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深緑ーシェンリュー

「良いだろう。我々も機会を窺いながら策を練っていた所だ。国に対抗するというのなら行くところは同じ。その先は保証しないが」


 黒いローブのフードを取ると、

現れたのは頭の左右に御団子頭に

切れ長の瞳、シュッとした輪郭に

スッと通った鼻。マントの下から現れたのは

赤を下地とした綺麗な刺繍のされた

民国女子学生装と言われる独特の恰好をしていた。

そして足元はカンフーシューズ。


「私の名前は深緑」

「シェンリュ?」

「そうだ日本人。そろばんという言葉では直ぐには理解できなかった私の負けだな。その欧米人も中々やるようだ」

「そりゃどうも」

「シェンリュさんは学生さんだよね?」

「ああ。お前より年下だろうからさんは要らない」

「シェンリュさんはどうやってここに……」

「さぁ? 朝早起きして蔵を弄ってたらここに来ていた」

「……悩んだりしないのか」

「悩んでどうする。解決するならいくらでも悩んでやるが、そんな無意味な事はしない」


 サバサバしてて痛快だ。

姉御肌というのがぴったりくる感じ。


「私たちはここを根城にしている。お前たちも危惧しているようにここが湿度が高く爬虫類にとって過ごしやすい環境に変化したから移動してきた。本来はもう少し南にいたのでな」

「シェンリュさんはどうやって彼らと仲良くなったんですか?」

「どうやってとは? 会話しただけだ」


 僕とジャンさんは顔を見合わせる。

会話しただけで蜥蜴兵士を従えて指揮できるとか凄いなぁ。


「今度火山の状態を調査しても良いですか?」

「構わない。正直こちらにはそういった事を知る術がない」

「そうなんですか?」

「ああ、勿論昔話をする人間や魔術を使うものは居るが、学者というものは居なくてな。割と繁殖が難しい種族らしい。と言っても人間と出生率が少し低いレベルだが」

「何か病気が?」

「そうだ。遺伝的なものらしい。治療の手立ては無し。生まれた時に掛かるか掛からないかのようだ。私も殻を破った赤ん坊を抱きあげたが、暫くは平気でもその内具合を悪くするものが居る。数日経たずしてなくなる」

「そうなんですね……」

「それ故の身体能力の高さなのかもしれないな」

「ふん。そんなものより子が育つ事の方が親にとっては大事なのだがな。という訳で文化としては遅れているが、事戦いにおいては人間はもとより他の民族よりも上だと思うぞ」

「こちらとそちらでは提供できるものが違くて良かった」

「知識を軽んじてる訳ではないが、無理なものは無理だ。四千年の歴史を他の国が覆せる事は無い。それと同じだ」


 自信満々ではあるものの、無い物は無いと認めつつ

有るものをしっかり把握し強みとして自信を持っている。

年下だっていうのにしっかりしすぎじゃないか……。


「随分と大人だなお前さん」

「年齢と中身は関係ない。が、褒め言葉として受け取っておこう。こう見えても私は何れ家を継ぐ者。家族の前に立たなければならない」

「その為の教育を受けてきたと」

「そうだ。兄はいるのだがな……。まぁそんな話は良い。私としてはこんなところで死ぬ訳にはいかない。これまで育ててくれた祖父母や母の為にもな。生き残るためには少しでも味方が居た方が良いのは自明の理だ。日本人は基本的に信用出来る。見た目も感じも多少は善良なようだ」

「そんな事が分かるのか?」

「お前たち欧米人には分からんだろうがな」

「気ってやつか?」

「そうだ。マジックではない。人の命のエネルギー」


 姿勢の良さやハキハキと喋る感じ。

シェンリュは鍛えられているんだろうなぁ。

家を継ぐ者っていうのは言葉だけじゃないんだと感じる。


「必ず当たるか?」

「必ずではない。というよりこの世に必ずなどない。私がここに居る事がそれを証明している」

「……言い切るなぁ」

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