第三十話 前掛けのおじさん
中華風サウンドを想像してお読みください。
冒険者ギルドで素材を売った後、街を見物した。
流石、人族の活動域の中央に位置する都市だ。いろんな種族がいて賑わっている。
人通りがあまりない通りの商店もあるが、何か高級そうだ。
気になったので聞いてみた。
根田 「光華さん、この辺は人通りが少ないですけど、『一見さんお断り』って感じなんですか?」
光華 「この辺りは、富裕層相手の店です。一見さんお断りでは無いですが、相手を見る感じですね。貴族などは屋敷に商人を呼びますから。」
根田 「なるほど。地球でも富裕層はそんな感じです。デパートの外商部とか呼んで買ったりしますもんね。でも買う方も目が肥えてないと偽物つかまされるのでは?」
光華 「貴族階級にそんなことしてバレたら、信用問題どころか死罪になりますよ。良くて財産没収で犯罪奴隷です。富裕層の商人は、鑑定のスキルは無くても鑑定力が無いと信用問題ですから、騙されません。」
根田 「ある意味戦いですねぇ。まあ、自分は庶民ですから関係ないです。」
光華 「何言ってるんですか?太郎様の地上での立場は、大神官であり特級冒険者ですよ。本来、この辺の店が対象とする相手なんですけど。」
根田 「腹の探り合いをするような買い物は嫌ですよ。大体、自分で必要なものは出せますし、品質も上ですしね。買い物するなら庶民向けの所でしますよ。上流階級は、自分の加護が無くても笑顔でしょう?作り笑いだとしても。自分は、辛くても前に進む者に笑顔を作りたいです。」
黒乃 「流石、太郎様真面目で優しい。これで性欲があれば言うことなし!」
根田 「黒乃さん、街中で性欲とか言わないように!はしたないですよ。」
黒乃 「ぶー。子作りは、自然の営み。私は、精霊だから自然の一部。はしたなくない。」
根田 「そんなこと言わないで下さいよ。神も自然の一部と言えるでしょ?お願いですから。」
黒乃 「それは違う。精霊は自然の一部。でも神は、自然を創るもの。神は、立場が上。」
根田 「それはそうですけど、おっさんをいじめないで下さいよ。せっかく街を見物してるのに、難しい話は無しでお願いします。」
光と闇の精霊に色々言われて困ってると助け船が出た!感謝するぞ玉樹さん!
玉樹 「太郎様は、怪しい雰囲気が好きでしたっけ?光華、この街ってスラムとか貧民街無かった?」
光華 「スラム?聖光国の神殿直轄地は、神官と騎士、それに兵士が見回るから、治安は他の国に比べて格段にいいから無いわよ。貧民はいるけど、元々、街に住めないし。ストリートチルドレンは、孤児院へ強制収容だからね。光の大神殿の都で、衛生には厳しいから。元老院の貴族領の街なら、あったと思うけど。」
根田 「なるほど。聖光国でも貴族領だと万年青で聞いたような環境ですか?」
黒乃 「そう。臭い、汚い。ただ回復魔法を持つものが多いから、他国より病気が治せる。闇の精霊の仕事も多いけど他国よりはまし。」
根田 「そうなんですね。街ではなく村とかはどうですか?」
玉樹 「村は魔物の脅威は直接受けますが、強力な魔物は数が少ないのでそれなりに対応してます。場所によりますが、木造の家で農民が多く肥料にするので、し尿処理は街よりされてます。まあ、家畜を飼ってるので、その臭いはしますけど街よりは衛生的かもしれません。」
根田 「なるほど。自分は日本で農家だったので、その辺は分かりますよ。家畜は臭いますから、苦情で廃業する人もいます。あれ?でも聖都でも馬は街の中にいますし、街の外側に家畜飼ってますよね?」
光華 「ここは風の魔道具で換気されてますし、農業国で研究もしてますから、家畜の糞は回収されて肥料にされます。街の城壁も高さがあるので、外の牧場の臭いは入ってこないです。」
根田 「考えられているのですね。地球の中世ヨーロッパみたいに、道に糞尿を投げ捨てるようなことが無くて良かったですよ。地球であった、お城で便所が少なくて庭で排便するとかは、どうです?」
黒乃 「貴族や王族の城は、使用人が多いからトイレは用意されてる。ただし、道に排水路があって、そこに糞尿を捨てる街はある。トイレが汲み取り式で無く、バケツでオマル方式な場所。地球であった2階とかから投げ捨てるのは、さすがにない。そんなことして貴族や騎士にかかったら、その場で殺される。」
うげー、オマル方式あるのかよ。
せめて汲み取りにしようよ。
魔法があるんだから、その辺は考えろよ。
根田 「出来れば、そんな場所には行きたくないですね。冒険者が知識を伝えないんですか?」
光華 「冒険者は、そんなことしませんよ。神殿が多少はする程度です。」
根田 「そうなんですね。商人も金儲けにつながると思うんですけど、やらないんですね。」
黒乃 「そう言ったことはやらない。基本的に物販。」
やはり識字率が低かったりして、知識の継承とかがされてないんだな。
だからと言って、神が介入するべきではないな。
地上の者が考えるべきものだ。
あ、あれ聞いとくか。
根田 「そういえば、我々は排便の必要がないので気にしませんでしたが、排便の後処理はどうなのです?」
玉樹 「野外だと植物の葉を使ったりします。屋内だと植物の葉を用意する者もいるのですが、木べらが多いです。チリ紙のような感じの葉を持つ植物があるんですけどね。こちらの世界の固有植物です。『フキトールの木』って言うんですけど栽培しないんですよね。せっかく作ったのに。」
植物からの製紙技術が無いから(羊皮紙だからな)作ったんだね、玉樹さん。
気の毒に。
黒乃 「魔族は結構使ってる。だけど魔族は数が少ないから、栽培するほど必要ない。人族が住む場所の森にも生えてるから、魔族は人族は使わないものと思ってる。」
魔族は、人族が東南アジア方式で水洗いだとでも思ってるのかな?
