」
根田 「今日は安価にできる麦わらを使います。ただ、品質はあまり良くありません。技術としては同じですが、品質が良いものを作る場合は、楮、三椏、雁皮などを使います。」
トチバ 「聖光国では、余り生えていない植物ですね。サンサーイ公国には、結構あります。」
根田 「ええ。それと紙を作るのに水を必要とするので、サンサーイ公国向きなのですよ。」
サンサーイ公国の技官が、熱心にメモを取っている。
サンサーイ公国は聖光国の同盟国だ。
聖光国の北西にある。
大使に当たる人物とは、収穫祭で加護を授けたので面識がある。
今日は来てないけど。
まあ、技術関係の話だからね。
根田 「じゃあ説明しますね。原材料は今日は麦わらです。紙を作るのは、紙漉きというのですが、紙漉きの道具はこれです。金網を張った木枠とテグスで作った薄い生地を使います。この辺は、工夫してみてください。」
皆、興味深そうに道具を見ている。
漉き槽は、土魔法で石の入れ物を作ってある。
根田 「繊維を水に混ぜた紙の材料をこれに入れます。道具は実際に作業しながら説明しましょう。」
灰汁を用意する。
根田 「繊維をとるために今回は灰汁を利用します。これは、木灰に熱湯をかけて一晩置いたものです。これの上澄みが灰汁です。」
今回はわら半紙なので使わないけど”ネリ”も説明しておこう。
根田 「品質が高い薄い紙を作る場合は、”ネリ”という粘液状の物が必要になります。トロロアオイの根を叩いて水に浸しておくと”ネリ”として使えます。粘液が取れる植物なら別の物でも大丈夫です。これは、工夫してください。」
さて実際に作りますか。
根田 「麦わらを押切でこのぐらいの大きさに切ります。」
押切という藁などを切る道具は、この世界にもある。
根田 「次に灰汁で、先ほど切った麦わらを一時間ほど煮ます。煮た後の麦わらは柔らかくなります。今回は魔法で時間を短縮します。」
技官が驚いているな。
まあ、無属性魔法は、初めて見るだろうからね。
しかも時空魔法は神族しか使えないから。
根田 「そうしたら、十分な量の水で洗います。洗い終わったら水を切り、台の上で金づちで叩きます。これをハサミでこのぐらいの大きさに切ります。節は取り除いてください。これを漉き槽に水と入れて攪拌します。漉き枠を用意して均一になるように掬います。細かく攪拌したものを漉き枠に流し込む方法もあります。今回は、量が少ないので流し込んでみましょう。」
漉き枠にお玉で掬って均一に流し込んだ。
根田 「流し込んだら、そうっと木枠を外します。次にテグスで作った生地をのせて板をかぶせます。そうしたら金網ごとひっくり返します。次は、フキトールの木の葉で押さえて水分を取ります。金網を外して乾燥させます。今回は魔法で処理しますね。」
重石を掛けて薄くするとかは工夫してよ。
根田 「乾燥したらテグスの生地をそうっとはがします。これで出来上がりです。今回は質は気にせず作ったので、いろいろ工夫してみてください。」
出来たわら半紙を渡して確認して貰った。
アカヤ 「いろいろ工夫すれば十分使えそうですね。」
トチバ 「なるほど、植物の繊維を長いまま利用するのではなく、細かくして絡ませるのですね。植物をいろいろ試せば品質の高いものが作れそうです。水を結構使いますので、サンサーイ公国向きの技術ですね。」
技官 「ネタ様、有難うございます。早速、国へ技術を伝えて、色々試そうと思います。」
水の巫女 「根田様、有難うございました。水の大神殿へ伝えておきます。根田様は、私の故郷の恩人です!」
サンサーイ公国はこれと言った産業が無いそうだ。
魔族領と接しているので、魔族と人族の窓口であるのと水魔法の使い手が多いので、河を使った運送業が主な産業だ。
河には、水棲の魔物がいるが、水魔法の障壁を張ることで被害を防ぐことができる。
乾燥した土地向けに水の精霊石も輸出しているが、それほど多くは無い。
海に面した国向けで水魔法の障壁の魔道具を輸出しているが、大型の魔物には効果が無い。
ただ、この魔道具があるので、海などで漁ができる。
取柄は、水が豊富なので酒造りが盛んという位だ。
隣がドワーフ国なので、成り立っている感じだ。
人の活動域で唯一の果物が栽培できる国でもある。
ただし、糖度が上がらない土地柄の為だ。
この世界にも絵をかいたりする筆はあるから、紙が作れるようになれば文明が進むだろう。
トチバさんは植物研究の責任者だけあって理解が早いや。
日本にいた時の自分より、ずっと優秀だよ。
賢いって羨ましい。
でも賢くても見識さんは白い目で見られてるからなぁ。
『私を変な例えに出さないでください!』
見識さんから神託来たよ。
すいません。見識さん。
でも、この世界の知恵と知識の神様何だから、賢い例えは見識さんになっちゃうんだけどねぇ。
◇◆◇◆◇◆
その後、サンサーイ公国では、紙漉きの研究が行われ、質の高い紙が作られるようになった。
各国では、普段使いの紙としてわら半紙が作られている。
根田が万年青に戻り、神殿が神であることを発表後、サンサーイ公国では、根田は産業の神でもあるとされている。
勿論、笑顔を作るネタの神として広く知られ信仰されている。
根田はサンサーイ公国の民に『私はネタの神であって、産業の神では無いですよ。』と神託したのだが、サンサーイ公国では、紙作りの産業を伝えた神として感謝されている。
根田は産業の神は兼任していないが、紙漉きを授けたのは事実なので諦めている。
高品質な紙を利用して、春画のような物も作られているので、技術を授けない方が良かったかと根田は悩んでいる。
見識さんは大喜びだ。
女神様たちから白い目で見られてるけど。
喜んだのは、見識さんでした。




