夕餉の話
「はい。こちらこそよろしくお願いします!」
僕はノルンさんと握手したかったが、相変わらず
ホールドされているので身動きできない。
「……あまり日が暮れないうちに帰るが良い。流石に泊めるのは双方まだ早い。ヴェルもいい加減良い位置で解放するようにな」
最後まで聞き終わらないうちに、
僕は回れ右をさせられそのまま連行されていく。
身動きが取れないのはこれほど不便とは……。
そのまま村を出て元来た道を歩く。
途中村に帰るダークエルフの集団とあったが、
皆勿論当然奇異の目を向けて避けて通る。
「今日は良い日であった。お前たちも運が良かったな」
「ヴェルさんと仲良くなれて確かにラッキーでした」
「素直なのは良い事だ。次は一人で訪ねてくるが良い。歓迎するぞ」
「またお邪魔する事もあろうかと思いますが、その時は教育係としてお供します」
「ねんねの癖に教育係が務まるのか?」
「お互い様でしょう?」
両脇の火花を散らす睨みあい。
僕はただだまーって解放の時を待つ。
「まぁ良い。今日は気分が良いのでこの位にしておいてやる」
「こちらこそ」
相性が悪いんだろうか二人は。
その後フン、と互いにそっぽを向いた後、僕は解放された。
ヴェルさんは僕には笑顔で手を振って去っていく。
森はいつのまにか夕暮れ時の光が差し込んできている。
「ちょっとだけ粘土質の土を取って帰ろうか」
「はい」
言葉少なだなぁ……。機嫌があまりよくなさそうだ。
ここは当たらず障らずにしておく方が良いかなぁと思って、
特に触らず例の崖に向かう。
持ってきたつるはしで断面を崩していく。
手に取ると固まっているが、そう固くはなく
水を与えてこねて行けば何とかなりそうだ。
桶を十個粘土質の土を詰め込み、台車に載せて屋敷へ戻った。
「やぁお帰り」
「二人ともお帰り」
門の近くのテーブルで侯爵とグルヴェイグさんはお茶を飲んでいた。
「お待たせしました」
「無事なら何より。何かあったんだろうけど、それは夕食を取りながら聞くとしよう」
僕は屋敷の端の蔵に台車を置いて布を被せておき、
屋敷へと戻る。その後すぐにトレーニングをこなし、
授業も短縮ながらしてもらって湯浴みをして夕食となる。
今日の出来事を話すと、侯爵やグルヴェイグさん
ジャンさんも頷いていた。
「なるほどなるほど。ダークエルフが動いてきたのは定石だね」
「確かに。彼らはエルフよりも野蛮ではあるが、その分開放的でもある」
「組む相手を限定しないと言う事か」
「そういう事だねぇ。相手がどういう者であるか、そこをある程度見る事が出来る」
「それは有難いな」
「本来はボブゴブリンも閉鎖的ではある。ゴブリンの所為もあるんだけどね。そういう意味では荒れ地で知り合っていたのはラッキーだったねぇ」
「あとはドラフト族とオーク、そしてエルフ」
「ドラフト族はそういう意味では組みやすいかもしれない」
「始祖のヒューマンタイプ」
「そう、エルフの文献と照らし合わせた事は無いが、ドラフト族が最古と言われている。彼らの角はこの世の性悪説の根拠となる悪魔の名残で、その巨体は過酷な環境を生き抜いたが故の名残。彼らも自分たちの種を残すためにとても閉鎖的だ」
「まだ詳しい研究が進んでいないから、彼らからどう別れたのかは謎なんだけどね」
「解明されれば世界最高学者になれそうだな」
「そうだねぇこの世に名を残すことが出来るかもしれないねぇ。そんなレベルだ」
「故に密猟というかなんというかが多いのさ。あんまり気分の良い話じゃないけどね」
そんな凄い種族がここには居るんだ……。
これは更に気を引き締めて行かないといけないな。