あれは、拭かないと尻が乾くのに時間がかかる。
しかも肛門に手でダイレクトアタックかますからなあ。
東南アジア行ってやった時は、何とも言えない気分になったし、子供の時からやってないと忌避感あるよね。
根田 「何とも言えませんね。介入するわけにいきませんし。」
下の話をしてたら、いつの間にか肉を焼いてる屋台が結構ある。
根田 「下の話は、その辺にしましょう。屋台で結構、肉焼いてますね。家畜ですかね?」
光華 「家畜の肉もありますが、野ウサギとかが多いですね。牛やヤギは乳を搾りますし、牛は畑を耕すのに使用したりしますから。羊は、毛を採るので、肉目的でつぶさないです。まあ、家畜でもウサギは毛皮をとるのにつぶすので、比較的出回りますけどウサギの魔物もいますから、それを狩る方が多いです。聖都の周りにも沢山いますから。野ウサギもウサギの魔物も味は変わらないですよ。」
そうなのかな?
家畜のウサギは食ったことあるけど、いまいちだった。
値段ばっかり高くてさ。
油が結構出るけどパサつく肉だった。
輸入の冷凍ものだったからかもね。
食ってみるかな。
根田 「ちょっと食べてみたいので、買います。皆さんはどうしますか?」
光華 「味は知ってるので、別にいいですけど付き合いますよ。」
黒乃 「食べる。」
玉樹 「食べます。」
屋台に行って、野ウサギとウサギの魔物の串焼きをそれぞれ4つ購入した。
値段は一緒だった。結構大きめの肉で1つ大銅貨1枚だった。人数分で大銅貨8枚支払った。
屋台の人に話を聞いたら、ウサギの魔物は、野ウサギより少し大きいだけで危険はあまりないそうだ。
魔物ランク5級だって。
ただ、大きい奴もいて、それは4級だったり、3級だそう。
森の近くとか森の中にいるってさ。
野ウサギと違って逃げるだけじゃなく、体当たりする場合があるそう。
後は、噛みつくそうだ。違いは、色が青とか緑とか赤だったりカラフルなんだって。
何それ?昔の屋台で売ってた”カラーひよこ”みたいだな。
それ天然の色なの?
まあいいや。
とりあえず食べよう。
皆に分けて試食だ。
根田 「固いな。しかもパサつく。味は鶏の胸肉みたいだ。不味くはない。確かに野ウサギも魔物ウサギも味は変わらないな。でも調理方法次第の気もする。」
光華 「バッタのが美味しいですよ。」
黒乃 「そうそう。」
玉樹 「確かにそうです。」
精霊たちの評価が散々だな。
バッタのが美味いとか食べる習慣無かったくせに。
大体、味の感じが全く違う。
それにジャイアント・メタルトノサマバッタは、魔物ランク3級だぞ。食べたのは、飛蝗で2級のだし。
根田 「味の感じが違うでしょう?それにランクが違うんですから当たり前ですよ。」
光華 「まあ、そうですね。」
黒乃 「それもそう。」
玉樹 「そんな感じですね。太郎様この後はどうしますか?神殿に戻りますか?まだ時間早いですけど。」
雑貨品とか見たいんだよね。調理器具とかさ。
後、食料品。
通りには、人族以外獣人族がいる。
なんか力仕事してる。人族より力持ちだな。
外見は何と言えばいいんだろう、人が猫耳を付けてるというかバニーガールの耳がついてる感じというかどこぞの遊園地のネズミの耳がついてるみたいな感じだ。
作り物じゃなくてリアルなの。人の耳がある場所には何もない。
何だよ馬のマスクを被ってるような姿じゃないのか!
