こんなモテ方ってないよね……
取り敢えずどうしたら良いか分からなかったので、
ジャンさんの提案通り手を振ってみた。
「神子様が手を振ってくださっておる!」
「有難い事ねぇ!」
「エルフに加護があらん事を!」
僕はジャンさんを睨むが顔はそっぽを向けていた。
肩が震えている。笑っているに違いない。
「はぁ……皆さん少しお静かに」
取り敢えずこの状況を打開しようとして門の前まで来たものの、
収まるどころか盛り上がりが増してしまった。ボブゴブリンたちは
僕に身の危険が及ぼされないよう、門と僕の間に入ってくれた。
「ダメだよ煽っちゃ」
「……すいません。これどうしたら良いでしょうか……」
「取り敢えず帰るよう言ってみたら?」
侯爵に言われたように言ってみたものの、歓声に僕の声は
掻き消されてしまった。凄い熱狂ぶりだ……前の世界で味わいたかった。
「静まりなさい!」
暫く憮然として立っている事しか出来ずに居ると、
エルフたちの後ろから凛とした声が飛び込んできた。
「おぉ姫様じゃ!」
「ついに姫様が来られたぞ!」
「神子様!」
もうわちゃわちゃしてて何が何だか。ただローズルさんが
来たっていう事だけは分かったけど。
「皆の者、下がりなさい」
「ですが姫様……」
「そうです! 神子様を御救いせねば」
そうだそうだと再度盛り上がるエルフ一同に身構えるボブゴブリン。
「良いからここは私に任せて一旦村に帰りなさい」
ローズルさんの言葉に一旦は大人しくなったものの、
前回僕を黙って帰したことを糾弾し始めるエルフたち。
「だまらっしゃい!」
更に奥から怒声が飛び込んでくる。この声は爺やさんか?
「長老……」
「皆押しかけてどうする!? 神子様を取り戻すなら冷静沈着に戦略戦術を立てねば取り戻せるものも取り戻せぬではないかっ!」
……あ、あれれぇ……?
「確かに」
「そうよね……」
爺やさん長老だったのね。それなら皆話を聞くのか。でもなぁ爺やさんも
黙って僕を帰したと思うけど……って違う! そういう問題じゃない。
「何だか君はいつの間にか囚われの御姫様状態だねぇ」
「ぷっ……」
アステスさんまで吹き出す始末。辛い。
「さ、ここはワシと姫に任せて帰るのだ」
爺やさんの言葉に皆渋々従い、徐々に人の波は揺り返す波の様に引いて行く。
「何とかなったみたいだねぇ」
「何とかなったんですかね」
「一時的には……」
暫くして人が完全に引いた後、そこにはローズルさん、ブリュンヒルドさん、
ロッタさん、そして爺やさんが居た。暫く音も無い時間が流れたものの
「も、申し訳ございませぬぅうううう!」
という大絶叫と涙の後、豪快な土下座を爺やさんはした。
「あ、ちょちょっとちょっと爺やさん! 門開けて門!」
これは不味いと思って直ぐにボブゴブリンたちに門を開けてもらい、
爺やさんに駆け寄り立ってもらおうと膝をついて肩を抱いた。
「貰った!」
爺やさんは勢いよく立ち上がると杖を向けようとした。
「怠惰の結界」
僕は身の危険を感じたので直ぐに発動させ、その隙に元の位置まで戻る。
「結界解除」
そして解除を告げると、元の状態に世界の色も時も戻る。
「まぁ分かってて行ったんだろうけどねぇ」
「すいませんつい……」
「いやあれはしょうがない汚いぜ」
アステスさんも力強く頷く。あのジジイホント喰えない奴だ。
しかも舌打ちしてるし……!
「で、君たちは我々と戦いに来たのかなぁ?」
侯爵の言葉に緊張が走り、皆が構えを見せる。良いなぁ一言で臨戦態勢に皆を
移行させられるなんて。やっぱり貫録とか格が違うよなぁ……。
「康紀様」
アステスさんに促され僕も一応腰を落として身構える。
技を使用しても今のところ影響は全くない。
「いいえ。私としては公平な交渉をしに来たのだけれど……」
ローズルさんは右頬に手を当て目を瞑り溜息を一つ。気苦労が絶えないだろうなぁ……。
「今更それは望めないんじゃないのかい? 御嬢さん」
「その通りね優男。諸々の無礼に対して釣り合いが取れる事と言えば一つしかない。……ただね、あんなものを見た後じゃ長い時をあそこで過ごしてきたエルフなら、致し方ないというか」
「それはそちらの事情。面と向かって喧嘩を売られて収めては他に示しがつきませんので」
アステスさんは強めにキッパリと理解しない旨を伝える。
凛とした毅然とした対応素敵。それに対して僕は全然なっちゃいないなぁ……。




