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シェンリュさんとお茶

「王、来客」

「誰だろう」


「リザード族」


 親分が少ししてから戻ってきてそう告げた。僕は来客を迎えに出向く。


「康紀、大変だったと聞いた。遅れたようだな」


 シェンリュさんが槍を手に仁王立ちしている。後ろにはリザード族が三人直立不動で立っていた。


「シェンリュさん良く来てくださいました。中へどうぞ」

「一人は警護に、二人はここで待機を」


 リザード族は頷き屋敷の門の近くで待機した。三人のうち一人はシェンリュさんに付いてきて、残りの二人も敵対心は無く命令を自然と受け入れている。僕たちはそのまま食堂へと向かい、親分ともう一人のリザード族は扉の前で待機した。



「シェンリュさん、聞きたい事があるんですけど」

「なんだ? もったいぶらずに聞くと良い。知らん仲ではあるまいに」


「お兄さんのお名前は何と」


 僕がそう尋ねると、アステスさんが居れたお茶のカップに口を付けようとしたのを止めて戻した。


「……居るのか? 奴が」


 僕には表情が変わったようには見えなかったけど、何か空気が重く感じる。


「嘘か本当か分かりません」

「名は?」


 シェンリュさんの声がいつもより低くなった。僕の手がじんわり汗をかき始める。


「えーっとリチャード、リチャード趙、と」


 僕が言い終わる前に茶碗を持ち上げ口にお茶を含む。僕の心臓の鼓動が早くなった。


「リチャード、な。詐欺師もそこまで行くとコメディアンのようだ」

「詐欺師? コメディアン?」


 急な情報に素っ頓狂な声を上げてします。シェンリュさんの首が動き僕と視線を合わす。こ、怖い。


「そうだ。奴の名は趙子墨。欧米とは一切関係無い」

「え、そうなんですか!?」


「別に欧米人のような顔立ちではなかっただろう?」

「は、はあ……でも鼻は高かったような」


「母が美人でな。鼻がすらりとした綺麗な人だ」

「え、で、なんでリチャード」


「あいつは名前の願いを勘違いし、自分こそが全てであり自分の後に人が付いてくるのが当たり前。騒動の中心にいつもあいつが居る。そういう意味では欠かせない存在だろうよ事件を解決するのにはな」


 シェンリュさんは静かに淡々と語っていたが、何かあれば茶碗を砕くくらいの気迫を維持したまま、というか更に強くなった気すらする。


「じ、事件ですか」

「そうだ。奴には義も信もない。あるのは己の価値観のみ」


「経済ですか」

「……康紀に近付いたとはなあの鼠め。向こうでも悩まされこちらでも悩ませられるとは……」


 深い溜息を吐いて天井を睨んだ。僕は取り敢えず前方を見つめてシェンリュさんの言葉を待つ。


「康紀はどう思う? 率直に言って欲しい」


 そう言われて一瞬言葉に詰まる。だけど隠しても仕方ない。


「商人として情とか関係なく経済第一というのはこちらとしても計算がしやすいと思いました。人当たりも良かったし。ただその考えに基いた行動は信用出来ても、信頼するのは難しい。シルフに信用できないと言われて僕も考え答えを出しました」


 その言葉にシェンリュさんは力強く頷いた。ほっと一息僕は吐く。


「奴は相手が口の中に入ったと見た瞬間、光より早く飲み込むだろう。で、今はどこに?」

「侯爵と一緒に首都へ。何やら騒ぎを起こす、と」


「康紀の意見は?」

「はい。さっきの答えで言いましたけど、儲け的な何かが発生することは間違いないと思います。特に今は戦争準備で経済よりも貯蓄を優先しているはずです。商人としてそれはオイシくない。ここで何か騒ぎが起これば、堰き止められていたものが流れる」


「冷静な判断だ。そういう風に分析出来ていればまだ大丈夫だ」

「なので今も準備は怠っていませんし、侯爵も何かを感じ取って同行したんだと思っています。侯爵を手玉に取るなんて誰ならできるのか見当付きませんし」

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