がっかりだよ。プロレスのトラのマスクとか特撮物の動物型のマスク被った感じを期待したのに!
そんなんじゃ日本の平和を守れないぞ!
それとも刀で変身するのか?
根田 「獣人族がいますね。特殊なスキルとか無いんですか?獣の能力で肉体強化するとか?」
光華 「ありますよ。獣化ってスキル。ただ獣人族でも持ってる者は少ないです。」
黒乃 「獣化は、魔族の人狼族とか人虎族が持ってる。こいつらは、普段人の姿。見た目は人族と一緒で人の国に居たりする。獣化すると獣の姿になる。獣臭がして臭い。」
玉樹 「太郎様、どんな姿だと思ったんですか?エッチなバニーガールの姿ですか?流石に街中でそんな格好しないですよ。獣人族は動きやすい服装を好むので露出の多い服装しますけど。」
街中でしないって、そんな服この世界にあるの?
それにエッチな姿は要求しないけど。性欲無いし。
根田 「玉樹さん。エッチな姿はいらないですよ。見た目は予想と違いましたけど。ケンタウロスとかミノタウロスみたいなのかと思ったんですよ。」
玉樹 「ああ、そういうことですね。両方いますよ。ミノタウロスは魔物ですけど。」
えっ、いるの?”ミノタウロスは”って、ケンタウロスは違うの?
根田 「いるんですか?ミノタウロスは魔物で、ケンタウロスは違うんですか?」
黒乃 「いる。ケンタウロスは魔族。」
魔族なんだケンタウロス。
根田 「そうなんですね。魔族領行ったら見れますかね?」
黒乃 「よした方が良い。あいつら所かまわず脱糞する。他の種族が、嫌がるのを見るのが好きな馬鹿種族。」
マジかよ。
体張った芸をやるな。
そんな汚らしい種族は見なくていいや。
根田 「えー、汚いな。脱糞した物はどうするんですか?」
黒乃 「放置。他の種族が無視すると糞を蹴飛ばしてきたりする。」
汚いなー。
それに嫌な攻撃するな。
近づかないでおこう。
根田 「嫌なことしますねぇ。自分がされたら、火炎放射で浄化しても良いですかね?」
黒乃 「太郎様なら拳を出すだけで、風圧で吹き飛ぶ。魔法を使うほどの相手じゃない。」
そんなこと言っても手についたりしたら嫌じゃんか。
根田 「いやー、汚らしい攻撃されたら障壁は張りますよ。付いたりしたら、嫌じゃないですか。」
黒乃 「大丈夫。太郎様なら余裕で避けられる。」
魔法使えるんだから使うよ。
根田 「万が一ってことがありますから。まあ近づかないことにします。」
黒乃 「それが良い。私も近づきたくない。見た瞬間殺しそう。」
何かあったのか?怖いから聞かないけど。
その後、雑貨屋などを見て回ったりした。
鍋なんかは鉄製が多いけど銅製もあった。入れ物なんかは錫製もあった。
天然鉱物は地球と同じものがあるみたい。それ以外にファンタジー物質があるって感じか。
アルミとかは精製技術が無いみたい。
この辺は土の属性の管轄だそう。土屋さんか美土さんに聞けば詳しいことは分かるって言ってた。
特に必要なさそうだからいいや。
調理器具であったのは、包丁、ナイフ、笊、網、鍋、フライパン、お玉、フライ返しって感じだ。
煮るか焼くかなんだね。
蒸したり炒めたり揚げたりとか無いそうだ。
笊は竹製だったから、聞いてみたら竹はあるそうだ。
蒸し器は竹で創るかな?でも魔蟲鋼が余ってるんだよね。
そんなことを考えながら、食品を扱ってる商店なんかを覗いた。
農業国だけあって、農産品は安いね。
種類も結構ある。
根菜類が多いけど、葉菜類もある。
トマトは栽培されてるけど、今の時期は、聖都の周りだと無いみたい。
まあ、11月で秋だからね。
日本の感覚だと10月ぐらいだし。ちなみに冬は13月から2月だ。
そうそう、ジャガイモ以外にサツマイモがあったぞ。
あまり肥料をやらないのか細いけど。
細いと中に繊維が多くなるんだよね、筋っていうかさ。
品種的には日本の紅あずまとかに近いみたい。
麻袋大で買ってみた。銀貨1枚だったけど結構重い。
官舎に戻ってから草木魔法で成長させてもいいしね。
後は、ジャガイモも買った。これも麻袋大で40kg程度はあるかな。
それと米では無いけど興味深いものがあったので購入した。
デュラム小麦。何でも南部に乾燥している地方があって、サツマイモもそこで栽培してるそう。
聖都の周りは、普通の小麦とか大麦だからな。ライ麦も一部作ってるけど。
