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暴風

「はいストーップ。最初に言ったようにそこの間抜け風妖精の所為なんだから怒らないの。ダークエルフが一目置くってだけで、仲間って訳じゃないんだし」


 ローズルさんは二人に背を向け僕と向かい合って立っている。

そしてその眼は話を合わせろと言っていた。僕は頷く。


「まぁそういう訳で私たちが出し抜ける隙もあるって事よ。態々喧嘩売る事ないでしょ?」

「で、ですが人間など……!」

「そ、そうです!」

「あら、彼が普通の人間なの? 風を受け入れられる人間なんて初めて見るわ」


 ローズルさんの言葉に二人は沈黙する。

そういうもんなのだろうか。何と言ったらいいのか、

自然と力を貸してもらえたと言うか。共鳴してるっていうのか。


「ちょ、ちょっと!」


 手の中の妖精が暴れてる。


「何してんの!? 抑えなさい!」


 あちこちから風が流れ込んでくる。

僕の体が風と一体となる感覚がする。


―オォォオオオオオオオ!―


 僕の背後から叫ぶ声が聞こえる。

ただ何故か振り返る事は出来ない。

体が硬直する。


「解放しっぱなしじゃなくて抑え込みなさい! 全部吹き飛ぶわよ!」


 と言われても如何したら良いのか……。

困り果てていると、背後から大きな手が左右から現れ

僕を包み込んだ。するとその手の中に風がどんどん吸い込まれていく。

暫くするとやがて流れ込んできた風も僕の中の風も止んでいった。


「ね?」

「ね? じゃないですよローズル様」

「何なんですかこの人は」


 僕もそれには困る。異世界から来たっていきなり言っても

信じて貰えるかわからないし。


「どう? 凄いでしょ?」

「君誰なの?」

「私はシルフ、宜しくね」


 こういう場合どうしたらいいのか返答に困る。

悪戯の所為でエライ事になったのに。


「よ、宜しく?」

「じゃあ逃げましょうか」

「なんで?」

「エルフっていうのはね、閉鎖的で貴方この後何されるか分からないわよ?」

「君が主に何されるか分からないよね」


 僕が手の中の小さな妖精にそう言うと押し黙った。

しかしどうしたものか。この子の言う通り閉鎖的な彼女たちに何されるか

分からないというのは正しい。だけど彼女たちと交流を持とうとしていたのも事実。

このタイミングで正しいかどうか。


「取り敢えず行きましょうユグドラシルの木の下に。先ずはそこからよ」

「わ、私たちの身の安全を保障しなさいよ!」

「アンタの身の安全の保障なんてしないわよ。……こんな事を言うのもなんだけど、私たちの方が身の安全を保障して欲しいくらいだわ」

「というと?」

「貴方も知っての通り、私たちは昔から続いてきた文化や知識などを護り続けてきた一族。他の世界が新たな状態に移行しようとも、私たちエルフは変わらずにあった。それは世界との契約なのかなんなのか。私たちにももう分からないわ。そんな中で貴方が現れた。今までに見た事も無い風を呼びこみ吸収し無限に満たす人間が、それも私たちの領域に。……私は里の代表として貴方を迎え入れます」

「ローズル様!」

「変わる時なのかもしれない。星の流れが可笑しいのよこのところ。だからこそ、ユグドラシルに訊ねてみる時だと思ったわ。特に何も無ければ放り出せばいいだけだし」

「ですが……」

「今までに一度も無かった訳ではないのよ。それにダークエルフとなった元同朋も。皆は知らないだけで交流をしてない訳ではない。最もこうやって真正面から連れて行く事は中々無いのだけど」

「良いんですか?」

「その方がより安全だったと言うだけの事よ。兎に角このまま別れる事になれば、今後の話し合いも成り立たない」

「……分かりました。ここは従いましょう」

「ちょ、ちょっと!」

「悪戯主の言う事より、今は貴女を信用します」

「それが良いと思うわ。何しろ貴方の力について何か分かるかもしれないし」

「ユグドラシルの木とはそれほど凄いんですか?」

「ええ。神をも凌ぐこの世界を貫き繋ぎ支える樹よ。彼女なら何か知っているかもしれない」


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