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エルフの村から帰宅

「爺や……掌取れるわよ?」

「何と言われようともこの爺やの察しの悪さゆえ。掌が取れようと一向に構わぬ!」


 土下座している姿勢から顔だけを上げて

えらい剣幕で凄まれた。


「爺やさま、人にそこまでする事は」

「だまらっしゃい! ブリュンヒルド、お前と言う者が付いていながらなんという失態……!」

「御爺様……申し訳ございません」

「お姉さままで!」

「ロタ、いい加減になさいな。私たちは失態をしたのよ。見抜けなかった。ただの人間が結界を破壊する事もブリュンヒルドの剣戟をかわす事も出来ないって事を。ボブゴブリンどもが懐くなんて有り得ない」


 静まり返る一同。

……なんか正直居づらい……。

僕は別に凄くないと自分では思っていた。

ただそれはひょっとすると侯爵やジャンさん、

アステスさんと比べてなのかもしれない。

過ぎた謙遜は嫌味でしかない。僕はそれを

昔見ていたことがある。本人にとっては真面目に

まだそこまでの事ではない、上には上が居ると

思っていても周りから見ればそうではない。

大事なのは自分が口にするかどうかなのかもしれない。

自分自身が見失わず気を引き締めて己を鍛え続ければ

良いだけの話なんじゃないかなと思った。


「あ、あの……出直します?」


 僕の言葉の後、皆の視線が一斉にこっちにくる。

其々の感情が出た顔で見られている……怖すぎる。


「あー、えっとまた来ますね。失礼しました!」


 僕は回れ右して走ってエルフの村を出る。

正直いたたまれない……。

エルフの村を走って入り口まで行く中で、

エルフの民は僕を見つけてさっきとはまるで違う反応を

していた。中には土下座する人まで現れ始めた。

複雑な心境だ。別にユグドラシルさんを呼び出した訳ではないので、

それについて拝まれてもどうしようもないんだけど。


「それじゃあまたね!」


 付いてきていたシルフにそう告げて、

僕は一路屋敷を目指す。特に何もされないんだろうけど、

居心地の悪さは拭えない。それを拭い去りたくて走っているのも

あるし、早く皆の顔を見たかった。

 走っていて思う。やはりあそこは異質だなぁと。

触れてはいけないところというのがまさにあのエルフの村なんだと思う。

混じりっ気の無い空気、木漏れ日に人々。

穢れを知らず長い年月を木と共に過ごしてきたんだろう。

それはそれで良いのか悪いのか……。

元引き籠りの自分が言うのもなんだけど。


「つ、着いた……」


 駆け抜ける森の中の景色は何も覚えていなかったけど、

屋敷が少し見えた瞬間全力で走った。何も考えず必死に

走ったのは久しぶりに思えた。


「……なんですかそれは」


 門の前で待っていてくれたアステスさんは、

一瞬微笑んだ後、目を座らせて僕を見た。


「え、何がです?」

「その横のはなんですかと聞いています」


 僕はアステスさんの指差した方向を見る。


「あれ」

「何?」


 そこにはシルフがふわふわ浮いていた。


「さっき別れたはずじゃ」

「何故別れるの?」

「用は済んだから」


 シルフは首を傾げたまま動かない。


「君の力を借りなくても帰ってこれたし、話はそれで終わりかと」

「……ねぇおばさん、この子馬鹿なの?」


 言い終わった瞬間、アステスさんにシルフは掴まれた。


「今私の事言いました? なんて?」

「……あ、えーと、お、おねえさん。この子馬鹿なのかなぁって」

「何故?」

「あー、うーん。力を貸してくれって言われて、エルフの女王の立ち合いで契約したのに、用が済んだから帰れって」


 シルフの説明の後大きなため息を一つ。

これは怖い。


「康紀様、これの言っている事は本当ですか?」

「あ、はい」


 また大きなため息を一つ。

そしてシルフを空に放り投げた。


「あ」

「康紀様、私たちもそういった事になるとは思っていませんでしたので、説明が不足していた面は否めません。ですが易々と契約などはしてはいけません。あれとの契約の代償が先払いであった事や力押しともいえる康紀様にとって好条件な内容であったから良いようなものの、中には魂と引き換えにするようなものもあるのです。全ての者が康紀様に善意で契約使用させようなどと思っているのですか?」


 淡々としかし一気にそう間合いを詰めて言われる。

これは今までにないくらい怒っている。

言われている内容は最もだ。僕自身元引き籠りなもんだから、

契約などという話はピンと来ない。

親が契約したスマホを使っていたし。


「も、申し訳ありませんでした。今後は内容を精査して契約します!」


 流れるような土下座。爺やさんの姿を見た後だからこそ

出来た技だと思う。誠心誠意の謝罪。

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