卵は高い。1個大銅貨2枚する。大量生産じゃないから仕方ないけど。
魔物の卵もあった。コカトリスだそう。これはもっと高い。銀貨1枚する。
まあ、大きいし、そのくらいの価値はあるんだろうね。
ハーブなんかもいろいろ買ってみた。
そうそう変わったところでヒマワリの種があった。
中身を食べるそう。休耕地に撒いて緑肥で使ってるそうだけど、食べる人がいるそうだ。
まあ、地球でも食べる人いたからね。
確かミックスナッツの中にも入ってるんだっけ?しょっぱいやつ。
自分は味知ってるから買わなかったけど、地上で得たお金は、地上に還元しないとね。
色々購入して、大銀貨3枚程度か。
官舎に戻ったら、作ってみたいものがあるんだよね。
◇◆◇◆◇◆◇◆
官舎に戻ってきた。
大神官がいたので家賃払ったよ。
ひと月大銀貨3枚で良いとか言ったけど、1年分(13か月分)で金貨10枚払った。
物価は、聖都で暮らしても6人家族でひと月金貨一枚あれば、家賃含めて十分暮らせるそうだ。
でもね。自分たちは基本的にお金かからないから、孤児院とかに使ってもらえばいい。
だから、遠慮してた大神官に無理に渡したよ。
お世話になってるからって。
後、お願いして、孤児院へ行ったんだ。
この世界の食材で簡単にできるものを教えようと思ったから。
院長をやってる女神官と子供に手伝ってもらってね。
作ったのは、サツマイモの素揚げだ。
フライパンで作ればいいんだろうけど、今回は万能調理器具の中華鍋だ。
油の量を少なくするためにね。
中華鍋は北京鍋でお玉と油きりのジャーレンも創生した。蓋とオイルポットも創ったぞ。
勿論、神様パウァーで、油返しを完璧にしてある。
何せ中華鍋は、茹でる・沸かす・炒める・煮る・揚げる・蒸す・燻す・焼く・殴る・鳴らす・投げる・防ぐの無限大の可能性を持ってるからな!
おっと話が変な方へいったな。
サツマイモの素揚げは簡単だから。
子供たちに洗うのを手伝ってもらい、スティック状に切って、油で揚げるだけだ。
油はヒマワリ油使ってみた。種売ってたし問題ない。
フライドポテトも良いけど塩も使わないから簡単だ。
今回の調理は火魔法を使った。
子供の世話をしている女神官が、仕事が終わった詰所の食堂職員を連れてきたので、何度か作った。
揚げる調理法は、初めて見たようなので、驚いていたよ。
後は、魔法で調理するのをね。
まあ、普通は魔力をこんな使い方しないからね。
聖女さんや騎士団長と一緒だったりするから、自分がただのおっさんじゃないって理解したみたい。
食堂職員が何の油か聞いてきたから、ヒマワリ油だって教えたよ。
中華鍋は孤児院へあげた。いつでも創れるから。
子供たちは、喜んで食べてた。
『前掛けのおじさん美味しかった。』だってさ。
口に合ってよかったよ。
火加減ができる調理器具は錬金術師さんに作ってもらって。
神の介入は、この程度だ。
今度揚げ物する時は、玉樹さんが作った植物の『フキトールの木』の葉っぱをキッチンペーパー代わりで使ってみるかな?使わないのは、勿体無いし。油吸わないかな?多分大丈夫だろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆
この後、根田が魔法で火加減するのが面倒くさくなり、官舎に戻って魔道具を作ってテストしていたところへ錬金術師が訪ねてきたのが、二十八話にある話である。
神になっても根田のお人好しは治らない。
後日、万能調理器具の中華鍋も鍛冶屋で作られるようになった。
根田が万年青に帰って、神殿が根田の正体を発表した後、根田の料理を食べた孤児院の子で料理人かつ冒険者になった者がいる。
その冒険者の武器はもちろん中華鍋である。
独自の戦闘術”中華鍋殺法”を生み出し、火魔法の使い手だったので、炎の達人と言われた。
根田が残した『美味しいものを食べれば笑顔になる。貧しくとも食事ができることは幸福である。強く生きよ。』の言葉と共に食材を求めた。
冒険者は中華鍋を広めたため”鍋将軍”と言われたとか言われなかったとか。
それは、別の物語。
至近距離では最強の攻撃『うんこを飛ばす』を使うとは、ケンタウロスは変な馬じゃなく、迷惑なUMAだった。
この作品では、近づいてはいけない魔族です。汚いからね。




