表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/351

シルフの契約

「まぁ兎も角、エルフとの対話の道が開けたようで何より」

「そ、そうですね……」

「露骨に嫌な顔するねぇ」


 僕はその言葉に苦笑いをして返した。

ユグドラシルの件もあるし、素直に喜べないのは

当たり前だと思う。疑心暗鬼になる人も向こうにも

当然いるだろうし。そうなると複雑になって

すんなり行くどころかややこしい事になりかねない。


「はーい! はーい!」


 シルフが僕の方から皆の真ん中に位置する場所へ

飛んでいき浮遊しながら両手を上げた。

最初無視していたものの、連呼が止まないので


「何かね妖精さん」

「トイレ行きたいです!」

「行きなさいよ」

「場所が分からないもん!」

「……アステスくん」

「康紀じゃないとダメ。私の契約者だもの!」

「……康紀とアステスくん」

「康紀だけでいいの! トイレにいくだけだもん!」


 侯爵は眉間にしわを寄せていたけど、折れないシルフに

呆れて溜息を吐き、動物を追い払うようにしっしと手で払った。

シルフは僕の所まで戻ってきて肩に座ると、

僕の耳たぶを引っ張る。天井を見上げながら肩を落とし

席を立つ。別にトイレに行きたい訳じゃないんだろうけど、

何なんだろうか。


「もう、察しが悪いわね」

「察してるから出て来たんでしょうが。で、要件は?」


 扉を閉めて一応トイレのある方に向かいながら話す。


「私は貴方と契約したから、貴方が裏切らない限り私は裏切らない」


 急に大人びた落ち着いたトーンで話始める。


「ホントかねぇ」

「当たり前でしょ。私たちにとって契約っていうのはそれだけ重いのよ」

「勢いでやったんじゃないの? エルフの女王にも睨まれてたし」


 僕の問いに押し黙る。自分もそうだからなんだけど、

改めて権謀術数の中に居るんだなぁと実感する。

皆其々の思惑があって繋がっていて、だからこそ与する順番や

貢献度などを気にする。恐らくエルフたちも近日中に接触を

計ってくるだろう。敵も味方も入り乱れて。だからこそ

味方だけでもしっかりと舵を切れるよう見渡さないと。

その為には僕自身がしっかりしなくちゃ。皆と交流しつつ

最終的に良い着地点を目指して国を作る。ここを目標にして

見失わないようにしないと。


「思ったほど間抜けじゃないのね貴方」

「そりゃどうも。少しずつ皆に賢くしてもらってる感じ」

「謙虚で宜しい。私みたい」


 敢えてスルーしてトイレに向けてゆっくり進んでいると、

顔の前に飛んできてニッコリ微笑んだ後、


「えい!」

「いった!」


 思い切り右足で僕の鼻を蹴り上げた。


「何すんだ!」

「こういう時はね、お世辞でもそうですねっていうものよ? 失礼しちゃうわ!」

「……自分で言うかね普通」

「何ですって!?」

「いたっいたたたた! 分かったって悪かったよそうですねとても謙虚で素晴らしい! よっ! 妖精界一の謙虚者!」

「一言余計よ!」

「すいません!」


 ハチの様に僕の頭の周りを飛び回り、隙があれば

蹴りを入れてこようとしてきたけど、暫くして気が済んだのか

諦めたのか動きを止めた。


「兎に角。他の者達がどうあれ私は貴方が裏切らない限り裏切らないわ」

「どうもありがとうございますー……あ、冗談ですありがとうございます感謝しますシルフ様!」


 蹴るモーションを取り始めたので素早く謝罪。

なんでまぁ僕の周りの女性は皆気が強いのか……。


「ユグドラシル様もおっしゃっていたように、この大陸だけじゃなく他の大陸でも前までより遥かに大きな動きが起こってるの。私が見て回った感じ、誰かがどうって訳じゃない。……もっと大きな者が先導しているわ」

「それって僕がどうにかできそうな感じ?」

「貴方にしか出来ない事がある。ユグドラシル様が貴方に向けて貴方だけに言ったんだから間違いないわ。シルフィード様も人型の者達は嫌いでも、心底憎んではいらっしゃらないの。出来る事なら自然を、星を愛してもう少し仲良くしてくれたらって思ってるわ」

「その言葉が本当なら、シルフィード様は懐深いなんてレベルじゃないね。慈愛そのものだ」

「貴方達もそうだと思うけど、言葉一つでその人の事を語れるの?」

「失礼しました……」

「貴方そういう事嫌いそうなのにね」

「つい……いやホントその通りだわ。申し訳ない訂正します」

「まぁ今後は私が付いているから、世間一般の常識ってやつを叩きこんであげるわ」

「結構です」


 僕は何も言ってないのに一撃蹴られた。


「……あらこれはこれは」

「お話が済んだようですね。なら戻りましょう」

「聞き耳を立てていたの? お行儀の悪い」

「行儀……?」


 ああシェンリュさんが懐かしく思えて仕方ない……。

目の前でバチバチ音を立てんばかりに睨みあう二人。


「一つ戯れに尋ねてもいいかしら」

「どうぞ?」

「何に引かれたの? 魔力? 魂? それとも好奇心かしら」


 捕まえようとするアステスさんの手の速さが

次第に風を巻き起こす。シルフも凄いなぁと思いつつ、

ちょっと距離を取る。間違っても止めに入ろうものならぶっ飛ばされるのが

オチだと思う。絶対入りたくない。恐ろしい速度だもの。死んじゃうもの。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=668427503&s
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