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第二十話 光の上位精霊

精霊石の採掘場です。

何とか二十話です。

食事も終わったので、精霊石の採掘場の見学に行くことにした。

神殿の方々とは、夕方、拝殿に集まることになったので、邪魔にならないよう不可視モードで見学だ。

普通に神殿をうろうろすると黄色い肌の顔のっぺり族で目立つからな。

騎士に疑われたり、参拝者に変に思われるのも良くない。


‥‥‥‥地球で性欲があった時、不可視モードが使えるとなったら、女子更衣室や女風呂に突撃するところだが、性欲が無くなって、そんな気持ちは全然わかない。

ハードボイルドというかストイックというかダンディズムというか自分が全くもって、関係ないと思っていた状態だ。

こんな悟りを開くための状態は、仏教の管轄であって、神の管轄では無い筈だ!

俺の好みは、場末の酒場で下品な話をする怪しげな雰囲気漂うようなカオスな感じなのだ!

ネタの神だというのに、こんなストイックな感じは楽しくない。


そんなことを考えたのが、良くなかったのかもしれない。


精霊石の採掘場に着いた。

建屋は結構広い。地下に向かって、坑道が掘られているのかと思ったら、大きな穴が中央にあって、黄金に輝いている水晶っぽいものが、タケノコみたいに生えている。

あれが精霊石なのかな?


根田 「光華さん、あの光っている水晶みたいなのが光の精霊石ですか?」


光華 「そうです。品質は良さそうです。まあ、私と太郎様が顕現して、この地の魔素が活性化してますからね。」


根田 「ああ、そう言った影響もあるんですね。不味いですかね?」


光華 「特に問題は無いですよ。太郎様は、気を使いすぎです。穴の周りに、私の部下がいるはずです。上位精霊ですが個性的なので、引かないでくださいよ。」


根田 「引く?それはまた、不穏なことを言いますね。」


光華 「会えばわかりますよ。ほら、いましたよ。」


穴に近づきながら、光華さんが指さした方向を見ると人型をした何かがいた。

何故このような表現をしたかというと、これを精霊と呼ぶのは、いかがなものか?と俺の美意識が拒絶したからだ。


………嫌がっていても現実は変わらない。

あれと会話するのか。

勘弁して欲しい。

精霊石の採掘場の見学なんてしなければよかった。


根田 「あ、あの人型が光華さんの部下ですか?」


顔を引きつらせながら、確認した。


光華 「そうです。個性的と言ったでしょう?引かないでくださいよ。」


光華さんが苦笑している。


読者の皆さんは精霊と言ったら、どんなイメージだろうか?

普通は神秘な感じの女性とか幻想的な動物とか妖精のような感じで、儚げな感じというか神々しい女性のイメージではなかろうか?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


現実は受け入れなければなるまい。

俺の目に映っている精霊は、女性じゃない、幻想的な動物でもない、妖精のようなものでもない!

おっさんだ!ふんどし一丁のおっさん精霊だ!

ふんどしも六尺ふんどしで、プリっとした臀部が強調されている!

しかも筋肉ムキムキだ!髪型は金髪の角刈りだ!顔は、彫りの深いイケメンと来た!

狙ってるとしか思えない!

それが精霊石の周りで、いろんなポージングをしている。

更に「開放か~ん!」とか言ってるよ。


……あれは、関わってはいけない者じゃなかろうか?

裸足で逃げ出したくなってきた。

作業服姿の俺もこの世界では異質だが、あれは無いだろう。


根田 「え~っと、精霊石の採掘は見学終わりってことで、ここは。」


見なかったことにして、立ち去ろうとしたのに、光華さ~ん!


光華 「太郎様、部下を紹介しますよ。今呼びます。」


ちょっと、空気読もうよ!


光華 「上位精霊ちょっとこっち来て!」


上位精霊が気が付いて、近づいてくる。

天敵に捕食される瞬間の獣の気分ってこんな感じなのかな?


光の上位精霊 「大精霊様じゃないですか!地上に顕現されるとか珍しいですね。どうされましたか?」


光華 「異世界から召喚された神、根田太郎様の案内役として地上に顕現したのです。太郎様は、神格の高い神です。お前も上位精霊ですから、それは分かると思いますが、失礼のないように!」


光の上位精霊が俺を見たと思ったら、いきなり平伏したよ。

え、何?挨拶じゃなくて、いきなり平伏なの?


光の上位精霊 「神がおられたことに気付かず、大変失礼を致しました。光の上位精霊です。お恥ずかしいところをお見せしました。」


あの恥ずかしいポージングは、やはり人に見せるものでは無いのか。

勘弁してくれよ。

ここで脱いで裸芸を教えてやれとか裸芸免許皆伝が騒いでる感じがするが、今は脱ぐべき時じゃない!

無難にやり過ごす時だぞ!


根田 「いえ、お気になさらず。仕事中に連絡無しできた我々が悪いのです。私は、異世界日本から来た神で根田太郎と言います。万年青では、ネタの神を担当します。縁起神で福の神の一種です。こちらの世界の見聞を広げるために地上に顕現しました。精霊石がどのような物か見るために来ましたが、十分、見ることができました。質が良いものが産出されているようですね。あなたの仕事の賜物です。邪魔になりますので、失礼しますね。」


神様的笑顔でにっこりして、さっさと退散だ!


