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明けて朝、屋敷前にて

「景気が良くて何よりだねぇ」


 暫くぼーっと観戦していると、侯爵が急に隣に現れた。

慣れと言うのは怖いもので、前よりも驚きは薄れてきている。

何となくだけど来るなっていう気がした。気のせいかもしれないけど。


「まぁ今は黙って見守るのが正解だけどねぇ。君も大分鍛錬の成果が出てきているから、これに迂闊に入って行かない方が良いと判断できたのは素晴らしい事だよ」

「ありがとうございます、侯爵たちの御蔭です」


 それにしても長いなぁ。意地になってるんだろうか。


「今回彼女みたいな露わにしてくる者が来て君にとっては良い経験になったと思うよ?」

「そうですね……ああいう風に言われて考えるようになりました。それまでは考えもしなかったので」


 そう、引き籠りニートでぬくぬく生きて来たから、

利害の一致とか自分にとってなるべく有利になろう、相手を出し抜こうとか

そういう考えがあること自体忘れていた気がする。


「まぁどれだけ綺麗事を並べた所で所詮は弱肉強食。綺麗事を言ってる人間もいざとなれば自分の為に確実に切り捨てる。本音を話しつつも言わない事もある方が正直で良い」

「勉強になります。自分の前居た所でも綺麗事をばかりいって政権交代をした後、めちゃくちゃにした人が居ますから」


 つい元の世界の事が頭を過った……。選挙で勝つ為与党に対抗する為に、

一般人にとって良い事ばかりを並べ、風が吹いた途端自国を後回しにする

発言を繰り返した人物がいた。


「歴史の書物にもあるよねぇ。そういう人物は上に立てば今まで言わなかった部分を突然言い始めて権力を嵩に押し通す。結果元と変わらないか酷くなる。結局足場が不安定な人間の絵空事は綺麗で憧れやすいが、少し距離を離れてみればロープの上で片足立ちをして踊っている。その危険さに気が付かない」


 そう、その人物が国を成り立たせるために冷静に

先々を見通せているのか、その周りに居る人物たちが

いかなる思考の持ち主なのか知らなければならない。


「……その点僕の陣営は色鮮やかですね」

「そう、そこが魅力だよねぇ。国からの侵攻を防ぐ点では一致していても、それ以外は違う。故に上手くコントロールする事が求められる」

「はい、心します」


 そんな話をしていると、二人の喧嘩は終わりになった。

やるじゃない、みたいな感じではなくて埒が明かないので

第一ラウンド終了という感じだった。二人とも無表情で

こちらを向いている……怖い。


「気が済んだのなら戻ろうか。ご飯を食べて明日に備えようじゃないか」

「明日何かありますか?」

「恐らく君が思っているのが来ると思うよ?」


 僕たちはそのまま食堂へ戻り食事をし、夜は更けて行った。


「康紀様、康紀様」


 声に目を覚ます。周りを見ても誰も居ない。シルフも連行され僕は一人ベッドで寝た。

右側のドアからアステスさんの声がする。急いでいるみたいなので

僕も直ぐにベッドから出て、着替えて部屋を出る。


「急ぎ屋敷の入り口へ」

「はい!」


 アステスさんが先導し、僕も続く。早足で廊下を歩き玄関まで行く。


「これは……」


 玄関の扉を開けると、そこにはエルフの団体が屋敷の入り口をふさいでいた。


「よう人気者」

「ジャンさん、大丈夫ですか?」

「俺は問題ないよ。それよりやっこさんたちだ」


 エルフの人たちを見ると、皆見た事のない人たちばかりだ。

門は開けられておらず、門の手前でボブゴブリンたちが警備していた。

 

「あ! ユグドラシル様の神子様よ!」

「おぉユグドラシル様の神子様じゃ!」


 僕を見た人たちは一斉に声を上げる。門が開いてたら突撃して来るんじゃ

ないかっていうくらいの勢いだ。


「……困りましたねこれは」

「手位振ってやったら良いんじゃないか?」

「他人事だと思って」

「他人事だからなぁ」


 ジャンさんをジト目で見るけど、どこ吹く風。

どこか面白そうにエルフたちを見ていた。




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