光の上位精霊 「仕事の邪魔などとんでもない!精霊石の解説を致します!ぜひ手に取ってみてください!」


別にいいよ。

気を使わないでよ。

ここから立ち去りたいんだよ。


根田 「気遣いは嬉しく思いますが、採掘している者たちに迷惑になりますから、そのようなことは控えましょう。あなたも仕事に戻ってください。」


お願い。もう引き止めないで!


光の上位精霊 「あ、神の前で裸でした。大変失礼しました。すぐに姿を変更します。」


今更いいよ。

解放してくれよ。

引き止められて泣きたくなっていると上位精霊の姿が変わった。

ん?なんだ?


光の上位精霊 「趣味の姿で大変失礼しました。お恥ずかしい限りです。」


18歳ぐらいの美女の姿に変わったぞ!声まで変わってる。

服装は、万年青で見た女神様たちと同じだ。

見た目が変わっても騙されないぞ!ふんどし姿のおっさんが趣味とか言ったからな!


根田 「お気になさらず。男性では無かったのですね。」


光華 「精霊に性別はありません。性質的には女性なので、女性の姿をとります。私は女神様と同格なので女性ですけど。太郎様、口説いていいですよ!」


何を言っているんだ毒吐き大精霊!

性欲が無いのに、口説けとか何なの?


根田 「女神様や光華さんは、美しい女性ですが、同僚や部下であって、そのようなことをする対象ではありませんよ。これから一緒に旅したり、仕事をするんですから、私を困らせるようなことを言わないでくださいよ!」


光華 「太郎様はわかってないですねぇ。精霊や神というのは、優しくて、真面目な者が大好きなのですよ!糞がつくほど真面目な太郎様のことを嫌いな神族や精霊はいませんよ。」


嘘を言っていないのは能力で分かるけど、そんなこと言われても困る。

というか、女性が男性がいるところで糞とかいうな!


根田 「有難うございます。でもね、今、そういうことを言ったりする時では、無いと思うんですよね。なかなかに刺激的な物を見ましたしね。落ち着かせてくださいよ。」


光の上位精霊 「すみません。どうせなら女性の姿で官能的ポージングをすればよかったですね。」


いや、そんなこと求めてないよ。

ふんどしおっさんから逃げたいんだよ。

分かってくれよ。


光華 「太郎様、男性の裸がお好きなのですか?何なら男性の姿になりましょうか?」


勘弁してよ。


根田 「いえ、そのような趣味はありません。私は、ノーマルです。光華さんは女性の姿でお願いします。この後、拝殿で属性の大精霊と世界樹の精霊の召喚を行うのですから、からかうのは止めてください。神族として威厳が保てなくなってしまいます。あ、召喚する時の文言も考えないといけませんね。」


光の上位精霊 「属性の大精霊様と世界樹の精霊様が光の大神殿に来られるのですか?我々、上位精霊もお迎えしないといけませんね。」


光華 「立ち会わなくていいです。大人数は騒がしいですから。あ、拝殿に来ないように言っておいてください。太郎様の旅の関係で呼ぶだけですから、あなたたちは仕事してなさい。太郎様も呼ぶときは、『精霊ちょっと来て!』で大丈夫ですよ。」


雑だな!相変わらず。

一応、神殿の関係者が立ち会うんだからさ、儀式めいた文言の演出はいると思うんだよね。

中二病では無いけど、そういうの期待してると思うんだ。何せ儀式やってる人達だし。


根田 「我々だけなら良いですけど、神殿の関係者が立ち会うんですから、多少の演出は必要ですよ。」


光華 「真面目ですねぇ。そんなに気を使わなくてもいいのに。神秘的な儀式をしたって認識を持たせればいいだけなのですから、演出いらないですよ。」


根田 「光華さんは、そういいますけど、女神様たちが演出するつもりでしたし、大精霊たちは、何かすると思うんですよね。呼ぶ方もそれなりにしないとバランスがおかしくなりますよ。」


光華 「うーん。それはありそうです。面倒くさい。」


光の上位精霊 「太郎様、召喚は、『大精霊たちよ、光の大神殿に集合せよ!』で大丈夫ですよ。簡潔ですし。」


根田 「まあ、それでもいいですけど、もう少しひねりますよ。神殿の人達に悪いですから。」


上位精霊なかなか優秀だな。簡潔だ!だが、ふんどしのおっさんだ。今の見た目には騙されんぞ。


光の上位精霊 「演出でお手伝いすることありますか?」


根田 「別にいいですよ。私が召喚の文言を厳かに言えばいいだけですから。」


光華 「覗きに来ないでね。皆を呼んだら、拝殿に神域空間作って作業するから低位の者は影響受けるからね。」


光の上位精霊 「わかりました。皆に言っておきます。」


根田 「拝殿に行って、召喚の演出考えるので、失礼しますね。」


光の上位精霊 「また来てください!神殿のことなら大精霊様よりわかりますから!」


光華 「失礼ねぇ。案内役は私だからね。ここは、案内したから来ないわよ。」


光の上位精霊 「大精霊様酷い!」


何とか、ふんどしおっさんの精霊から解放された。


この世界はネタ要素が少ないと言ってたが、無いわけではないんだな。

しかも危険なタイプのネタだ。注意しておこう。

まさかと思うけどネタの神の自分がいるから、こんな状況になるのか?

嫌だ!考えたくない。

悩みつつ拝殿に向かった。

忙しいので、週一ぐらいになりそうです。

見捨てないでください。

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